キティちゃんも上場来高値 値動きが冴えないのは【1月の高値更新】

《株価の新高値は、銘柄にとっての「自己ベスト」。それは〝伸びしろ〟の表れと言えるのかもしれません。最近ベストを更新して伸びしろを見せているのは、どんな銘柄か。直近で高値をつけた銘柄から相場の流れを読み解く【高値更新を追え!】》
1月相場を牽引した銘柄たち
1月の日経平均株価は反落し、前月末に比べて322円、0.8%の下落となりました。注目されていた米トランプ大統領の就任式を20日に通過、高関税の発動といった政治リスクが後退したこともあり、株価は堅調に推移しました。
一方で、中国の新興AI「DeepSeek」を巡り、半導体の需要減につながるとして米エヌビディアなどハイテク株が急落する一幕もありました。下旬にかけては日米企業の決算発表があり、円安進行や景気回復などを背景に、決算をきっかけとして買い直される銘柄も散見されました。

こうした中で高値を更新して相場の牽引役となったのは、どのような銘柄か。1月相場で新高値・新安値をつけた銘柄を振り返り、その共通点を探ります。
・高値更新とは?
相場解説などで頻繁に使われる「高値更新」とは、読んで字のごとく、ある期間内の高値を更新したという意味です。ここに「昨年来」「年初来」「上場来」など期間を表す言葉が添えられて、「年初来高値を更新」などと言われます。また、新たに付いた高値を「新高値」と呼びます。
【株価の高値更新】
- 上場来高値……株式市場に上場して以来の高値。買い方の強い物色が株価に現れているといえる
- 昨年来高値……1〜3月に使われ、前年の1月1日から直近までの期間が対象
- 年初来高値……4月以降に使われ、その年の1月1日から直近までの期間が対象
日銀の追加利上げで上がった株
日銀は1月下旬の金融政策決定会合で政策金利を引き上げ、0.5%という約17年ぶりの水準になりました。アメリカの大統領就任式後に株価や為替に急変動がなかったこと、企業の賃上げ継続に向けた機運が高まっていることなどが背景となりました。
前回(2024年7月)の利上げの際にはサプライズと受け止められ、株安・円高の動きを招いたこともあり、今回はメディアによる事前報道がなされたおかげで市場はほぼ織り込んでいました。
こうした流れの中で買われた株のひとつが、ネット銀行です。ネット銀行は大手銀行などに比べて、資産構成から短期の金利上昇の恩恵を受けやすい業種とされています。
住信SBIネット銀行<7163>は16日に上場来高値4125円まで上昇しました。
利便性や金利などの競争力が評価され、住宅ローンの融資額では業界トップクラスです。また、銀行機能だけを企業などに提供するBaaS(バンキング・アズ・ア・サービス)事業も新規口座獲得数が増えており、金利上昇による新規顧客獲得が順調です。

楽天銀行<5838>も同じく16日に上場来高値を更新しています。
楽天グループの知名度を生かしたカード、証券などとの相互送客で、順調に個人・法人顧客数が伸びています。カードローンや住宅ローンなどの債権残高も積み上がるなか、変動金利の多い運用資産も増えています。

日銀の追加利上げが近づくにつれ、1月は小型の不動産株の一角が新高値を付ける動きが見られました。本来、不動産株は金利の上昇に弱く、小型株であるほど信用力の面では逆風となるはずですが、インバウンドによる恩恵や利上げの材料出尽くしを見越して先回り買いが入ったものと思われます。
スモールオフィスなどを手がけるリアルゲイト<5532>は23日に昨年来高値2904円まで上昇しました。分譲中古マンションなどのリノベーション販売に強みを持つスター・マイカ・ホールディングス<2975>は28日に昨年来高値845円を上回りました。
14日に発表した2024年11月期決算は、売上高が14%増の558億円と過去最高となりました。賃借人が入居している状態で売買されるオーナーチェンジ物件や都市部へ注力する戦略がヒットしました。

首都圏の投資用物件、入退室用顔認証プラットフォームサービスなどを手がけるミガロホールディングス<5535>は30日に上場来高値4020円まで買われました。
21日に子会社の顔認証プラットフォームサービスが、首都圏の不動産企業リスコンスでの採用が決定したと発表したことも材料視され、値上がりに弾みがつきました。

中国の景気回復期待で上がった株
機械株や設備投資関連など、中国向けの比率が高い銘柄も値上がりしています。米トランプ政権による関税率引き上げの影響が懸念されるものの、中国当局による景気刺激策や金融緩和などの期待が株価の底上げにつながっています。
ファナック<6954>は27日に昨年来高値4847円まで値上がりしました。同日発表した2024年10~12月期の受注高で全体が前年同期比22%増となったなか、中国向けは47%増と力強い回復となりました。

小売りの「無印良品」を展開する良品計画<7453>も30日に4114円まで上昇です。
10日に2025年8月期の業績予想を上方修正するなど、国内や中国の既存店売上高が会社の想定を上回り順調な進捗となっています。会社では、中国はまだ出店余地が大きいことに加え、オペレーション面でも日本に比べると改善余地があると期待を寄せています。

IPに強みの企業に関心集まる
アニメやゲームのキャラクターなどの知的財産(IP)を強みとする企業への関心が高まっています。
知的財産とは、著作権、商標、特許などの法律で保護される創造的な成果物を指します。特に、日本のアニメやゲームキャラクターは国内外で高い人気を誇り、投資家の関心も高まりつつあります。
任天堂<7974>は30日に年初来高値10470円まで上昇です。中旬には主力ゲーム機「ニンテンドースイッチ」の後継機種を2025年に発売すると開示しました。詳細については4月に発表するとしており、引き続き投資家の関心が集まりそうです。

同日には「キティちゃん」のサンリオ<8136>も上場来高値5913円まで値上がりです。
1月下旬、中国のDeepSeekが欧米の既存AIよりも低価格で利用でき、半導体需要が減るとの懸念が台頭しましたが、その反面、AIや半導体をより安く利用できるとの思惑からIPやAIサービス関連株に資金がシフトしたことも、IP株の値上がりにつながりました。

値動きの冴えない電子部品株
電子部品のいくつかは株価が低迷しています。
積層セラミックコンデンサーで世界トップの村田製作所<6981>は17日に昨年来安値2308.5円まで値下がりしました。同日には自動車向け抵抗器大手のKOA<6999>、水晶振動子大手の日本電波工業<6779>も昨年来安値を下回る弱い値動きとなっています。

急成長分野とされていた電気自動車(EV)が補助金の打ち切りや競争激化で販売が低迷し、自動車向けの電子部品の在庫が積み上がっています。
さらに、設備投資需要の一巡で、産業向けについても市況が悪化しています。なかでもスマートフォン向けについては、高額品であるiPhoneの売れ行きが中国などで低迷していることも、アップル関連の多い電子部品株には逆風となっています。
焦点はやはり金融政策
2025年は、国内では賃上げやインバウンドなど消費の動向、金融政策では日銀の追加利上げタイミングや米FRBの利下げペースなど、金融政策の行方が引き続き焦点となりそうです。
今後はどんな銘柄が活躍するのか。高値更新・安値更新の銘柄を中心にウォッチしながら、相場の潮目を探っていきたいと思います。