上方修正で上がる株・下がる株 業績修正が株価に与える影響とは

岡田禎子
最終更新日:2021-08-12 公開日:2021-06-08

《個人投資家は「上方修正」という言葉が大好き。なぜなら「上方修正=株価が上がる」という共通のイメージがあるからです。しかし、実は株価が下がる場合も大いにあります。一筋縄ではいかないからこそ面白い。そんな「上方修正」について、その意味や見方、投資戦略を考えてみます》

上方修正は株価にとって好材料

上方修正とは、企業が過去に掲げた利益予想などの数字を引き上げることです。

基本的に、特別利益などではなく本業の利益の上方修正は、マーケットでは好材料とみられます。そのため、上方修正が発表された銘柄は大きく上昇します。

・Jストリーム<4308>

上方修正で記憶に新しいのが、ネット動画ライブ配信などを手掛けるJストリーム<4308>。2020年10月29日の大引け後、2021年3月期の通期の経常利益予想を従来の9億円から18億円と一挙2倍に上方修正したことから、株価はその後わずか1か月程度で90%以上も上昇する快進撃となりました。

実は、日本企業は上方修正が発表されやすい、といわれています。なぜなら、上場企業の多くは期初に投資家に向けて発表する業績予想を保守的(控え目)に発表する傾向があるからです。

そして、今後の売り上げや利益に関する業績予想は一年の間に何度か見直しが行われ、現状の経営実態に合わせた予想にその都度、修正されます。

企業の“クセ”を見抜いて先回り戦略

「売上高で10%以上の増減があった場合」もしくは「営業利益・経常利益・当期純利益で30%以上の増減があった場合」には、上場企業は業績予想の修正を開示することが義務付けられています。

利益の増減のうち、増えるほうが「上方修正」、減るほうは「下方修正」と呼ばれます。

各企業が出す業績予想にはそれぞれ特徴があり、毎年保守的な予想を出す企業もあれば、強気で通す企業、業績修正を繰り返し行う企業、期初予想を貫き通す企業など、実はバラエティに富んでいるのが面白いところ。

決算発表のタイミングも各社バラバラですが、企業ごとに見ると毎年一定のところが多いようです。また、多くの企業はだいたい決算発表の1週間前に業績修正を出しますが、なかには数日前や決算と同時に出す企業もあります。

これらのタイミングも企業ごとにパターンがあり、個別銘柄分析では必ず押さえておきたい項目のひとつ。なぜなら、パターンを把握しておくことで、「A社はそろそろ上方修正が出るぞ」と先回りして戦略を立て、チャンスに備えることもできるようになるからです。

なぜ上方修正で株が上がるのか?

では、なぜ業績が修正されると株価が上がりやすいのでしょうか。まずは理論的な説明を考えてみましょう。

株価はEPS(1株あたり純利益)とPER(株価収益率)で表現されます。

  • EPS×PER=株価

EPSとは純利益を発行済み株式数で割って算出したもの。PERとは現在の株価が企業の利益水準に対して割高か割安かを示す指標で(株価÷EPS)、企業の将来に対する投資家の期待を表しているともいえます。

どちらも、実際の業績数値をもとに算出されることもありますが、それよりも企業が発表する利益の予想数値をもとにした予想EPS・予想PERを見ることで、現在株価や今後の株価動向の分析に用いられます。つまり、上方修正がされると、これらの数値も変化するということです。

基本的に、上方修正が出されるということは予想利益が多くなるわけですから、1株あたり純利益を示すEPSは上昇します(特別利益の計上など一過性の要因によって一時的に業績が上昇した場合は、この限りではありません)。すると、計算上の株価も上昇します。

  • EPS⇧×PER=株価⇧

さらに、本業が好調であることによる上方修正であれば、投資家の期待値もぐんと高まってPERも上昇するため、さらなる株価上昇につながります。

  • EPS⇧×PER⇧=株価⇧⇧

このように、上方修正によってEPSやPERが上昇することで、(理論上は)必然的に株価が上昇しやすくなるのです。

ただし、実際のマーケットは理論どおりには動いてくれません。上方修正が発表されて株価が上がる場合もあれば、反対に、株価が下がる場合もあるのです。両者の違いは一体何なのでしょうか。

上方修正で上がる株・下がる株

株価というのはマーケット参加者の「思惑」によって動くものです。そのため、現時点の企業に対する評価というよりも、その先を見据えたものになっており、それが「株価には先見性がある」と言われるゆえんです。

裏を返せば、市場の思惑を覆すようなサプライズが起きれば、株価は反応するということ。地味な同僚が実は大富豪の御曹司だったとか、メガネ女子がメガネを外したら超美人だったとか、要はそういう場合と同じです。

上昇修正についても、その衝撃の度合いが大きければ大きいほど、それに対する反応も大きく敏感になります。赤字予想だった企業が一転して黒字予想に転換した場合などは、大きなポジティブサプライズとして株価が急騰することはよくあります。

