バリュー投資とグロース投資 あなたがやるべきはどっち?
株を始めたばかりの方でも、ウォーレン・バフェットという投資家の名前は聞いたことがあるのではないでしょうか。
そのバフェット氏に影響を与えた投資法に、「バリュー投資」と「グロース投資」があります。バフェット氏自身も「私の85%はグレアム(=バリュー投資)から、残りの15%はフィッシャー(=グロース投資)からできている」と語っています。
「投資の神様」とも言われる偉大な投資家をつくったバリュー投資とグロース投資とは、それぞれ一体どういう投資法なのでしょうか。
バリュー投資はコスパ重視!
バリュー投資とは、企業の本来の価値より市場では低く評価されていると判断した株式(=割安株)に投資する方法です。簡単にいうと、「安くてよい買い物をする」投資法です。「割安株投資」とも呼ばれます。
この投資法は、「バリュー投資の父」「ウォール・ストリートの最長老」として有名なベンジャミン・グレアムという投資家が提唱しました。バフェット氏は、グレアム氏の教え子です。
グレアム氏は、次のような言葉を遺しています。
「企業の有形資産価値を大きく上回る価格の株式には手を出さない」(『賢明なる投資家』より)
有形(固定)資産とは、自社ビル・自社工場などの不動産や機械・運搬車両などの動産を指します。バリュー投資では、これら企業が保有する有形固定資産が1株あたりいくらになるかを計算します。
- 1株あたりの有形資産=(資本金−無形固定資産)÷発行済み普通株式数
これで算出した数値が高いほど、仮に企業が倒産して有形固定資産が清算されたときに、普通株主が返済してもらえる金額が多いことが見込まれます。この数値を基準に、清算価格よりも割安な銘柄を探すのです。
1929年の大暴落と世界恐慌を経験した投資家らしい、倒産が相次ぐ不況に備えた投資法だといえるでしょう。
なお、このバリュー投資は、短期的な価格変動は気にせず、企業本来の価値が市場で広く認識されるまで保有し続ける、という長期投資のスタイルです。
バリュー投資のメリットとデメリット
バリュー投資のメリットは、割安価格で株式を購入することでリスクが抑えられる点です。また、長期保有をするため、企業の成長とともに上がるであろう配当金のインカムゲインも期待できます。もちろん、将来的には大きなキャピタルゲインも狙えます。
それに対してバリュー投資のデメリットは、企業価値が市場で評価されるまでには時間がかかるため、保有に忍耐がいることと、資産の流動性が抑えられてしまうことです。市場全体が下落しているときには割安株も下がることが多いため、精神的負担もあります。
いちばんのネックは、投資家自身が企業の価値を正確に分析・把握できるのか、ということでしょう。正しい情報収集と分析は高度な知識を要求するため、その点において初心者にはハードルが高い手法だと言えます。
グロース投資で流行を先取り!
グロース投資とは、今後大きく成長することが期待される企業の株式(=成長株)に投資する投資法です。売上や利益が急速に増えており、将来も株価が大幅に上昇する可能性がある銘柄を狙います。「成長株投資」とも言われます。
バフェットのもう一人の師であり「グロース投資の父」であるフィリップ・フィッシャーは、銘柄選びのための「15の質問」を提唱しました。それが、以下の15の問いです。
- その企業は、少なくとも数年は収益が増え続けることを可能にする、十分な市場可能性のある製品やサービスをもっているか
- 現在売れている製品ラインの潜在的な需要がほとんどなくなったときに、経営陣には会社の収益をさらに伸ばすような製品やプロセスを開発・発展し続ける決意があるか
- 企業の規模と比べて、どのくらい企業のリサーチと開発努力が効果的であるか
- その企業は、平均以上の販売組織があるか
- その企業には、十分な利幅があるか
- 利幅を改善、または維持するために何をしているか
- その企業には、労働者・従業員との関係に特筆すべき点があるか
- その企業には、企業幹部との関係に特筆すべき点があるか
- その企業は、マネージメントに柔軟性があるか
- 企業の費用分析と会計管理は、どのくらいきちんとしているか
- 競争相手と比べて、どのぐらいその企業が突出しているかを知る手がかりとなるような、その分野特有の評価できる特徴がなにかあるか
- 利益という点で、短期間および長期間の見通しがその企業にあるか
- 予測可能な未来に、企業の成長が著しいために自己資金調達が行われ、その結果株式の総数が増大し、現在の株主が予期していた利益が、ほとんど相殺されてしまうような事態になりそうか
- その企業の経営陣は、物事がうまくいっている時には、さまざまな出来事を投資家にどんどん話すのに、問題や損失が生じると、だんまりを決め込んでしまうようなことがあるか?
- その企業は、完璧な経営体制を敷いているか
(『株式投資で普通でない利益を得る』より)
グロース投資では、これらのチェックポイントを重視して選んだ株式に投資します。テクノロジー企業や新興市場の企業が選ばれることが多いです。
また、グロース投資は、バリュー投資に比べて短〜中期的なスタイルの投資法です。企業の成長が早ければ早いほど、保有期間が短くて済みます。
グロース投資のメリットとデメリット
伸びしろの大きい企業は常に進化し続けるため、株主としてその成長を見守る醍醐味は、グロース投資において精神的に大きなメリットだと思います。
一方のデメリットは、企業の株価がすでに過大評価されていた場合、思ったようなリターンが得られない可能性がある点です。また、グロース株はバリュー株に比べて株式市場の変化に敏感なので、企業は好調でも市場全体の下落に引っ張られることがあります。
バリューかグロースか、あなたはどっち?
バリュー投資とグロース投資のどちらが向いているかは、自身の投資スタイルや目標、リスク許容度によって異なります。
ただ、あえて「好み」「志向」という点から比較すれば、長期投資が好きで安定性重視ならバリュー投資、流行や情報に敏感で高リターンを狙いたいならグロース投資が、それぞれ向いていると言っていいでしょう
- 安定志向の長期投資ならバリュー投資
投資した企業の価値が市場に認識されるまで気長に待ち、短期的な株価の変動に一喜一憂しないメンタルが求められます。そして、正確に企業価値をはかる情報収集と分析ができなければ将来の利益にはつながらないため、株式投資や企業について深い知識をつける必要があります。
- 積極的にリターンを狙いたいならグロース投資
マーケティング用語でいう「花形」の事業を運営する企業に投資することで、企業や市場の著しい成長を応援することができます。いち早く「花形」を見つけることが将来の利益の大きさに直結するため、テクノロジーや社会・文化の変化に先見の明がなくてはなりません。
どちらの投資法を選ぶにしても、株や投資の知識を身につける必要があるのはもちろんのこと、日々の地道な活動は続けていかなくてはいけません。でも、本気で株式投資をしてみたいと思う人にとっては、挑戦する価値のある「王道の投資法」です。
あなたはどちらが気になりましたか?