移動平均線は「お友達」? プロトレーダーが思わず漏らした驚きの使い方とは
株の世界にはさまざまな「指標」があります。なかでも多くの人が銘柄選びや取引タイミングの見極めに活用しているのが「移動平均線」でしょう。投資手法として重宝している人も多いと思いますが、プロのトレーダーはどんな使い方をしているのか聞いてみました。
移動平均線のおさらい
まず、移動平均線について確認しておきましょう。ヤフーファイナンスなどで株価チャートを見たときに、ローソク足と一緒に表示されている2本(もしくは3本)の折れ線グラフ、それが移動平均線です。
過去の終値の平均値をグラフ化
始値・高値・安値・終値の動きを具体的に示したローソク足に対して、移動平均線は、過去の一定期間の終値の平均値をつないでグラフ化したものです。算出する期間には短期・中期・長期があり、ローソク足の種類とあわせて使われることが一般的です。
- 日足チャートの場合:5日/25日/75日(*いずれも営業日)
- 週足チャートの場合:13週/26週/52週
- 月足チャートの場合:12か月/24か月/60か月
上の任天堂のチャート(ヤフーファイナンスより転載)は週足チャートなので、13週(赤)と26週(緑)の移動平均線が表示されています。
トレンドを読む3つのポイント
株価の平均値の推移を表しているので、いわゆる「トレンド」を掴むために有益な指標が移動平均線です。見るときのポイントは以下の3つ。
- 傾き
- 位置
- 並び順
まず、任天堂のように右肩上がりであれば「上昇トレンド」だと判断できます。右肩下がりなら「下降トレンド」、真っ直ぐのときは「凪(なぎ)」です。
そのうえで、ローソク足が移動平均線よりも上にあるときは「強気トレンド」と見ることができます。過去の一定期間(たとえば5日)の平均値よりも株価のほうが高いということは、その期間(過去5日)に買った投資家は儲かっている状態だからです。
反対に、ローソク足が移動平均線よりも下であれば、その期間に買った投資家は損しているということなので、弱気になって売りが出始める……つまり「下落のサイン」だと言われます。
さらに、その上昇が長期的なトレンドになっていれば、移動平均線の位置関係は、上から順に「短期・中期・長期」と並びます。この順番が異なっている場合は、まだ長期トレンドに移行中だということになります。
プロはこうして活用している?
移動平均線には多くの活用法があります。売り買いのサインと言われる「ゴールデンクロス」「デッドクロス」や、その銘柄が「売られすぎか、買われすぎか」を知るために役立つ「乖離(かいり)率」などは、実際に使ってみたことがある人も多いでしょう。
そんな移動平均線ですが、実際のところ、プロのトレーダーはどのように使いこなしているのでしょうか。そこで、継続的に利益を出し続けている「勝ち組トレーダー」のお三方に聞いてみました。
——移動平均線って、みなさんにとってどんな存在ですか?
Aさん:あると、チャートっぽいなと。
Bさん:トレードしているなって気分になるよね。
Cさん:ないと、ちょっと味気ない。
Bさん:そうだね。寂しいから表示しているって感じかな。
Aさん:だから、移動平均線は「お友達」。そばにいると寂しくない(笑)
あ、あれ? だれも使っていないという事実が判明してしまいました。
銘柄を絞るフィルターではあるが……
Cさん:「もちろん、移動平均線を見て売買するトレーダーもいますよ」
移動平均線は、銘柄を抽出するためのひとつの指針です。4,000近くもある上場銘柄の中から投資先を選ぶとき、何も指針がなければ、途方もない数の銘柄をチェックしなければいけません。
それを、たとえば「株価が25日移動平均線より上にある銘柄」などに絞れば、かなり時間と手間の節約になります。
言い換えれば、役割はそれだけ。だから、移動平均線をフィルターとして使う人にとっては大事な意味がありますが、使わない人にはまったく意味がないのです。このお三方のなかには、日経平均株価すら見ないという猛者もいました。
情報との正しい付き合い方
売買ルールをしっかりと構築できれば、見なければいけないものがわかります。それと同時に、見なくてもいいものも自然と決まります。移動平均線であれ日経平均株価であれ、その情報が必要か不要かは、どんなルールで投資・トレードをするか次第なのです。
移動平均線を使っているプロトレーダーには、「ゴールデンクロスで買ってデッドクロスで売る」というよく知られた方法ではなく、上記3つのポイントを組み合わせた条件を設定することで「方向性の確度」を上げている人もいるそうです。そうやって自分なりのルールを構築しているのです。
大事なのは「自分に必要かどうか」
移動平均線は「ないと寂しいけど、自分の売買ルールには関係ない(だから、見てはいない)」というプロたちの言葉に、改めてハッとさせられました。
「勝ちたい」「損をしたくない」と思うほど、いろいろな情報を集めて〝総合的〟に判断したいという気持ちが生まれてきますが、そうした情報が自分自身に役立つかどうかは別の話。情報をたくさん集めすぎて、何を根拠に判断すればいいかわからなくなってしまっては本末転倒です。
そうなるくらいなら、移動平均線も日経平均も、むしろ見ないほうがいいのかもしれません(もちろん、これらが本当に必要ないのであれば、というのが大前提ですが)。
その勇気をもてないのであれば(たぶん私も無理ですが)、プロトレーダーたちのように、自分に必要のない情報は「寂しいから表示させておくだけ」「いつもそばにいるお友達」と割り切って、適度な距離感でお付き合いできるようになりたいものです。