2022年の相場はどうなる? 「寅」は本当に千里を走るのか
干支で読む、2022年の株式市場
相場には「アノマリー(Anomaly)」と呼ばれる〝法則のようなもの〟がたくさんありますが、日本ではこんな干支アノマリーが知られています。
辰巳(たつみ)天井、午(うま)尻下がり、未(ひつじ)辛抱、申酉(さるとり)騒ぐ、戌(いぬ)は笑い、亥(い)固まる、子(ね)は繁栄、丑(うし)はつまずき、寅(とら)千里を走り、卯(うさぎ)は跳ねる
これによると、2022年の寅年は「千里を走り」ということで、「つまずき」だった2021年(丑年)よりなんだか縁起がよさそう!
でも、このアノマリー、どれくらい信用できるのでしょうか? 残念ながらエスパーではないため未来を予測することは不可能なので、過去の寅年を振り返ることで、令和4年の株式市場がどんなものになるのかを思い描いてみたいと思います。
2010年(平成22年)──リーマンショックの翌々年
- 年始の始値=10609.34円
- 年末の終値=10228.92円 −380.42円(−3.7%)
年初始値と年末終値で比較すると「微減」なのですが、年間を通じたチャートの形を見てみると、全体的にはどうも右肩下がり。3~4月と11月から年末にかけては、トラが百里くらい走っているようではありますが、「千里」は走っているとは言えない一年でした。
この2010年の2年前、2008年9月15日にはアメリカの投資銀行リーマン・ブラザーズが経営破綻しています。ここから始まるのがいわゆる「リーマンショック」です。なお、2008年の年始始値は15,155.73円。2010年時点でも、回復は道半ばであったことがわかります。
・2010年はこんな年
[新語・流行語大賞]
- ゲゲゲの……NHK朝ドラ『ゲゲゲの女房』から
ちなみに審査員特別賞には、この年、日本ハムにドラフト1位指名された早稲田大学野球部(当時)の斎藤佑樹投手が言った「(自分は)何か持っていると言われ続けてきました。今日何を持っているか確信しました…それは仲間です」が選ばれています。
11年後となる2021年、斎藤投手は現役を引退しました。人生も株価も、ほんと、どうなるかわかりませんね。
1998年(平成10年)──日本列島総不況
- 年始の始値=15,268.93円
- 年末の終値=13,842.17円 −1,426.76円(−9.3%)
2010年のチャートに形がちょっと似ていますね。6~7月や10~11月などで若干の盛り返しは見られますが、全体を通じれば右肩下がり、パッとしない推移です。千里を走る感はまるでありません。
・1998年はこんな年
[新語・流行語大賞]
- 凡人・軍人・変人
- ハマの大魔神
- だっちゅーの
大賞が3つ。「凡人・軍人・変人」は、この年の自民党総裁選を争った小渕恵三さん、梶山静六さん、小泉純一郎さんを評した衆議院議員の田中真紀子さんの言葉です。勝利したのは、凡人こと小渕さん。
流行語大賞のトップテンを見ると「日本列島総不況」「貸し渋り」など、厳しい世相が垣間見えます。
1986年(昭和61年)──バブル! トラ、千里を駆ける
- 年始の終値=13053.79円
- 年末の終値=18820.65円 +5,766.86円(+31.8%)
文句なし、お手本のようにトラが千里も万里も駆け回る、きれいな右肩上がりの一年でした。ザ・バブル!と言っていい、華々しい上昇っぷりです。
・1986年はこんな年
新語・流行語大賞の金賞は「究極」。漫画「美味しんぼ」の「究極のメニュー」が火付け役になりました。他の受賞語には、今となっては世界の任天堂<7974>がゲームで一斉を風靡するきっかけとなった「ファミコン」も。
ほかの新語・流行語候補として「地上げ」なんて言葉があるのも、ある意味、景気の良さを表していると言えるでしょう。12年後は「日本列島総不況」なのに……。栄華は一瞬です。
1974年(昭和49年)──トラ、またも伸び悩む
- 年始の終値=4259.20円
- 年末の終値=3636.93円 −622.27円(−17.1%)
年末は若干上がっているものの、一年を通じたチャートの形は右肩下がり。この年も、トラは全然走っていません。
ちなみに、1972年の子年は年始から年末で株価がおよそ倍になる、まさに「子は繁栄」の一年で、翌年の1973年は「丑はつまずき」で右肩下がりと、どちらもアノマリーどおりだったのですが、残念。
・1974年はこんな年
長嶋茂雄さんが「巨人軍は永久に不滅です」と名言を残して現役引退。政治面ではジャーナリストの立花隆氏が時の田中角栄首相の金脈問題を暴いた「田中角栄研究」が文藝春秋に掲載され、田中政権が退陣しました。
1962年(昭和37年)──岩戸景気の宴のあと
- 年始の終値:1425.30円
- 年末の終値:1420.43円 −4.87円(−0.34%)
戦後の高度成長期の中でも特に長く続いた「岩戸景気」(1958年7月~1961年12月)が終わった翌年です。年末と年始の数値を比較すると「微減」程度なのですが、チャート全体を見れば、おおむね右肩下がりの様相です。とても千里を走っているとは言い難いですね。
・1972年はこんな年
大正製薬ホールディングス<4581>がドリンク剤「リポビタンD」を発売。リポD、2022年で還暦ですよ! 効きそうな気がしてきました。
千里を駆けないトラのほうが多い
トラが千里を走りに走ったバブルな1986年以外は、どの寅年もどことなくチャートの形が似ています。年末にちょっと上がることもありますが、全体的に見るとなんだか右肩下がり。十里くらいしか走っていません。
ひょっとして、それが寅年の傾向? 「千里走り」は株価の勢いを表しているわけじゃないのかも……とすら思えてきます。過去には〝法則〟と呼べる実績があったのかもしれませんが、時代の移り変わりとともに、その効力が失われていったり、変化したりしてしまうのは自然なことなのかもしれません。
で、2022年はどうなるの?という話ですが、結局、相場の未来なんて誰にもわからない、というのが唯一の正解なのでしょう。
それでも、どんな時代にも通用する本質的な考えを身につけて、長年にわたって利益を積み重ねている投資家・トレーダーがいるのも事実。2022年相場がどんな展開になるにせよ、千里を走っていける力を身につけていきたいですね。