株で儲けられない人の誤解 「一流の投資家」が考える本当に勝てる投資法とは

朋川雅紀
2021年12月17日 17時30分

《株で勝てる人と勝てない人は一体どこが違うのか? 実は、どちらにも「共通点」があります。30年以上の実績をもつファンドマネージャーが「一流の投資家」の条件を明かす【情熱の株式投資論】》

株式投資への大きな誤解

今回は「基本中の基本」の話をしたいと思います。基本があっての「応用」、基本があっての「変形」ということです。

私は、普通に株式投資をしていれば、低く見積もっても年率5%のリターンを得ることは簡単だと考えています(まじめに勉強して頑張れば年率10%以上のリターンを得ることも難しくないはずです)。

その理由を話す前に、私が常日頃感じていることであり、また多くの方が抱いているであろう「株式投資への誤解」について触れておきます。例えばリターンについて。多くの個人投資家はありえない考えを抱いています。その顕著な例が「30~40%という高いリターンを期待する」という幻想です。

株式投資のやり方自体にも誤解があります。株をやっている人でも、日本株だけにしか投資していないという人はかなりの数に上りますが、人口の減少に直面している日本は、先進国の中でもひときわ低成長です。加えて、一説によれば、個別企業のリターンの約75%は、その企業が属している国・地域のリターンに依存すると言われています。

このことを考慮すると、低成長の国・地域から高いリターンの企業を見つけることは簡単なことではないと容易にわかるでしょう。

普通にやれば年率5%になる理由

読者の中には、「国際分散投資」という言葉をお聞きになったことがある方も大勢いらっしゃると思います。個人的には、この言葉は好きではありません。というのも、私にとって「国際分散投資」はあまりにも当たり前だからです。たくさんの選択肢があるにもかかわらず、なぜ特定の地域(例えば日本だけ)に絞って投資する必要があるのでしょうか。

上記のことを踏まえて、なぜ私が「普通にやりさえすれば年5%以上のリターンを実現できる」と考えるかを説明すると、その大きな理由は、「今後、世界経済は4%(名目ベース)程度は成長する」と思っているからです。

実質ベースの経済成長率が1.5~2%、インフレが2~3%という前提に立てば、名目の経済成長率は4%程度(3.5~5%)になります。

この4%は、企業の売上の伸びと見なすことができます。上場企業であれば、おそらく4%以上の売上増は可能ですし、コスト削減等が実現すれば、収益の伸びが売上の伸びを上回ることもあるでしょう。したがって、上場している企業の収益は、保守的に見積もっても、平均で年率5%の成長ができる、と言っても過言ではないと考えているのです。

「株価の上昇率は収益の伸びに連動する」と仮定すると、株式投資のリターンも5%になります。それが、普通に投資しさえすれば年率5%のリターンは可能だ、ということです。ここでいう「普通」とは、「特定の地域・国、業種、銘柄に集中投資しない、短期売買をしない」ことを指します。

他人を打ち負かすスキルはあるか?

株式投資において、短期売買はゼロサム・ゲームです。誰かが儲ければ、誰かが損をし、参加者全員が儲かることはありません。

ところが、残念なことに多くの投資家は、この投資の基本的な仕組みをわかっていません。自分の実力をわきまえずに短期で売買して、自分から勝手にひっくり返ってしまっています。その結果、わずか5%のリターンすら儲けられないでいるのです。リターンがプラスで終わるのなら、まだマシです。

短期売買では、短期で儲けられるスキルが必要です。ここで言うスキル(実力)とは、チャートを読み解く能力でも、銘柄を分析する能力でも、適切なタイミングで売買を執行する能力でも、何でも構いません。大事なのは、他人よりもはるかに抜きん出ている力が備わっているかどうかなのです。

誰にも負けないような力がひとつでも備わっている、もしくは、それを身につけるための努力を惜しまないのであれば、私は「短期売買をするな」とは申し上げません。むしろ、どんどんスキルを磨き上げて、積極的に短期売買を繰り返していただきたいと思います。

しかし、特筆すべきスキルがなく、時間とお金をかけて勉強する気もないのなら、「短期売買には慎重に取り組んだほうがよい。もしくは、やめたほうがよい」としか言えません。ゼロサム・ゲームである以上、他人との競争に勝たなければ、自分の懐にお金が転がり込んでくることはないのです。

