勝てる投資家は「悲観」で買う! 危機を利益に変えるバーゲンハンターの心得
《株で勝てる人と勝てない人は一体どこが違うのか? 実は、どちらにも「共通点」があります。30年以上の実績をもつファンドマネージャーが「一流の投資家」の条件を明かす【情熱の株式投資論】》
「悲観の極みは最高の買い時」
強気相場は悲観のなかで生まれ、懐疑のなかで育ち、
楽観とともに成熟し、陶酔のなかで消えてゆく。
悲観の極みは最高の買い時であり、
楽観の極みは最高の売り時である。
この言葉を聞いたことがある人は多いでしょう。この一文は、伝説の投資家であるジョン・テンプルトンの投資哲学を明確に打ち出したものとして有名です。
私がいつも心掛けていることのひとつに、この「悲観で買う」という考え方があります。
株式市場の「バーゲン」とは
株式をバーゲン価格で買える理由は、「他の投資家が売っているから」です。言い換えると、株式をバーゲン価格で買うには、大衆が最も恐れ、最も悲観的になっているところを探さなければなりません。
感情的になったり、勘違いや思い込みのせいで株式市場が暴落したり暴騰したりする時期には、買い手や売り手が市場で見せる集団的行動の中に「知恵」や「熟慮」を見いだすことはできません。
そして、株価のオーバーシュートは、いわゆる市場がバブルになったときだけに見られるものではなく、程度の差こそあれ、一日の中でも、一週間の中でも、一カ月の中でも、一年の中でも見られるものです。
歴史をよく理解し、長期的視野を持ち、悲観の極みで買おうとするバーゲンハンターは、そのパターンが歴史の中で何度も繰り返されるという事実を正しく評価できています。
相場の歴史を知っていることは、投資に大いにプラスになります。出来事が正確に繰り返されるというよりも、出来事のパターンや市場参加者の反応の仕方は、ある程度までは予測可能だからです。歴史は、投資家が株式市場のサプライズに過剰反応することを証明しています。
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雨の日に買って、晴れの日に売る
人は予想外のことに出くわすと、たいていはパニックに陥ります。だからこそ、状況を前もって調べておくことが必要になります。つまり、株を買う前にその企業について、事業内容や成長のドライバー(促進要因)、リスク要因、過去の業績推移、競争状況などを理解しておくことです。
株を安いときに買うということは、一時的な人気がなくなった銘柄の賢い買い手になるということです。前もって企業情報の蓄積と分析を行っておけば、企業が土砂降りに遭って株価が下落したときに、断固とした姿勢でその株を買うことができます。
市場が雨の日に株を買って、晴れの日に売るという習慣を身に付けることが大切です。いま起きていることだけでなく、将来どのようなことが起こりうるのかを考えるのです。そして、どのようなことが起きる確率が高いのかに集中するのです。
投資家というのは、銘柄や業界、株式市場に対して偏見を抱いてしまう傾向があり、偏見にとらわれた投資家は、バーゲンの着想に目を向けることすらできなくなります。
企業は問題を抱えている
どんな企業も問題を抱えています。それが、市場にどれほど知られ、どれほど深刻なものか、という点が異なるだけです。
短絡的な投資家は、短期予想の変化に慌てふためきます。そのため、企業にとって一時的と思われる問題が、絶好の投資チャンスに結び付くことが非常に多いです。企業の短期的なぶれはしょっちゅう起きるものです。
基本的にバーゲンハンターは、問題のあることが株式市場に知れわたった銘柄を買おうと試みます。企業の一時的問題から生じた市場の大きな過剰反応を利益に結び付けるのは、バーゲンハンターにとって基本的な戦略です。見通しが悪いほど、それが変わったときのリターンも大きくなります。
多くの企業について、その問題を評価・分析する経験を積み重ねれば、小さな問題と大きな問題の違いがわかるようになり、企業が直面した小さな問題に株式市場が過剰反応する局面を巧みに利用できるようになります。
非常に多くの投資家が、短期的なアンダーパフォーマンスを理由に最悪のタイミングで投資対象を処分してしまいます。自分の投資について慎重となるべきときは、最大の誤りを犯したときではなく、最大の成功を収めたときなのです。
落ちてくるナイフを手で掴む
バーゲンハンターは、下落している株を買うことになります。投資家心理の変化は急激であり、株価が底を打って急反発してしまえば、リターンの大半を取り逃がす結果となってしまいます。一般大衆のあとをついていったのでは、一般大衆と同じ成果しか手にできません。
