守って攻める。攻めて守る。株式市場で勝ち残るためのファンドマネージャーおすすめ戦略

朋川雅紀
2022年8月19日 12時30分

Andrii IURLOV/Adobe Stock

《株で勝てる人と勝てない人は一体どこが違うのか? 実は、どちらにも「共通点」があります。30年以上の実績をもつファンドマネージャーが「一流の投資家」の条件を明かす【情熱の株式投資論】》

「コア・サテライト戦略」とは?

コア・サテライト戦略をご存じでしょうか。運用する資産をコア(中核=メイン)とサテライト(衛星=ノン・コア)に分けて考える投資手法です。

なぜこのように2つに分けるかというと、コア銘柄(長期保有前提の計算できる比較的リスクを抑えた銘柄)に安定性や堅実性を求め、サテライト銘柄(売ることも意識したハイリスク銘柄)に成長性や収益性を求めているからです。

  • コア銘柄:長期保有前提の計算できる比較的リスクを抑えた銘柄 ➡ 安定性・堅実性
  • サテライト銘柄:売ることも意識したハイリスク銘柄 ➡ 成長性・収益性

このように、それぞれに違う役割を求めるのが「コア・サテライト戦略」です。したがって、もし短期売買(トレーディング)を行うのでれば、サテライト銘柄の中で資金配分することになります。

また、時間的な制約も2つに分ける理由になっています。

コア+サテライトの30銘柄で分散効果を狙う

投資に分散効果を期待する場合、ある程度の数の銘柄を保有する必要があります。個別銘柄だけでポートフォリオを構築するのであれば、個人投資家の方には30銘柄程度は持ってほしいと思っています。「コア」と「サテライト」を合わせて、グローバルで30銘柄程度です。

なぜなら、ファンドマネージャーとしての「最低ライン」が個人としての目標になると思うからです。ファンドマネージャーは大体100銘柄くらいを保有しているものですが、私が知るかぎり、ファンドマネージャーの中で最も少ない銘柄数で運用している人でも30銘柄くらいは保有しています。

事実、30銘柄あれば、かなりの分散効果を享受することができると思います。ただ現実問題として、個人投資家が自分の仕事を持ちながら、30銘柄を常時こまめにフォローするのは大変です。

そこで、高いリターンを狙いたいけど損もしたくないということを総合的に考えて、この「コア・サテライト戦略」をお勧めすることにしたのです。

なお、「コア」として投資信託やETF(上場投資信託)を使うのであれば、それだけで十分に分散が確保されていますので、「サテライト」のほうでは、銘柄数や銘柄の特性の偏りをあまり気にする必要はありません。

コア戦略──ほったらかしでリターンを安定させる

コア銘柄は、いわゆるポートフォリオの「核」となる銘柄を指します。

コア銘柄の代表的なものが「大型優良銘柄」です。爆発的なリターンは期待できませんが、安定的なリターンが期待できる銘柄です。スポーツで言えば、いわゆる「計算できる選手」です。持ち続ければ、そこそこの成績は残してくれる銘柄です。

つまり、ポートフォリオのリターンを「安定」させるために、過去の実績があり、かつ今後も業界内での高い地位を維持できることが期待できる銘柄を、コア銘柄として保有します。

コア銘柄の場合、極端なことを言えば、買ったあとはほったらかしで、こまめなフォローは必要ありません。いわば、ミドルリスク・ミドルリターン型やローリスク・ローリターン型の銘柄です。

なお、投資経験の短い投資家には、コアとして投資信託やETFを持つことを強くお勧めします。

サテライト戦略──リスクをとってリターンを高める

一方、サテライト銘柄は、高いリターンを狙う銘柄です。

具体的には、創業から比較的時間が経っていない中小企業や、景気の変動を受けやすいシクリカル銘柄(景気敏感株)などになります。また、これまでの運用手法と違う新たな取り組み(新しい手法の模索)で実験時に少額購入する場合も、サテライトの中で行います。

同じ銘柄をコアとサテライトに分けることもできます。

いわゆるグロース・シクリカルのような銘柄は、成長性と循環性を併せ持っていますので、市場サイクルに合わせてポジションを増減させます。たとえば、サイクルのピークで半分だけ売却し、残り半分は持ち続けます。そして、サイクルの底に近づいたら、売却した分を買い戻すのです。

大きくやられてしまう銘柄も出てきてしまうかもしれませんが、ポートフォリオ全体のリターンを高める意味において、サテライト銘柄を持つことは有効だと思っています。

ただし、大型優良銘柄と違い、流行廃りの激しい業界や長い実績のない中小型株の場合は、こまめにフォローする必要があります。

技術革新、規制緩和、グローバル化によって、業界を取り巻く環境はめまぐるしく変化しています。したがって、業績のフォローはもちろん、関連ニュースにも気をつけておきます。特に、値動きが大きかった日は、その理由をチェックする必要があります。

なお、中小型株の場合でも、実績ができて、業界での地位がゆるぎないものになれば、コア銘柄になるかもしれません。

どれだけのリスクを取れるのか

「コア・サテライト戦略」におけるコアとサテライトの割合は、目安として「80対20」か「70対30」だと思ってください。

実際には、自分のリスク許容度などに応じて決まります。リスクを比較的抑えた運用にする場合にはコアへの配分が高くなり、反対に、積極的にリスクを取る手法としたい場合にはサテライトへの配分を高めに設定します。

安定性をより重視し、サテライト銘柄は持たずに、コア銘柄のみを組み入れるという発想も悪くありません。ただ、その逆のパターンに当たる「サテライト銘柄のみ」を保有するのは、あまりお勧めできません。リターンの安定性を放棄してしまうことになってしまうからです。

これから銘柄を見るときにはコアとサテライトを意識しながら、自分に最適なバランスを模索してみてください。

[執筆者]朋川雅紀
朋川雅紀
[ともかわ・まさき]大手信託銀行やグローバル展開するアメリカ系資産運用会社等で、30年以上にわたり資産運用業務に従事。株式ファンドマネージャーとして、年金基金や投資信託の運用にあたる。その経験を生かし、株価サイクル分析と業種・銘柄分析を融合させた独自の投資スタイルを確立。現在は投資信託のファンドマネージャーを務めるかたわら、個人投資家の教育・育成にも精力的に取り組んでいる。ニューヨーク駐在経験があり、特にアメリカ株式投資に強み。慶応義塾大学経済学部卒業。海外MBAのほか、国際的な投資プロフェッショナル資格であるCFA協会認定証券アナリストを取得。著書に『みんなが勝てる株式投資』(パンローリング)がある。
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