もし、「短期売買はすぐに利益が出そうだ」とか、「負けるときがあるかもしれないけれど、勝つときもあるはずだ。だから、負けたとしても失った金額を取り戻しやすい」などと考えているならば、今すぐ、その考えを捨ててください。

短期売買においては、多くの屍の上を乗り越えていかねばなりません。あなた自身が屍になってはいけないのです。

長期国際分散投資のススメ

私自身は、短期売買であろうが、日本株だけへの集中投資であろうが、儲かりさえするなら、それを続けることが一番よいと思っています。

でも、短期売買や日本株だけに集中投資しようと考えても、そこには特別なスキルが必要になりますし、厳しい現実が待っています。事実、短期売買や集中投資に力を入れてはいるものの、あまり良いパフォーマンスを上げられていない人も多いのではないでしょうか。

そういう方々に提案したいのが「参加者全員が勝てるゲームに参加しませんか」という考えなのです。

「参加者全員が勝てるゲームなんてあるのか?」と思われるかもしれませんが、実際にそのゲームは存在します。それは、スキルを必要とする短期売買の反対にあり、かつ、日本株だけへの集中投資の反対に位置する投資、具体的に言うと「長期国際分散投資」です。

短期売買はゼロサム・ゲームですが、長期での国際分散投資は「5%サムゲーム(参加者全員が平均5%儲けられる)」と言えます。

私が株式投資の拠り所にしているものはただひとつ。それは、先ほども申し上げた「今後も世界経済は(おそらく年4%程度は)成長する」という考えです。

もちろん、世の中に「絶対」はありませんので、必ず4%上がるかどうかの保証はできませんが、少なくとも過去においては、世界経済は年々成長してきましたので、その可能性はかなり高いと思っています。言い換えれば、「世界経済が成長する」という前提がなければ、私は株式投資をしていません。

日本の経済成長率が世界の経済成長率を上回ると思えば、日本だけに投資してもよいかもしれません。しかし、私は日本の経済成長率が世界の経済成長率を上回るという確証を持っていないので、世界中の企業に投資しているのです。

私が世界中の企業に投資しているもうひとつの理由は、「人間は将来を完璧には予測できない」ことを認識しているからです。だからこそ、さまざまな国の、さまざまな企業に投資し、リスク分散を図るのです。

時間を味方につける

私は、少なくとも年率4%(名目ベース)で世界経済は成長すると想定しています。要するに、期待収益は5%くらい(4+α)はあるだろうと考えているわけです。そして、言うまでもなく、この「5%」は長期で見た利率です。

1年や2年という短期間で見たら、私が考える期待収益どおりになることは少ないでしょう。しかし、5年、10年、20年、30年という長期で見れば、期待収益と実現収益との間のズレはほとんどなくなります。なぜなら、時間が収益のズレを吸収してくれるのです。

長期投資においては、年5%程度のリターンでよければ、それほど勉強しなくても、時間をかけて努力をしなくても、手にすることは可能だからです。ただ、いくら口で言っても、実体験として味わうことがなければわからないでしょう。

このコラムを読んでいる方は、さまざまなスタイルで株式投資をしていると思いますが、自分が投資によってどんな利益を手にしたいのか、ぜひ見直してみてください。そして、もしも年率5%で十分だというなら、長期国際分散投資を意識することで、しっかりとそのリターンを確保してほしいと思います。

そのうえで、スキルを向上させることによって投資戦略をブラッシュアップさせ、目標リターンを引き上げていってほしいのです。そして、近い将来、「あなたのスキルは?」という質問にはっきり答えられるような投資家になっていただきたいと願っています。

[執筆者]朋川雅紀
朋川雅紀
[ともかわ・まさき]大手信託銀行やグローバル展開するアメリカ系資産運用会社等で、30年以上にわたり資産運用業務に従事。株式ファンドマネージャーとして、年金基金や投資信託の運用にあたる。その経験を生かし、株価サイクル分析と業種・銘柄分析を融合させた独自の投資スタイルを確立。現在は投資信託のファンドマネージャーを務めるかたわら、個人投資家の教育・育成にも精力的に取り組んでいる。ニューヨーク駐在経験があり、特にアメリカ株式投資に強み。慶応義塾大学経済学部卒業。海外MBAのほか、国際的な投資プロフェッショナル資格であるCFA協会認定証券アナリストを取得。著書に『みんなが勝てる株式投資』(パンローリング)がある。
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