株価の上昇はどこまで続く? 大型株主導の背後にある海外投資家の動きを知る
2024年1月の日経平均株価は、月間で2,822円(約8.4%)上昇しました。さらに2月に入り、史上最高値(終値ベース)である38,915円をうかがう伸びを見せています。
この上昇相場を主導しているのが、日米のハイテク株を中心とした大型株です。なぜ、いま大型株が買われているのか。また、出遅れている中小型株は今後どうなっていくのか。
日本株の買いの主体は海外投資家
日経平均株価は2024年に入ってから急激な上昇を見せています。2月16日に一時、バブル期以来34年ぶりに38,800円台をつけると、終値でも38,487円でバブル後高値を更新しました。22日には、38,915円を超える場面もありました(チャートは前場終了時点のもの/取引時間中の最高値は38,957円)。
この上昇を牽引しているのが海外投資家です。海外投資家は2024年になって日本株を大幅に買い越しています。特に、1月第3週には現物株を3841億円買い越し、1月の買い越し累計は約1兆5000億円となりました。
海外投資家が日本株を購入している理由は、日本の回復を評価し、日本株のパフォーマンスが良くなると期待しているからです。
しかし、それだけではありません。これまでグローバル株式ファンドで日本株の組み入れ比率を低くしてきた海外投資家は、ベンチマークとしているグローバル株式指数のパフォーマンスを下回ることへの恐怖から、日本株の組み入れを増やさざるを得なくなっているのです。
海外投資家は動かす資金が大きいため、TOPIXコア30など大型株を買う傾向があります。これが、大型株が買われている主な理由です。
個人投資家と中小型株
一方、中小型株は出遅れています。東証グロース市場250指数は、1月の上昇率が0.8%にとどまりました。
中小型株を買うのは、主に個人投資家です。海外投資家が大きく買い越した1月第3週にも、個人投資家は現物株を1854億円を売り越していました。ただ、その翌週からは個人投資家も買い越しに転じており、その動きが中小型株の押し上げにつながるか注目されます。
大型株を見るならTOPIXコア30
大型株の動向をチェックするには、TOPIXコア30も見ることも大切です。TOPIXコア30とは、東証プライム市場全銘柄の中で、時価総額や流動性が特に高い30銘柄で構成された株価指数です。
TOPIXコア30の構成銘柄は大量の取引が可能で、売買による価格変動リスクが小さいので、大口で取引する海外投資家にとって魅力的です。また、トヨタ自動車<7203>やソニーグループ<6758>など日本を代表する企業が採用されているので、海外投資家にとって買い安心感をもたらします。
また、NEXT FUNDS TOPIX Core 30連動型上場投信<1311>など、TOPIXコア30に連動するETF(上場投資信託)もあり、個人投資家でも少額からTOPIXコア30を購入できます。参考までに、このETFの1月末時点における組み入れ上位銘柄は、以下の通りです。
順 | コード | 銘柄 | 比率 |
---|---|---|---|
1 | 7203 | トヨタ自動車 | 11.20% |
2 | 6758 | ソニーグループ | 7.06% |
3 | 8306 | 三菱UFJフィナンシャル・グループ | 5.69% |
4 | 6861 | キーエンス | 4.47% |
5 | 8035 | 東京エレクトロン | 4.04% |
海外投資家は中国株を売っている
日本株の上昇に対して、中国株は下落しています。上海と深センに上場する主要銘柄で構成されるCSI300指数は年初から約5%下落。アリババやテンセントといった中国ハイテク大手を構成銘柄にする香港のハンセン指数は、年初来で約8%下落しています(いずれも1月31日時点)。
この要因も海外投資家です。海外投資家は日本株を買う一方、中国株を売り越しています。2023年は新型コロナウイルス禍からの経済再開に期待して中国株を買っていた海外投資家ですが、2023年後半からは売りに転じているのです。
その一方で、ウォーレン・バフェット氏が日本の商社株を買っていることや、東京証券取引所(東証)が企業統治(ガバナンス)改善を促したことで企業の配当や自社株買いが増えたこと、アクティビスト(物言う株主)に耳を傾ける企業が増えたことなどから、日本株を買う海外投資家が増えています。
大型株主導は暴落リスク?
こうした中、2024年2月6日、トヨタ自動車<7203>の時価総額が、日本企業として初めて50兆円を超えました。バブル期の1987年5月11日にNTTがつけた時価総額(48兆6720億円)を上回って、日本企業の歴代最大を記録です。22日時点では57兆円を超えました。
ただし、アメリカでは時価総額1位のマイクロソフトと2位のアップルの時価総額は3兆ドル(約450兆円)を超えており(1月末時点)、2社合わせると東証プライムの約895兆円(1月末時点)とほぼ同等の規模になります。
アメリカでも「マグニフィセント・セブン」を中心とした大型株に極端に資金が集中し、ネットバブル時と同じような暴落のリスクを高めている、との見方もあります。
「マグニフィセント・セブン」とは、グーグルやアマゾン・ドットコム、メタ・プラットフォームズ(旧フェイスブック)、アップル、マイクロソフト、エヌビディア、テスラという超巨大テクノロジー企業7社を指します。市場規模が非常に大きいため、投資家からの資金が集中しやすい傾向があります。
《参考》アメリカを牽引する「マグニフィセント・セブン」 日本株に与える影響は?
また、これらの企業の株価は、その業績や将来の成長見込みなどに基づくものだけでなく、投資家の期待や市場のセンチメントによっても大きく影響を受けます。そのため、投資家の期待が過度に高まったり、市場のセンチメントが急激に変化したりすると、株価が大きく変動する可能性があるのです。
さらに、これらの企業の株価が大きく上昇すると、その結果としてS&P500などの株価指数も上昇します。
しかし、その上昇が一部の大型株によるものであるため、その他の多くの株式が市場全体の動きを反映していない、という状況が生じる可能性があります。これは、市場全体の健全な機能を阻害し、バブルの形成やその後の暴落のリスクを高めます。
こうした理由から、マグニフィセント・セブンを中心とした大型株に資金が極端に集中することは、ネットバブル時と同じような暴落のリスクを高めるとの見方があるのです。
「金利のある世界」への備えを
日銀は、1月の金融政策決定会合でマイナス金利政策の継続を決定し、経済・物価情勢を見極める方針を示しました。
市場では、4月会合までマイナス金利解除を待つ観測が増えていますが、日銀内ではその方向へ大きく傾いている空気はありません。次回3月会合の選択肢も排除せず、自由度を確保する姿勢を示しているからです。
マイナス金利の解除は決め打ちできない状況が続きますが、いずれはマイナス金利だけでなくゼロ金利の解除も続く可能性があります。これにより、「金利のある世界」への備えが重要です。
金利が上昇すると、通常はその国の通貨が買われ、通貨高になる傾向があります。これは、金利が高いと投資家がその国の通貨を保有するメリットが増えるためです。したがって、日本の金利が上昇すれば、円高になる可能性があります。
これまでは円安メリットの大きい外需の大型株が買われていましたが、円高になると内需の中小型株が買われる可能性が高まるので、物色対象の変化に注意が必要となるのです。