株で儲けている人の習慣 「一流の投資家」はいつ株を買っているのか

朋川雅紀
2021年10月23日 8時00分

《株で勝てる人と勝てない人は一体どこが違うのか? 実は、どちらにも「共通点」があります。30年以上の実績をもつファンドマネージャーが「一流の投資家」の条件を明かす【情熱の株式投資論】》

相場の季節性と周期性

「歴史は繰り返す」と言われるように、相場にはある種のパターンや季節性が存在します。

歴史が決して全く同じではないのと同じく、完全に正確に過去のパターンに従うことはありませんが、パターンを頭に入れておけば、いつそれを意識すべきかを知ることができ、パフォーマンスの改善に結びつきます。

アメリカ市場の「アノマリー」から、相場の季節性と周期性について考えます。

株を買う絶好の季節

昔は農業が株価を動かす大きな要因でした。そのため8月は相場にとって最高の月でしたが、現在では最悪の月のひとつになっています。また、9月に入ると人々は学校や仕事に戻り、ファンドマネージャーは第3四半期の決算対策にポートフォリオの株を処分売りするため、9月は平均して1年で最悪の月になります。

このように他の月よりも株価が大幅に安くなりやすい8~10月は、新規に買いポジションを取るか、持ち株を買い増すのに絶好の機会です。

一方、第4四半期はクリスマスショッピングで個人消費が増え、年末のボーナスが市場に流れ込むことに加えて、機関投資家がその年度の業績を良くしようと努力することで、相場は上昇する傾向が見られます。その後、新年に入っても、楽観的な見通しや前向きな気分が支配的になって、市場の好調さは維持されます。

こうした特性のおかげで、11~4月は投資家にとって最高の6か月になります。相場の上昇のほとんどが晩夏から初秋にかけて始まり、冬から春にかけて終わりを告げます。

12か月の相場パターン──最高と最悪の転換点を知る

相場の季節性は「自然」と強いつながりがあると思われます。つまり、文化的な行動の反映と言えます。

・8月は閑散

20世紀前半には、収穫の売上で得たお金が市場に入ってきたおかげで、8月は株式市場にとって素晴らしい月でした。1900年には、人口の4割近くが農業に従事していましたが、現在では、農業人口は2%にも満たないので、8月は1年で最も悪いパファーマンスの月のひとつになっています。

特にアメリカやヨーロッパでは8月は休暇を取る人が多く、取引所も閑散としています。

・9月は最悪

9月は1年で最悪の月と言われています。9月の相場は高く始まる傾向がありますが、夏が終わり、子供たちが学校に戻ってくるとともに、ファンドマネージャーが第3四半期末近くに株の処分売りを行う傾向があります。

・10月恐怖症

10月はしばしばウォール街に悪夢を呼び起こすので、「10月恐怖症」という言葉が使われるほどです。1929年の大恐慌や1987年のブラックマンデーによる株価の暴落は、いずれも10月に起こりました。

10月は「ベアキラー」とも呼ばれ、しばしば弱気相場に終止符を打つ相場転換の月となるので、現在では1年のうちで株を買うのにふさわしい月のひとつといえます。

・11月から始まる

11月~1月は最も良い3か月です。株価が上昇する可能性が高いだけでなく、上昇自体も他の月に比べて圧倒的に大きくなる傾向があります。

感謝祭から年末にかけての休暇シーズンが始まる11月は、1年で最高の数か月の到来を告げます。ダウ平均株価とS&P500では「最高のか月」が、ナスダックでは「最高のか月」が始まります。また11月には、機関投資家の第4四半期の資金が市場に入ってきます。

・12月のサンタクロース

相場が12月に急落することはめったにありませんが、そうなるときには、たいてい相場の転換点であり、天井か底に近いということです。一方、下げに苦しんだ後に12月も急落するようなら、間もなく上昇が始まると思ってよいでしょう。

月の前半は、節税目的の売りと年末のポートフォリオの見直しが最高潮に達するので、相場は弱くなる傾向にあります。

市場がクリスマス休暇に入る直前かその直後に始まって、その年の最後の5日間と新年の2日間に、短いですが大きな上昇があり、これは「サンタクロースラリー」と呼ばれています。サンタクロースラリーが訪れなければ、金融市場に弱気相場が訪れるという警告になります。

・1月バロメーター

毎年、年初になると必ずこの話題が出ますが、「1月最初の5日間」によって、その年の市場環境を占うことができます。1月最初の5日間が上昇した年は好調な一年になることが多いようです。

年間の相場は1月の動きに似るという「1月バロメーター」は、これまで大きく外すことはほとんどありません。1月に下落すると、経済か政治か軍事面で、その後に問題が起きるという前兆になるということです。

月に予測力があるのは、この月に起きる重要なイベントが多いからです。議会が新たに招集され、大統領が一般教書演説をして年間予算を提示し、国家目標と優先事項を決めます。また1月は資金が流入し、ポートフォリオが見直され、新たな投資戦略が策定されます。

