上方修正のタイミングと、上がる株・下がる株の違いとは

岡田禎子
最終更新日:2021-10-03 公開日:2021-06-08

《個人投資家は「上方修正」という言葉が大好き。なぜなら「上方修正=株価が上がる」という共通のイメージがあるからです。しかし、実は株価が下がる場合も大いにあります。一筋縄ではいかないからこそ面白い。そんな「上方修正」はいつ、どのタイミングで発表されるのでしょうか。チェックの方法と投資戦略を考えてみます》

上方修正は株価にとって好材料

上方修正とは、企業が過去に掲げた業績予想などの数字を引き上げることです。

基本的に、特別利益などではなく本業の利益の上方修正は、マーケットでは好材料とみられます。そのため、上方修正が発表されたタイミングで銘柄は大きく上昇する傾向にあります。

・Jストリーム<4308>

上方修正が発表されたタイミングで株価が上がった銘柄として記憶に新しいのが、ネット動画ライブ配信などを手掛けるJストリーム<4308>。2020年10月29日の大引け後、2021年3月期の通期の経常利益予想を従来の9億円から18億円と一挙2倍に上方修正したことから、株価はその後わずか1か月程度で90%以上も上昇する快進撃となりました。

実は、日本企業は上方修正が発表されやすい、といわれています。なぜなら、上場企業の多くは期初に投資家に向けて発表する業績予想を保守的(控え目)にする傾向があるからです。

そして、今後の売り上げや利益に関する業績予想は一年の間に何度か見直しが行われ、現状の経営実態に合わせた予想にその都度、修正されます。

上方修正・下方修正は先回り予測できる

「売上高で10%以上の増減があった場合」もしくは「営業利益・経常利益・当期純利益で30%以上の増減があった場合」には、上場企業は業績予想の修正を開示することが義務付けられています。

利益の増減のうち、増えるほうが「上方修正」、減るほうは「下方修正」と呼ばれます。

各企業が発表する業績予想にはそれぞれ傾向があり、毎年保守的な業績予想を出す企業もあれば、強気で通す企業、上方修正・下方修正を繰り返し行う企業、期初予想を貫き通す企業など、実はバラエティに富んでいるのが面白いところ。

決算発表のタイミングも各社バラバラですが、企業ごとに見ると毎年一定のところが多いようです。また、多くの企業はだいたい決算発表の1週間前に業績予想の修正を出しますが、なかには数日前や決算と同じタイミングで上方修正・下方修正を発表する企業もあります。

これらのタイミングも企業ごとにパターンがあり、個別銘柄分析では必ず押さえておきたい項目のひとつ。なぜなら、決算発表のタイミングや上方修正・下方修正のパターンをチェックしておくことで、「A社はそろそろ上方修正が出るぞ」「B社は下方修正が出るかもしれない」と先回りして戦略を立て、チャンスに備えることもできるようになるからです。

なぜ上方修正で株が上がるのか?

では、なぜ業績予想が修正されると株価が上がる傾向にあるのでしょうか。まずは理論的な説明を考えてみましょう。

株価はEPS(1株あたり純利益)とPER(株価収益率)で表現されます。

  • EPS×PER=株価

EPSとは純利益を発行済み株式数で割って算出したもの。PERとは現在の株価が企業の利益水準に対して割高か割安かを示す指標で(株価÷EPS)、企業の将来に対する投資家の期待を表しているともいえます。

どちらも、実際の業績数値をもとに算出されることもありますが、それよりも企業が発表する利益の予想数値をもとにした予想EPS・予想PERを見ることで、現在株価や今後の株価動向の分析に用いられます。つまり、上方修正がされると、これらの数値も変化するということです。

基本的に、上方修正が発表されるということは予想利益が多くなるわけですから、1株あたり純利益を示すEPSは上昇します(特別利益の計上など一過性の要因によって一時的に業績が上昇した場合は、この限りではありません)。すると、計算上の株価も上昇します。

  • EPS⇧×PER=株価⇧

さらに、本業が好調であることによる上方修正であれば、投資家の期待値もぐんと高まってPERも上昇するため、さらなる株価上昇につながります。

  • EPS⇧×PER⇧=株価⇧⇧

このように、上方修正によってEPSやPERが上昇することで、(理論上は)必然的に株価も上昇する傾向にあるのです。

ただし、これらはあくまでひとつの傾向で、実際のマーケットは理論どおりには動いてくれません。上方修正が発表されたタイミングで株価が上がる場合もあれば、反対に、株価が下がる場合もあるのです。両者の違いは一体何なのでしょうか。

上方修正で上がる株・下がる株

株価というのはマーケット参加者の「思惑」によって動くものです。そのため、現時点の企業に対する評価というよりも、その先を見据えたものになっており、それが「株価には先見性がある」と言われるゆえんです。

裏を返せば、市場の思惑を覆すようなサプライズが起きれば、株価は反応するということ。地味な同僚が実は大富豪の御曹司だったとか、メガネ女子がメガネを外したら超美人だったとか、要はそういう場合と同じです。

上方修正についても、その衝撃の度合いが大きければ大きいほど、それに対する反応も大きく敏感になります。業績予想が赤字だった企業が一転して黒字予想に転換した場合などは、大きなポジティブサプライズとして株価が急騰することはよくあります。

