10月の株価はどうなる? 上がる日・下がる日の傾向と意外な落とし穴
銘柄よりも大事な「タイミング」
2021年2月に30年ぶりに30,000円を突破した日経平均株価。4月には再び大台を割って、このままずるずると落ちてしまうのでは……という不安も出始めていたところに、驚きのニュースによって一気に回復しました。
現時点では、まだ次の総理は誰になるのかわからないのに、それでも「期待」に押されてこんなにもトレンドが変わるなんて、本当に株式市場は何が起こるかわからないものです。
未来を予想できないのだとしたら、我々しがない個人投資家にできることと言えば、過去から学ぶこと以外にないでしょう。
「騰落率」に見る上がる日・下がる日
株を「いつ」購入すればいいのかという問題は、実は、「どれ」を買うか(銘柄)よりも重要かもしれません。悩ましいタイミングを見極めるひとつの参考になる(かもしれない)のが、一年366日の日経平均株価の「騰落率」です。
「騰落率」とは、戦後に東京証券取引所が再開された1949年5月16日から現在までの、毎日の日経平均株価の日付別の上昇確率を計算したもので、平たく言えば、「この日付の日経平均株価は前日より上がったか、下がったか」を1949年から累計したデータです。
それぞれの日付において、株価が前日より上がった場合を「勝ち」、前日より下がった場合を「負け」として、その勝率(上昇する確率)が算出されています。
《参考記事》その株、いつ買えばいいの? 一年で最も上がる日・下がる日からわかったこと
9月末には次の首相になる人が決まるようなので、それ次第でまたもや相場展開が変わる可能性もありますが、そこに関与できない庶民としては、過去のデータを確認しつつ粛々と10月相場に備えておきましょう。
これが10月の最も上がる日・下がる日
日経平均株価の騰落率は、日経平均株価の様々なデータを紹介するサイト「日経平均プロフィル」で確認することができます。これによると、10月の31日のうちで騰落率が最も高いのは「6日」の64.91%で、最も低いのは「22日」の40.35%(データは2021年9月現在)。
それでは、日別の騰落率を2021年10月のカレンダーに当てはめてみましょう。
10月、「トレンドがない」というトレンド
本シリーズでは、4月から毎月この騰落率を調べてきました。
多くの月で「5日以上の上昇」というトレンドがあったのですが、10月はあいにく5日連続上昇はなし(なお、7月もありませんでした)。9月には10日連続で騰落率が50%以上をキープという大ムーブメントもあったのですが、10月は「トレンドがない」というトレンドのようです。
また、4〜8月にかけては「月の最後の5日は堅い」という傾向が続いていたのですが、10月の最終5日間を見ると、9月と同様に騰落率50%を下回る日が2日あって、3勝2敗。「最後の5日は堅い」は、いまのところ4~8月まで春夏の傾向と言えそうです。
ちなみに、10月においては、騰落率が30%台(=下がる確率が70〜80%)の「かなり売り優勢な警戒日」もなし。これは少しいいニュースかもしれません。なお、これまでは4月が0日、5月が3日、6月が1日、7月が3日(現時点で最多)、8月は1日、9月は2日でした。
10月相場は、騰落率という観点から見ると「いまひとつはっきりしない」という傾向が見受けられます。
過去3年の10月の日経平均株価の推移
騰落率で見るといまひとつはっきりしない10月相場。日経平均株価のグラフで見るとどうなのでしょうか。過去3年の10月の日経平均株価の推移を振り返ってみましょう。
2018年はなかなかキレイな右肩下がりですが、2019年は真逆のキレイな右肩上がりです。それに対してコロナ禍の2020年は大体M字形。2020年の10月はGo Toトラベルなども出ていたころですが、11月でまた感染が再拡大していく、という展開になる前の端境期にありました。
10月の最も上がる日・最も下がる日は、どんな日?
10月の「最も上がる日(前日に買っておけばウハウハ?)」と「最も下がる日(前日に売っておけばウハウハ?)」について、もう少し詳しく見てみましょう。
【トップ】10月6日(37勝20負0分)
10月で最も上がる確率が高いのは10月6日。騰落率は64.91%で、1949年以降の勝ち負けは37勝20負0分です。
2021年の10月6日は、そろそろ第100代の内閣総理大臣が選出される頃でしょうか。週の真ん中の水曜日ですが、株式市場はどう動くでしょうか?
[この日、何の日?]
- 役所改革の日……1969(昭和44)年の同日、当時の千葉県松戸市市長・松本清氏により「すぐやる課」が設立されたことにちなんだ記念日です。
あら、どこかで聞いたようなお名前……? そう、マツモトキヨシホールディングス<3088>の創業者です。松戸市長在職中の1973年に亡くなってしまいましたが、天国でご自身の名前が冠されたマツキヨの発展を見守っていることでしょう。
【最下位】10月22日(23勝34負0分)
10月で最も上がる確率が低い(=下がる確率が高い)のは、22日の騰落率40.35%です。戦後に取引のあった計57日分の勝敗は23勝34負0分、つまりは約60%の確率で下がるということになります。3回に2回は下がる(66.66666%以上)までは行きません。
2021年の10月22日は金曜日。総選挙へ向けて慌ただしくなっている頃でしょうか。そんななかでどう動くのかに注目です。
[この日、何の日?]
- 平安遷都の日……鳴くよウグイス平安京。794年(延暦13年)のこの日、桓武天皇が長岡京から平安京に新京を移しました。
10月相場の落とし穴
騰落率という観点から10月相場を見てきましたが、「それ以外」の特徴も見ておきましょう。
まず、多くの日本の上場企業は3月期決算ですから、10月中旬からは中間決算の発表が続きます。当然、個別銘柄の株価にインパクトを与える材料になることもあるでしょう。
中間決算の発表は、10月中は間に合わず11月になるところも多いのですが、大幅な上方修正、下方修正があった場合は事前に発表しなくてはいけません。うれしい悲鳴か、ほんとの悲鳴か……。10月下旬はそんな爆弾が投下される可能性があることに注意が必要です。
《参考記事》9月・10月の相場はどうなる? トレーダーも警戒する秋相場の傾向とは
あの歴史的暴落も10月だった
騰落率上で見ると、なんともどっちつかずな印象のある10月ですが、歴史に目を向けると超絶節目の月でもありました。
1929年、ニューヨーク市場で空前の株価大暴落が起きたのは10月です。「世界恐慌」の始まりですね。当時も投資ブームで実体経済から乖離したように見える株高を危惧する声もあったのだとか。
さらには、1987年に香港を発端に起こった世界的な株価大暴落「ブラックマンデー」も10月の出来事。日本はこのころバブル景気のさなかにあったため、下落分もほどなくして回復。1989年に迎える日経平均株価の史上最高値38,957円へと向かっていくわけです。
10月を「実りの秋」とするために
心地よい秋風が吹き抜ける10月。農作物は収穫のシーズンとなりますが、株でもたわわに実った収穫となるか、スコップでせっせと集めた収穫をわずか一撃でブルドーザーに持っていかれるかは、自分次第です。10月の傾向や落とし穴を踏まえた上で、秋の収穫に挑みたいですね。