・2月にひと息

11月から1月の最高の3か月にしっかり上昇すると、相場は2月にひと息つくのが通例です。1月の上昇率が大きいと、2月には調整するか揉み合うことが多くなります。そして2月末か3月初めには再び上昇を始めて、「最高の6か月」が終わる4月まで上げ続ける傾向があります。

・3月のバトル

月相場に入ると、株価は月初めに押し上げられて、月末に打ちのめされる傾向があります。3月は、しばしば強気と弱気が闘う場となります。株価は3月中旬頃に下げがちで、時にはかなりの急落を見せることがあります。

・4月への期待

月はダウ平均株価とS&P500にとって、「最高の6か月」の終わりとなります。4月の間、市場は第四半期の収益結果に注目しています。ここでのポジティブサプライズが期待されやすく、相場は収益発表に先立って上昇します。

・5月では遅い

「5月に売って、相場から離れなさい(セルインメイ)」という相場格言がありますが、近年では、5月まで待ってから相場を離れるのでは遅過ぎるかもしれません。

それよりも、早目の4月に手仕舞って、その後に起こる数か月の苦痛を避け、暖かな天気や夏休みを楽しむことを考えたほうがよいでしょう。~7月に相場から離れていても、良い収益機会を逃すことはほとんどありませんから。

5月は長年にわたって、油断のならない月でした。ダウ平均株価とS&P500にとって、5月は「最悪のか月」の始まりになります。

・そして最悪が始まる

ナスダックは月まで好調であることが多く、ナスダックの「最高の8か月」は6月まで続き、「最悪の4か月」が7月に始まります。

そして、すでに述べたように8月と9月のパフォーマンスはマイナスになることが多いです。

政治と相場──4年周期の絶好の買い時は

最後に、政治が相場に与える影響について考えてみたいと思います。

アメリカでは、大統領選挙が景気と株式市場に大きな影響を与えてきました。景気低迷や弱気相場は、大統領の任期の前半に起こり、景気好調と強気相場は任期の後半に起こる傾向があります。

そして、最大の相場上昇は、大統領選挙の前年に起こりやすいです。再選を勝ち取るために、大統領は痛みを伴う取り組みのほとんどを任期の前半に行い、任期の後半になると景気刺激策を行って、有権者が投票所に出かけるときに最も好景気になるようにするからです。

政府は、大統領選挙の年に経済を良く見せて有権者を喜ばせ、不人気な政策の実行を翌年まで先延ばしにします。それに対して相場は、人気のある大統領の再選や不人気の大統領が政権の座を降りたことを祝福して、上昇します。

時には打ちのめされるイベントが起きて暴落することもありますが、そうなると、たいてい政権交代が起きます。2020年も、新型コロナウイルスの猛威により、トランプからバイデンへの政権交代が起きました。

2000年(ITバブル崩壊)と2008年(リーマン・ショック)は例外でしたが、大統領選挙があった年に投資家が相場で痛手を被ったことは、ほとんどありませんでした。2020年も新型コロナウイルスの悪影響を受けたにも関わらず、最終的に株価は戻りました。

アメリカ大統領の任期は4年。この4年周期で絶好の買い時は、中間選挙の年の第4四半期になります。ちなみに、次の中間選挙は来年です。

アノマリーが発する警告

私がアノマリーの存在を初めて知ったとき、「何か胡散臭いもの」「使えないもの」と感じました。というのも、いつも相場はアノマリー通りに動かないからです。

その後、自分の考えが間違っていたことに気づきました。そもそも100%うまくいく手法などこの世の中には存在しないのです

そこで、少しでもパフォーマンスの役立つものは何でも取り入れようと心を入れ替えました。もしアノマリーが全く存在しないのであれば、各月のリターンの平均は似たような数字になるはずですが、実際はそうなっていません。つまり、月によってリターンに差があるのです。

もし相場がアノマリー通りに動かないのであれば、それは他の影響力のほうが強いということです。注意すべきという警告と受け取ることができます。

2021年は大統領選挙の翌年で、アノマリーによればパフォーマンスはあまりよくないはずですが、新型コロナウイルスの影響で景気刺激策を取り続けたことが、株価上昇をもたらしてきました。

相場は必ずしもアノマリー通りに動くわけではない。しかし、それこそがアノマリーの意義なのかもしれません。ぜひ、いつでも頭の片隅にアノマリーを。

【情熱の株式投資論】

[執筆者]朋川雅紀
朋川雅紀
[ともかわ・まさき]大手信託銀行やグローバル展開するアメリカ系資産運用会社等で、30年以上にわたり資産運用業務に従事。株式ファンドマネージャーとして、年金基金や投資信託の運用にあたる。その経験を生かし、株価サイクル分析と業種・銘柄分析を融合させた独自の投資スタイルを確立。現在は投資信託のファンドマネージャーを務めるかたわら、個人投資家の教育・育成にも精力的に取り組んでいる。ニューヨーク駐在経験があり、特にアメリカ株式投資に強み。慶応義塾大学経済学部卒業。海外MBAのほか、国際的な投資プロフェッショナル資格であるCFA協会認定証券アナリストを取得。著書に『みんなが勝てる株式投資』(パンローリング)がある。
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