成功の確率を高めるためには、企業の長期的収益見通しや長期的収益力を基準として割安な銘柄を仕込むことです。大幅に売り込まれ、人気がなくなり、市場に誤解されている銘柄こそ、成功の確率が高くなります。
・競争優位性はあるか
遠い将来に向けた企業の見通しに照準を合わせる場合、市場における企業の競争的地位を考える必要があります。企業が長期にわたり収益力を維持するには、競争優位性が不可欠です。
他の企業が真似できない競争優位性を備えていれば期待が持てます。生産コストが他社よりも低く、優れたブランドを持ち、品質に定評があるために販売価格を高く設定できる企業であれば、将来にわたって高い利益率を維持できるという予想に対する確信が深まります。
・バブルと正しい大局観
人々は通常、新しい産業に過大の評価をするものです。下振れリスクをほとんど無視した楽観論が横行します。インターネットバブルの崩壊も、その好例です。短期間にあまりに多くの好材料を織り込み、株価はどんでもないバリュエーションまで膨れ上がりました。
そうして市場が熱にうなされて売り一色になったとき、最大の買い場がやってきます。バーゲン株はお宝ポジションになるでしょう。状況が最も暗く見えるときに買いにいく決断ができれば、株式市場で優位な地位に立てます。
・ボラティリティーはお友達
バーゲン株を買うときは、ボラティリティーが最も強力な味方になります。ボラティリティーが大きければ、バーゲン株を見つける機会がそれだけ多くなります。企業価値とその株価のずれが生じる最大の投資機会は、市場に悲観論があふれているときに訪れることが多いのです。
市場のボラティリティーに翻弄されるのではなく、それを利用する立場に立つことが重要です。
・売り手に快く応じる
原因となる出来事が何であろうと、ネガティブサプライズをきっかけに市場が一斉に売りに走ったときは、バーゲンハンターは皆が売りたがっている株を買うことを考えなくてはなりません。
株式市場の広範な急落を引き起こす危機的状況は、歴史の流れの中で途切れることなく発生します。将来危機的状況に遭遇したときは、すかさずそれを生かすという心構えが欠かせません。
・マスコミを味方につける
マスコミが流す暗いニュースの洪水を乗り切ることも必要になります。
暗いニュースは明るいニュースよりも人目を引きやすく、マスコミは足元の問題に狙いを定め、大衆をあおるように誇張して伝える傾向があります。考えられる最悪の結果に目を向けさせようとするのです。そしてマスコミには、市場に恐怖を吹き込み、投資家に安値で株を売らせる力があります。
大衆は、悪いニュースに翻弄されやすいです。「手遅れになる前に株を手放せ」と投資家をそそのかすマスコミは、バーゲンハンターの頼もしい味方になってくれます。
相場には血が流れている
金融市場に血が流れているときこそ、最高の買い時になります。たとえ、そこに自分の血が混じっていたとしても、この原則は変わりません。長期投資の目的は長期リターンを高めることであり、慌てて売りに走ることではないのです。
危機の度に繰り返されること
個々の危機は、部分的には以前の危機と異なって見えるでしょうが、一般的に言えば共通する要素を持っています。
ところが、いくら前例が豊富にあったとしても、一般大衆は、やはり最悪の事態を恐れ、「過去の悲劇と『今回は違う』のだから、新たな現実と真剣に取り組む必要がある」と言い放ってしまいます。しかし様々な危機の事例では、状況がどんなに違って見えても、たいていは同じ結果になります。
だからこそ、群衆とは逆方向に動くことが成果につながります。危機のさなかに投資を試みる者にとって最大の利点は、個々の事例が外観的に少しずつ異なっているため、過去の事例と厳密な比較が容易でないことであり、それによって、投資家が常に混乱に陥ることなのです。
グローバル投資のメリット
世界に目を向けるようになれば、バーゲン株候補の幅が広がり、厚みが増します。国同士を比較するという作業によって一層有望なバーゲン株を見つけられます。地域・国によって見通しや投資家心理が異なることで、資産価格にも国ごとにばらつきが生じます。
もちろん、分散化の効果も得られます。分散化は自分の身を守るのに良い手段です。複数の国に資産を分散することで、完全な見込み違いによる痛みを和らげることができます。
分散しなくていいのは、いつでも100%正しい判断ができる投資家だけです。