苦戦続きのIPO市場 上がった株・下がった株のその後に見る、2023年への期待【2022年IPOランキング】
《「確実に儲かる」として個人投資家に人気のIPO株投資。ただ近年は、そんな「夢の時代」にも陰りが見えてきました。上がる株と下がる株は何が違うのか。ランキングから読み解く【IPO通信簿】》
2022年のIPOを振り返る
2022年に新規株式公開(IPO)を果たした銘柄は91。100件の大台は割れましたが、件数自体は90台を維持しての着地となりました。しかし18銘柄、約2割が公募割れとなり、公募割れが目立った一年となりました。
そんな2022年のIPOを振り返ります。
マザーズ指数の推移
2022年3月末でマザーズ市場自体はなくなりましたが、新興市場の温度感を図る指標としてのマザーズ指数は存続しています。
2021年11~12月に続落したマザーズ指数は、2022年1月には977ポイントから758ポイントまで2割以上の急落を見せました。その後も安値圏での推移が続き、10~11月は連騰したものの、12月には11月の上昇分を上回る下落が生じ、再び安値圏に戻ってしまいました。
IPO市場はマザーズ指数の動向に大きな影響を受けます。2022年のマザーズ指数は1月の下落分を回復できず、それによってIPO市場の地合いは厳しい状態が続きました。
2022年のIPO初値騰落率ベスト10
2022年のIPO銘柄から、初値騰落率のベスト10を紹介しましょう。
ウェルプレイド・ライゼストの430%が、2位のサークレイス(222%)を大きく離しての第1位となりました。
ベスト5の企業は、1位のeスポーツから5位のAI関連まで業種が分散しました。初のIPO業種など、ユニークな事業内容の銘柄が人気化する傾向は例年通りだったといえます。
2022年の初値騰落率ワースト10
次に、2022年の初値騰落率ワースト10も見てみましょう。
ワーストはアップコンの▲22%です。
例年に比べて公募割れが多く発生した1年となりましたが(計18銘柄)、そのうち最も悪い結果でも▲22%。IPO株投資をトータルで考えれば、1銘柄でも当たりが出れば充分に取り返すことができる下落率だと見ることができます。
初値騰落率上位銘柄の、その後
初値騰落率ランキングでは様々な業種の銘柄が上位に並びましたが、その後、それら銘柄の株価はどうなったのでしょうか? 特徴ある銘柄をピックアップしてみました。
・ウェルプレイド・ライゼスト<9565>
11月30日に上場し、12月2日に高値8,700円まで上昇しましたが、その後は下落が継続。2022年末の株価は3,450円で、依然として公募価格は上回っているものの、「初値天井」に近い状態となっています。
・サークレイス<5029>
上場4日目の4月15日に高値2,600円を付けた後は下落が続き、5月に入ると1,000円割れに。以降は1,000円を前後する状態が継続しました。さらに12月に入るとジリ安が続き、最終的に2022年は765円で取引を終了しています。
・ANYCOLOR<5032>
IPO直後に9,200円まで上昇し、株価は急騰しました。そして7~8月にかけて、株価は5,000~6,000円台を前後する状態で落ち着きました。しかし、9月の決算発表後に再度急騰。10月27日には13,790円の高値まで上昇しました。
ところがその後、12月の決算発表とロックアップ解除を機に下落に転じることに。2022年の終値は5,900円で、完全に“往って来い”となってしまいました。VTuber関連銘柄で、2022年のIPOにおいて最も注目を浴びた銘柄のひとつですが、12月の株価下落が痛かったといえます。
公募割れ銘柄の、その後
初値騰落率1位と2位の銘柄が初値天井に近い状態というのは、IPO後の株価推移としては残念な状態といわざるを得ません。マザーズ指数の不調という背景があるものの、IPO後も着実な株価上昇を続けて投資家の資産形成に寄与する、という理想的な株価推移には程遠い状態です。
それに対して、公募割れとなった銘柄のその後は、どうなっているでしょうか。
・INTLOOP<9556>
・ジャパンワランティサポート<7386>
公募割れとなったINTLOOPとジャパンワランティサポートは、IPO後の株価推移が堅調です。
IPO株投資という観点では、初値騰落率がマイナス(公募割れ)の銘柄はどうしてもマイナスイメージになります。しかし、初値は業種の人気など企業業績とは異なる部分で決まる面もあります。初値騰落率がマイナスでも、企業の成長などを背景に長期保有で報われるケースはある、ということです。
IPO銘柄のセカンダリー投資の面白い点といえるでしょう。
IPO市場の復調はいつ?
2022年のIPOは、初値騰落率がマイナスとなる銘柄が約2割もありました。そして、初値騰落率が大きくプラスになった銘柄は、その後の株価形成に苦戦しています。この点からも、現在のIPO市場の不調が見て取れます。
一方で、初値騰落率がマイナスとなった銘柄が、IPO後の株価形成で理想的な展開を見せている例もあります。その点を考慮すれば、セカンダリー投資まで視野に入れると、IPO株投資の面白さを実感できる一年でもありました。
12月もマザーズ指数は下落しており、2022年は年間のIPOとしては厳しい1年での着地となりました。2023年のIPO市場は好調を取り戻すことができるのか。マザーズ指数の行方とともに注目されます。