株式投資にいくら注ぎ込めばいいのか。4つの要素から見えてくる最適な資産配分とは

朋川雅紀
2022年6月3日 17時30分

Alfredo/Adobe Stock

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「基本資産配分」を考える

将来に備えて資産形成を始めようと決心した時、まず最初に考えなければならないのは、株式などのリスク資産にどれだけ資金を振り分けるか、ということです。

欧米では、一般的な「基本資産配分アセット・アロケーション)」は6:4と言われています。つまり、保有資産の60%を株式(リスク資産=元本が保証されない投資)に、40%を債券(安全資産=元本が保証される投資)に振り分けるわけです。

特定の個人を対象とするのではなく、偏りがなく様々なタイプの個人で形成されている集団を対象とする場合は、長期投資において、この6:4がベースになります。経済が成長する限り、株式のようなリスク資産は、長期的に安全資産をアウトパフォーム(収益率が上回ること)する傾向にありますから、リスク資産の比率は安全資産の比率よりも高くなるのです。

リスク資産には、投資用不動産や金などのコモディティー(商品)も含まれます。一方の安全資産には、現金、預金、外貨預金、円債、外債が含まれます。厳密に言えば、外貨建て資産は為替が変動するため元本は保証されませんが、満期まで保有すれば少なくとも現地通貨ベースでは元本は保証されますし、株式に比べて為替の変動は相対的に小さいので、便宜上、安全資産に分類します。

「6:4」という比率は、欧米では一般的な数字ですが、金融資産の多くを銀行預金に頼っている日本人にとっては、かなり株式の比率が高いという印象になるのではないでしょうか。ではここで、各個人としてはどのような考え方で、基本となる資産配分を決めたらいいのかを考えてみましょう。

4つの要素から考えるリスクの取り方

「基本資産配分」は基本的に、リスクを取ることが“可能”か、あるいは、リスクを取りたい“気持ち”があるかによって決まります。具体的には、「年齢」「資金ニーズ」「経験や知識」「性格」などが影響します。

・年齢

年齢が若ければ若いほど、投資期間が長くなるため、株式のリスクを多く取ることが可能です。

投資期間が長くなれば、「実現リターン」と「期待(想定)リターン」の乖離が縮小します。市場環境が良ければ、実現リターンが期待リターンを上回ることになりますし、市場環境が悪ければ、実現リターンが期待リターンを下回ることもあるでしょうがが、長く投資していれば、良い時も悪い時もならされて、実現リターンは期待リターンに近づくものです。

ひとつの考え方として、「100-年齢=株式のウェイト」というものがあります。例えば30歳であれば、株のウェイトは70%(=100-30)が基本になります。

・資金ニーズ

資金ニーズとは、一定の金額の出費が想定されているかどうかです。例えば、1年後にマンションや新車の購入を考えていて、頭金としてまとまった金額が必要だとします。そのための資金を使って、頭金を増やそうと株式に投資するのは、あまり感心できません。

資金ニーズが高い場合は、株式のリスクを抑える必要があります。近い将来に使い道が決まっているお金をリスク資産に振り分けるのはやめましょう。

・株式投資の知識や経験

株式投資の知識や経験があれば、リスクを取ることに抵抗は感じないでしょう。経済が成長する前提では、「株は長期的には上昇する」ことを十分理解していれば、抵抗なく株式に投資できるはずです。

反対に、株式投資の経験や知識がなければ、まわりの人からいくら説得されても納得ができず、株式に多くの資金を振り向けるのは困難になるでしょう。

・性格

 性格も資産配分の決定に大きく影響してきます。保守的な性格であれば、大きなリターンを期待することはないでしょうから、株式への投資額は少なくなるでしょうし、アグレッシブな性格であれば、株式への投資額は多くなるでしょう。

基本こそが良い結果につながる

長期的な運用においては、一般の個人投資家は、短期的な市場の動向にあわせて資産構成割合を変更するよりも、基本となる資産配分を決めて、それを長期間にわたって維持していくほうが、効率的で良い結果をもたらすことが知られています。

あなたがもし経験豊富な投資家であれば、市場環境を分析して、基本資産配分から乖離させることも悪くありません。例えば、バブルの崩壊を予測できるなら、一時的に株式の比率を下げて、安いところで買い直すことも可能でしょう。しかし、これは非常にハードルが高い作業です。

したがって、一般の投資家には基本となる配分比率を頻繁に変更することはお勧めしません。

居心地の良い水準で投資をしよう

私はできるだけ多くの人に株式投資というものを正しく理解してもらい、積極的に株式に投資してほしいと思っていますが、無理強いするつもりはありません。自分のお金を投じるのですから、最終的には自分自身で決めるべきことです。

不安で仕方がないのに、株式に投資してもしょうがありません。株価が気になって仕事が手につかないのでは困ります。「居心地の良い水準」というものが誰にでもあるはずです。それは人によって違います。自分自身が「居心地の良い」と思える水準だけ、株式に投資してください。

また、すでにおわかりだと思いますが、時間の経過とともにそれぞれの状況(年齢・資金ニーズ・知識と経験・性格)も変わりますので、定期的に(3~5年に一度)見直すことをお勧めします。生活環境が大きく変わった場合も見直しましょう。

[執筆者]朋川雅紀
朋川雅紀
[ともかわ・まさき]大手信託銀行やグローバル展開するアメリカ系資産運用会社等で、30年以上にわたり資産運用業務に従事。株式ファンドマネージャーとして、年金基金や投資信託の運用にあたる。その経験を生かし、株価サイクル分析と業種・銘柄分析を融合させた独自の投資スタイルを確立。現在は投資信託のファンドマネージャーを務めるかたわら、個人投資家の教育・育成にも精力的に取り組んでいる。ニューヨーク駐在経験があり、特にアメリカ株式投資に強み。慶応義塾大学経済学部卒業。海外MBAのほか、国際的な投資プロフェッショナル資格であるCFA協会認定証券アナリストを取得。著書に『みんなが勝てる株式投資』(パンローリング)がある。
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