下落局面で楽観し、反転を前に悲観する… なぜ投資家の心理は相場とズレるのか? 一流の投資家が見ている指標とは?

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《株で勝てる人と勝てない人は一体どこが違うのか? 30年以上の実績をもつファンドマネージャーが「一流の投資家」の条件を明かす【情熱の株式投資論】》
投資家心理というもの
株式市場全体の予測をしなくても株で儲けることは可能です。ただ、株式市場全体の状況を把握することでゲームを優位に進めることができる、というのも事実です。
ほとんどの人が、株価について、表立っては言わないかもしれませんが、感覚的な信念を持ちやすいものです。しかし現実には、自分の考えとは反対の動きとなり、間違いの繰り返しになることが多いようです。株が上がるとか景気が良くなるとか勝手に思い込んでは、正反対の現実に打ちのめされることのほうが、実際には多いのではないでしょうか。
様々なニュースレターの内容から投資家の心理を調べているインベスター・インテリジェンス社の資料によれば、株価が下降局面へと移り変わるときに楽観論が最も多くなり、相場が反発に転じるときに投資家心理は最も悲観的になり、多くの人がさらなる悪化を懸念します。
だからと言って、個人投資家やファンド・マネージャーたちが慢性的に愚かで鈍いというわけではありません。要はタイミングの問題で、経済が良い状況だというニュースが広く信じられるようになり、多数の投資家が先行きに自信を持つことができるようになったときに、経済はまさに悪化し始める……ということです。
そうでなければ、企業のトップやファンド・マネージャー(プロの投資家)も含めた大多数の人が、最高の買い場だった瞬間に株式投資を怖がり、投資するには最悪のときに最も強気になることの説明が付きません。
心理の変化と相場とのズレ
投資家の心理は、実際の状況が変わらなくとも、思わぬ変化をするものです。
たとえば、暴落が起きる数週間前に、ある建設現場を訪れて「すごい! 景気は最高潮だね」と言っていた人が、暴落後に同じ現場を訪れると、「これは大変だ。マンションは売れないだろうし、オフィスの借り手も見つからないな」と様変わりしてしまいます。
人間の感情は、得てして相場のタイミングとずれがちです。特に意志の弱い投資家は、迷い、納得、あきらめという3つの感情の間を行き来して、気持ちが揺れます。相場の下落や景気の落ち込みを心配するあまり、良い銘柄をバーゲン価格で買えるチャンスを逃し、高値で買い込み、その後のちょっとした値上がりで満足してしまいます。
本来、こういうときこそファンダメンタルズをチェックして、いつ売るかを考え始めるときなのですが、むしろ有頂天になってしまうのです。結局、株は下がり、買値を下回ったときに降参して売ってしまいます。また、長期投資家を自負している人でも、株価が上がると一転して短期投資家になり、少しの利益で売り離してしまいます。
投資家心理を知る「Fear & Greed Index」
投資家心理を表す指標はいくつかありますが、あえて一つ選ぶとすると、「Fear & Greed Index」をお勧めします。アメリカの大手メディア・CNNが提供している指標で、Fearは「恐怖」、Greedは「貪欲」を意味します。
この「Fear & Greed Index」の数値が低いとき、市場は恐怖感に包まれており、株価は下落する可能性があります。この場合、投資家は逆張りで株を買うことになります。一方、数値が高いときは、市場は欲深くなっており、株価は上昇する可能性があります。この場合、投資家は株を売ることになります。

投資家心理を測る7つの指標
「Fear & Greed Index」は、7つの指標を使用して算出されています。
- 市場の勢い
- 株価の強さ
- 価の幅
- プット・オプションとコール・オプション
- 市場のボラティリティ
- 安全な避難先の需要
- ジャンク債の需要
●市場の勢い(market momentum)
株式市場の水準を過去数カ月間の水準と比較して見ることは有益で、株式市場(S&P500)が過去125日の取引の移動平均を上回っていれば勢いがあることになり、市場がこの平均を下回っている場合には、投資家が弱気になっていることになります。
●株価の強さ(stock price strength)
少数の大型株が市場のリターンを歪めることがあり、好調な銘柄と苦戦している銘柄の数を知ることも重要になります。これは、ニューヨーク証券取引所の52週高値銘柄数と52週安値銘柄数を比較したものです。安値より高値のほうが多い場合、それは強気のサインであり、「強欲」のシグナルになります。
●株価の幅(stock price breadth)
この指標は、ニューヨーク証券取引所に上場している銘柄の中で株価が上昇している銘柄と下落している銘柄の出来高を比較しています。下落している銘柄の出来高が大きくなれば、それは弱気のサインになります。出来高の減少を「恐怖」のシグナルとしています。
●プット・オプションとコール・オプション(put and call options)
プットは売るオプションであり、コールは買うオプションですが、プットとコールの比率が上昇しているときは、通常、投資家が神経質になっている証拠です。この比率が1を超えると弱気とみなされます。
●市場のボラティリティ(market volatility)
市場心理を測る最も有名な指標は、CBOEボラティリティ・インデックス(VIX)です。VIXは、今後30日間のS&P500指数オプションの予想価格変動またはボラティリティを測定します。強気相場では低く、弱気相場では高くなる傾向があります。また、市場全体が上昇する日にはしばしば低下し、株価が急落する日には急上昇します。この市場のボラティリティの上昇を「恐怖」のシグナルとします。
●安全な避難先の需要(safe haven demand)
株式は債券よりもリスクが高いですが、長期的に投資した場合の見返りは大きくなります。それでも、債券は短期的には株式を上回ることがあります。この指標は、過去20日の取引の国債と株式のリターンの差を示しています。投資家が恐怖を感じているときは債券の需要が増加しますので、この動きを「恐怖」のシグナルとします。
●ジャンク債の需要(junk bond demand)
ジャンク債は他の債券に比べてデフォルトのリスクが高く、ジャンク債とより安全な国債の利回りの差(スプレッド)が小さいほど、投資家がよりリスクを取っている証拠となります。スプレッドが広がれば、より慎重になっていることになります。ジャンク債の需要が「貪欲」のシグナルとなります。










