NISAの目的とは? そこには日本政府が考える重要な鍵がある。
※本記事は旧制度をもとに作成されています。ご注意ください※
貯蓄から投資へ〜NISAの目的を考える〜
日本では2003年1月から2013年12月まで株式投資の利益に対する税金の減税を行ってきた。具体的には利益に対する20%が税金の対象であったが、10%への減税が継続して行われてきた。しかしながら、2014年1月より本減税制度がNISAへと切り替わった格好となる。
日本政府の目的は日本国民の貯蓄額が他国と比べて突出して多いため、この資産を投資に向かわせることによる経済の活性化やアベノミクスによる株高の恩恵を多くの国民に享受させるべく行った政策である。「貯蓄から投資へ」という明確なコンセプトを掲げている。
日米の家計における資産内容を比較してみよう
日米欧を比較した日本銀行の資料を見てみよう(出典:2015年12月22日資料:https://www.boj.or.jp/statistics/sj/sjhiq.pdf)。
日本は「現金・預金」が52.7% 「株式・出資金」が9.7%。それに対して米国は「現金・預金」が13.7% 「株式・出資金」が33.8%。
この数値を見て、米国は素晴らしいと言いたいわけではない。ただ、国民がこれだけ(自分の資産のうち33%以上、投資信託も合わせれば45%以上も)投資資産に充てられているのであれば政府としても無視できない規模なわけだ。
つまり、米国民が保有している米国株の株価を上昇させることで国民の懐があたたかくなり、財布のひもが緩んで消費に向かう。米国のGDPの約70%は個人消費である。
結果、米国経済が活性化し、景気が良くなるのだ。その業績を受けて更に株価が上昇する。この好循環があるからこそ、米国株はこの30年上昇し続けてきているのだ。
そしてその実績があるからこそ、米国民は自分自身の資産の内、約45%を投資に向けているという見方もできる。それが今まで成功してきたからだ。
日本はどうなるのか?
まずは2014年からの株価推移を見てみよう。
2014年1月の始値は「16,147.54」。2015年12月の終値は「19033.71」。つまり、上昇していることにはなる。
更に日本政府は我々の年金までも活用し、株価の上昇を図っている。GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用構成比率の変更がまさにそのものである。GPIFとは日本の公的年金のうち、厚生年金と国民年金の積立金を管理する法人であり、約130兆円を運用する世界第二位の機関投資家である。
【構成割合の目標値】
- 国内債券35%、国内株式25%、外国債券15%、外国株式25%
(出典;http://www.gpif.go.jp/gpif/portfolio.html)
つまり、日本政府はこのNISA制度を日本国民全てに活用してもらうべく、株式市場の下支えひいては経済の活性化を達成するべくまさになりふり構わず対応しているのが現状である。我々の将来の年金までもが投資原資となっており、まさに全てを投資して日本株の上昇を目指しているのである。
NISA制度から見る日本政府の目的
一つの考え方としてだが、日本のNISAは経済対策では賄いきれない「雇用の創出」や「賃金の上昇」を株式市場の上昇によってカバーしてもらうために多くの国民に「貯蓄から投資へ」のシフトを促しているのではないかと思う。
皆さんはNISAについてどうお考えだろうか? 日本政府の目的を理解することによってその使い方も見えてくるかもしれない。