期待を下回ると株価へのマイナス要因に

一方、上方修正を発表したものの株価が下落するケースは、大きく2つに分けられます。

  • 上方修正が市場の期待(コンセンサス)よりも小さかった場合
  • 上方修正がすでに株価に織り込まれていた場合

株式市場には、アナリストの業績予想の平均値である「コンセンサス予想」というものがあります。それを参考にして売買をする個人投資家も多いため、その数値は市場の期待度の目安となります。

上方修正は市場の期待を上回れば上回るほどサプライズとなるため、その規模がコンセンサス予想と同程度、もしくは予想に届かなかった場合には、「期待外れだった」ということで、株価にはマイナス要因となってしまいます。

さらに、もともと上方修正が濃厚で、すでに投資家の先行期待によって株価が上昇してしまっている場合には、実際に予想どおりの上方修正が出ても「織り込み済み」として反応しなかったり、「材料出尽くし」として株価にネガティブに働いたりします。

どんなに成績優秀者であっても、絶えず高いハードルを超え続けられるのか、それとも一時的な期待を集めただけで終わるのか。株式市場は常に冷静に判断しているといえるでしょう。

上方修正銘柄を狙う絶好のタイミング

控え目が美徳とされる日本においては、期初に大きく出て期末に目標未達で叩かれるよりも、最初からハードルを低めに出しておいて順当にクリアするほうがいい、と多くの経営者が考えるのも道理でしょう。

個人投資家としては、この特性を大いに活用して、「上方修正しそうな銘柄」に先回りして投資しておく、という戦略が考えられます。

チャンスは3度やって来る

上方修正が最も出やすいのは、中間決算を発表するタイミングです。3月期決算企業であれば、中間決算発表のピークにあたる10月下旬から11月中旬に多く出されます。

この中間決算で上昇修正を出す銘柄を狙うなら、まずは、期初に保守的な予想を出した企業が候補に挙がります。予想が低ければ、当然、上方修正のチャンスが多くなるからです。

次に、第1四半期の業績に目を付けます。この時点での会社計画に対する進捗率が過去平均値を上回って高水準であれば、中間決算の前に上方修正する可能性が高くなります。

加えて、中間決算で上方修正した銘柄は、その後、再び上方修正する場合が多く、着地も一段と上振れするケースが多くなります。そう、保守的な企業はどこまでも保守的なのです。

つまり、「上方修正しそうな銘柄」を狙うタイミングは以下の3つ。

  • 保守的な期初予想が出たとき
  • 第1四半期の進捗率が過去平均より高いとき
  • 中間決算で上方修正が出たとき

上でも述べた通り、企業の業績修正にはクセがあり、その発表タイミングは毎年同じ時期になりやすいため、目星を付けた銘柄について過去の上方修正のパターンを分析しておくと、先回りすることが可能となります。

・村田製作所<6981>

保守的な会社予想を出しがちな企業として知られている村田製作所<6981>。2021年3月期の期初の税引前利益予想は2120億円(前期比16.5%減)という減益見通しでした。しかしながら、第1四半期の進捗率は55%に達し、過去5年の平均42.3%を大きく上回ります。

結果的に、中間決算で上方修正、続く第3四半期でも上方修正、さらに着地も上振れて3164億円(前期比24.6%増)の増益となりました。

株価は、上方修正後に大きく値を伸ばし、2021年1月には一時10,835円となるなど50%近くも上昇したのです。

今年は上方修正への期待がアツい

2021年3月期の決算発表では、着地は上方修正となったものの、2022年3月期の業績見通しが市場コンセンサスに届かず、そのため株価は大きく下落する銘柄が目立ちました。これには、コロナ禍の先行き不透明感から、企業が業績見通しをより一層保守的に出さざるを得ないという事情があります。

ということは、今後の上方修正の期待もさらに高まるというもの。第1四半期決算が出る夏から中間決算が出る秋にかけて注目が集まるでしょう。ぜひとも企業ごとの業績修正のクセやパターンを把握して、チャンスの幅を広げ、それをしっかりとモノにしたいですね。

もちろん、株価は業績だけに連動するわけではなく、外部環境や個別事情などさまざまな要因に左右されます。上方修正という情報だけで飛びつくと、思わぬ損失になってしまうことも。市場の特性を知り、過去を分析し、自分なり戦略を練るからこそ、株式投資は面白いのです。

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[執筆者]岡田禎子
[おかだ・さちこ]証券会社、資産運用会社を経て、ファイナンシャル・プランナーとして独立。資産運用の観点から「投資は面白い」をモットーに、投資の素晴らしさ、楽しさを一人でも多くの方に伝えていけるよう活動中。個人投資家としては20年以上の経験があり、特に個別株投資については特別な思い入れがある。さまざまなメディアに執筆するほか、セミナー講師も務める。テレビ東京系列ドラマ「インベスターZ」の脚本協力も務める。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、ファイナンシャル・プランナー(CFP) かぶまどアワード2020
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