期待を下回ると上方修正しても株価にはマイナス

一方、上方修正を発表したものの株価が下落するケースは、大きく2つに分けられます。

  • 上方修正が市場の期待(コンセンサス)よりも小さかった場合
  • 上方修正がすでに株価に織り込まれていた場合

株式市場には、アナリストの業績予想の平均値である「コンセンサス予想」というものがあります。それを参考にして売買をする個人投資家も多いため、その数値は市場の期待度の目安となります。

上方修正は市場の期待を上回れば上回るほどサプライズとなるため、その規模がコンセンサス予想と同程度、もしくは予想に届かなかった場合には、「期待外れだった」ということで、株価にはマイナス要因となってしまいます。

さらに、もともと上方修正が濃厚で、すでに投資家の先行期待によって株価が上昇してしまっている場合には、実際に予想どおりの上方修正が発表されても「織り込み済み」として反応しなかったり、「材料出尽くし」として株価にネガティブに働いたりします。

逆に、下方修正を発表しても株価がほとんど下落しないケースもあります。業績不振から下方修正が続くと予想され、投資家が下方修正を織り込み済みの場合、市場に与える影響は少ないからです。

どんなに成績優秀者であっても、絶えず高いハードルを超え続けられるのか、それとも一時的な期待を集めただけで終わるのか。株式市場は常に冷静に判断しているといえるでしょう。

上方修正銘柄を狙う絶好のタイミング

控え目が美徳とされる日本においては、期初に大きく出て期末に目標未達で叩かれるよりも、最初からハードルを低めに業績予想を発表しておいて順当にクリアするほうがいい、と多くの経営者が考えるのも道理でしょう。

個人投資家としては、この特性を大いに活用して、「上方修正を発表しそうな銘柄」に先回りして投資しておく、という戦略が考えられます。つまり、上方修正が出そうなタイミングを予測し、あらかじめ準備しておくということです。

上方修正銘柄を狙うチャンスは3度

上方修正が最も発表されやすいのは、中間決算を発表するタイミングです。3月期決算企業であれば、中間決算発表のピークにあたる10月下旬から11月中旬が上方修正のタイミングとしては多い傾向にあります。

この中間決算で上方修正を発表しそうな銘柄を狙うなら、まずは、期初に保守的な業績予想を出した企業が候補に挙がります。業績予想が低ければ、当然、上方修正のチャンスが多くなるからです。

次に、第1四半期決算の業績に目を付けます。この時点での会社計画に対する進捗率が過去平均値を上回って高水準であれば、中間決算の前に上方修正する可能性が高くなります。

加えて、中間決算で上方修正を発表した銘柄は、その後、再び上方修正する傾向が強く、着地も一段と上振れするケースが多くなります。そう、保守的な企業はどこまでも保守的なのです。

つまり、「上方修正しそうな銘柄」を狙うタイミングは以下の3つ。

  • 保守的な期初予想が発表されたとき
  • 第1四半期決算の進捗率が過去平均より高いとき
  • 中間決算で上方修正が発表されたとき

上でも述べた通り、企業の業績修正にはクセがあり、その発表タイミングは毎年同じような時期になる傾向にあります。目星を付けた銘柄が過去に上方修正・下方修正を発表したタイミングや条件を分析しておくと、先回りすることが可能となります。

・村田製作所<6981>

保守的な業績予想を発表しがちな企業として知られている村田製作所<6981>。2021年3月期決算の期初の税引前利益予想は2120億円(前期比16.5%減)という減益見通しでした。しかしながら、第1四半期決算の進捗率は55%に達し、過去5年の平均42.3%を大きく上回ります。

結果的に、中間決算発表で上方修正、続く第3四半期決算でも上方修正、さらに着地も上振れて3164億円(前期比24.6%増)の増益となりました。

株価は、上方修正発表後に大きく値を伸ばし、2021年1月には一時10,835円となるなど50%近くも上昇したのです。

今年は上方修正への期待がアツい

2021年3月期の決算発表では、着地は上方修正となったものの、2022年3月期の業績予想が市場コンセンサスに届かず、そのため株価は大きく下落する銘柄が目立ちました。これには、コロナ禍の先行き不透明感から、企業が業績予想をより一層保守的に出さざるを得ないという事情があります。

ということは、今後の上方修正の期待もさらに高まるというもの。第1四半期決算が出る夏から中間決算が出る秋にかけたタイミングで上方修正の注目が集まるでしょう。ぜひとも企業ごとの業績修正のクセやパターンをチェックしてチャンスの幅を広げ、それをしっかりとモノにしたいですね。

もちろん、株価は業績だけに連動するわけではなく、外部環境や個別事情などさまざまな要因に左右されます。上方修正という情報だけで飛びつくと、思わぬ損失になってしまうことも。市場の特性を知り、過去を分析し、自分なり戦略を練るからこそ、株式投資は面白いのです。

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[執筆者]岡田禎子
[おかだ・さちこ]証券会社、資産運用会社を経て、ファイナンシャル・プランナーとして独立。資産運用の観点から「投資は面白い」をモットーに、投資の素晴らしさ、楽しさを一人でも多くの方に伝えていけるよう活動中。個人投資家としては20年以上の経験があり、特に個別株投資については特別な思い入れがある。さまざまなメディアに執筆するほか、セミナー講師も務める。テレビ東京系列ドラマ「インベスターZ」の脚本協力も務める。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、ファイナンシャル・プランナー(CFP) かぶまどアワード2020
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