ポートフォリオに必要なのは、ホームラン打者より小技の利く選手
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個別銘柄でのポートフォリオの作り方
今回はポートフォリオの構築方法について考えたいと思います。特に、個別銘柄によってより良いポートフォリオを作る際のポイントを解説します。
(1)魅力のある銘柄(収益力のある企業)を選ぶ
まずは、収益力があって、なおかつ株価が割安である銘柄を選ぶことになりますが、第一段階としては収益力のある企業、つまり、次の2つの柱に該当する企業を手駒としてピックアップします。
- 魅力的な(高成長の)業種・業界に属している企業
- (その業種・業界自体はあまり儲かっていなくても)同一業種・業界内のライバル会社に比べて競争上有利である企業
(2)バリュエーションを見る
収益力のある銘柄をいくつかピックアップしたら、次にバリュエーションを確認します。いくら収益力があってもバリュエーションが高ければ(=バリュエーションが縮小するリスクが高い)、投資対象としての魅力は失われます。
理想は、収益力があって、かつ、バリュエーションの安い企業です。テクニカル分析を使って、株価の立ち位置も併せて見ていくこともおすすめします。
(3)最後にバランスを考える
最後に、分散を意識して、銘柄選択の作業を行っていきます。人間は将来を完璧に予想することはできないこと、そして、人間が陥りやすい〝思い入れ〟を極力排除したいということから、私は「分散」を強調したいと思います。
分散によってポートフォリオのバランスを取ることについて、もう少し詳しくお話しします。ヒントは、一年を通してシーズンを戦うプロ野球チームです。
ペナントレースを勝ち抜くチームとは
個別銘柄を買ってポートフォリオを構築することは、スポーツで言えば、「ゲーム(試合)に使う選手を選ぶ」行為に似ています。
例えば、あなたがプロ野球チームの監督だとします。どのようにして選手を選びますか? ここからは、ぜひそのイメージを持って読んでみてください。
プロ野球のチームを率いる監督は、ペナントレースでの優勝、それがダメでも最悪プレーオフには進出することが、シーズン前の目標になります。
そのためには気をつけるべきことは何か? それは、連敗を極力しないことです。
そして、連敗しないチームに欠かせないのが、「バランスが良いメンバー構成」です。バランスが良いというのは、要するに、「いろいろなタイプの選手がいる」ということです。
例えば、ホームランを打てる選手ばかりを揃えたとしても、大きく勝つときもあれば、あっさり負けてしまうときもあるようでは、なかなかチームの調子は上がりません。しかし、いろいろなタイプの選手がいれば、いろいろな戦術のオプションが考えられます。
ホームランが打てそうな選手ばかりを集めて、ひたすらホームランが出るのを待つようでは駄目です。
足が速くて相手をかき回すことができる選手、ミートがうまくヒットを多く打てる高い技術を持っている選手、そしてホームランを打てる選手など、違った役割を担える選手がいることが望ましいです。右打者と左打者、若手とベテランも、それぞれ適度にいたほうがいいです。
「成長」という夢の落とし穴
では、株式投資においてバランスの良いメンバー構成とは何を指すのでしょうか? それは、様々な業種からバランス良く銘柄を持つことです。
様々な業種に分散していれば、いろいろなタイプの選手を持っているのと同じことになります。ただし、ここで注意しなければならないことがあります。それは、ある特定の成長ステージに偏った銘柄ばかりでポートフォリオを構築してはいけない、ということです。
よくある失敗例として、「高成長株(一般的には中小型株)ばかりのポートフォリオ」の話を挙げたいと思います。
確かに、「高成長」という言葉には「夢」があります。ですから、期待感が大きくなるような銘柄ばかりでポートフォリオを作りたい、という気持ちもわからなくはありません。でも、これは実に危険なことだといえます。
ところで、高成長株はどの業種にあるでしょうか? 結論から言うと、どの業種にも高成長株はあります。要するに、探そうと思えば、高成長株はどの業種からも見つかります。
ここに落とし穴があるのです。つまり、「どの業種にも成長株はある」という考えから、業種本来の特性を無視してしまうことになりがちなのです。
例えば、「消費安定」の分野から成長株ばかりを選んでポートフォリオにしてしまったら、それは「分散を考えたポートフォリオ」とは言えません。野球で言うと、ホームラン・バッターばかりを揃えた布陣になってしまうからです。
「消費安定」であれば、この業種本来の特性は「安定性」にあるはずです。にもかかわらず、この分野からも成長株だけを選んでしまうのは、「安定性」を無視したことになります。これは、危険と言わざるを得ないわけです。
バランスの良いチームを作ろう
「成長ステージ」を考慮すると、銘柄は高成長株、安定成長株、景気敏感株、低成長株などに分類できます。このうち、高成長株や景気敏感株は比較的リスクが高くなります。
そこで、バランスの良いポートフォリオを組む際の基本方針として、安定成長株は必ず持つようにして、そこに、各自のリスク許容度に応じて高成長株や景気敏感株を組み入れることをおすすめします。
イメージしやすいよう、ここでも野球にしましょう。チームには、ホームラン・バッターが1人か2人までがベストではないでしょうか。
もっと言うと、ホームランを狙ってバットをビュンビュン振り回す選手ばかりが並ぶよりは、むしろ、中距離打者や小技が利く選手だけで組んだ打線(つまり、ホームラン・バッターはいない)のほうがいいかもしれません。
個別銘柄でポートフォリオを組む際は、プロ野球チームの打線をイメージしながら、バランスの良いチーム構成を心がけてください。