AI関連株は本当に買い? 4つの注目銘柄から可能性と注意点を探る

岡田禎子
2018年8月13日 8時00分

今、急速に日常生活に普及し始めている「AI人工知能)」。株式市場でも、AI関連株は有力な投資テーマとして注目度が高まっています。超成長市場だからこそ、銘柄選びは慎重に行いたいものです。話題の銘柄と、テーマ株投資の注意点について解説します。

「AI(人工知能)」とは?

「AIの彼女どう?」「素晴らしいよ!」

これは、AI(人工知能)と人間の恋を描いた2014年のアメリカ映画「her/世界でひとつの彼女」に登場する会話です。近未来のロサンゼルスを舞台に、人工知能「サマンサ」の知的で温かく魅力的な声にひかれ、次第に恋に落ちるバツイチ中年男の悲哀を描いています。

2018年の現在、「アレクサ、ハッピーバースデーを歌って」とスピーカーに語りかけるCMのように、SF映画の中のものでしかなかったAIが様々なサービス・商品に組み込まれ、私たちの生活に入り始めています。

全世界のAIの市場規模は、2017年の149億ドルから2025年には3,109億ドルに拡大するという調査報告もあります。

実は「AI」には明確な定義がない

AIは「Artificial Intelligence」の略で、日本語では「人工知能」といわれますが、実はまだ明確な定義はありません。人工知能学会のホームページでは「知的な機械、特に、コンピュータプログラムを作る科学と技術」と説明されています。

AIという言葉がこの世界に誕生したのは1956年。その後、2度のブームと冬の時代を経て、現在は第3次AIブームとして脚光を浴びています。そのブレイクスルーとなったのは「ディープランニング」といわれる技術。AI自らが学習して考える機械学習が可能になり、可能性が劇的に広がりました。

2016年にはグーグルが開発した人工知能「アルファ碁」が世界トップクラスのプロ棋士を相手に勝利を収め、「AIが人間の知性を超えた」として世界に衝撃を与えました。

AIが「超成長市場」な理由

最近よく聞かれるようになった言葉に「IoT」があります。「Internet of Things(モノのインターネット)」の略で、あらゆる「モノ」がインターネットにつながる仕組みをいいます。

金融の世界では「フィンテックFintech)」が拡大を続けています(「Finance(金融)+Technology(技術)」の造語)。

IoTやフィンテックのほかロボット関連やバイオ創薬といった様々な成長産業に、AIは密接に関わっています。自動運転車、ホテルや金融機関のロボットの受付、レジレス店舗……これらの実用化や技術向上にはAIの進化と応用が不可欠であり、一層のニーズの高まりが予想されています。

AIは今後、ほぼすべての産業に何らかの影響を及ぼすと考えられます。ということは、「AI関連市場」は限りなく裾野が広く、見方によっては、ほとんどの銘柄が「AI関連銘柄」に当てはまると言ってもいいのかもしれません。

話題のAI関連銘柄をチェック

AIという巨大市場で覇権を握るべく、世界中の企業がしのぎを削り合い、取り組みを加速させています。

マイクロソフトやアップル、グーグルなど世界的ガリバー企業は、自社での開発に加えて、積極的なM&Aを展開しています。トヨタ自動車<7203>も、AI技術の研究・開発の新会社をシリコンバレーに設立し、ベンチャー企業への出資・業務提携も積極的に行なっています。

こうした世界的な投資拡大の流れを受けて、AI関連銘柄は断続的に「買い」に矛先が向いています。特に注目を集めている4つの銘柄について、最近の株価をチェックしてみましょう。

・ソフトバンクグループ<9984>

常にその動向が注目を集めるソフトバンクグループは、IoT関連の中心企業であるイギリスの半導体設計大手ARM社を買収し、サウジアラビアの政府系ファンドなどとともに運用する10兆円規模の「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」でも、AIや自動車運転、IoT関連の先端企業に積極的に投資しています。

また、子会社のディープコア(非上場)は、AI関連のスタートアップに特化した投資ファンドを2018年5月に発足させています。

・ALBERT<3906>

ALBERTアルベルト)はビックデータをAI活用した販促支援ツールなどを提供している会社で、2018年5月、トヨタ自動車と資本・業務提携することが発表されました。これがポジティブサプライズとなり、IPO後は低迷していた株価が急騰しました。

この急騰によってAI関連銘柄の人気が再燃したため、「ALBERT効果」という言葉が生まれたほど、大きな注目を集めています。

・PKSHA Technology<3993>

PKSHA Technologyパークシャテクノロジー)は東京大学発のAIベンチャー企業。機械学習技術を用いたアルゴリズムの開発やライセンスを提供しています。

RPA(ロボットによる業務自動化)技術への社会的なニーズの高まりで注目されていることに加えて、トヨタの出資を受けていることで、先ほどのALBERT<3906>の株価急騰を受けて株価が見直されています。

・HEROZ<4382>

様々なAI開発を手がけるHEROZヒーローズ)は、2018年4月20日に新規上場を果たしました。

スマートフォン向けの将棋ゲームアプリ「将棋ウォーズ」でも知られ、大きな注目を集めたことで、4,500円の公募価格に対して、ついた初値はなんと4万9,000円。直後には4万9,650円まで上がり、公募価格の11倍以上という〝爆上げ〟ぶりでした。

しかし、「AI」というテーマだけで暴騰した側面も強く、その後は値下がりを続け、2か月後の6月29日には1万6,120円と3分の1以下にまで暴落してしまいました。

テーマ株投資の注意点

AI関連銘柄への投資は「テーマ株投資」と呼ばれる投資手法です。

テーマ株は、将来的に大きな利益につながる可能性はありますが、すでに割高になっている場合も多く、旬を過ぎると短期的に大きく値下がりする危険性もあります。特にIPO新規公開株)では、テーマだけで初値が何倍にも上がる傾向にありますので、注意が必要です

成長企業の背後には赤字企業あり

冒頭に紹介した映画では、AIのサマンサが「私は前より進化のスピードが上がっていて落ち着かないわ」と嘆きます。2045年にはAIの能力が人類の能力を超える……という説もあるらしく、AIが発展するほど、私たちが思い描くSF的な未来へより近づくことになるでしょう。

AI関連市場は今後も競争が激しい分野であることには変わりなく、大きく成長して株価を伸ばしていく企業もあれば、当然、赤字企業も多くあります。

AIにせよ他のテーマにせよ、言葉だけで飛びつかず、銘柄そのものをしっかりと見極めて、冷静な投資判断を下すことが求められます。

[執筆者]岡田禎子
岡田禎子
[おかだ・さちこ]証券会社、資産運用会社を経て、ファイナンシャル・プランナーとして独立。資産運用の観点から「投資は面白い」をモットーに、投資の素晴らしさ、楽しさを一人でも多くの方に伝えていけるよう活動中。個人投資家としては20年以上の経験があり、特に個別株投資については特別な思い入れがある。さまざまなメディアに執筆するほか、セミナー講師も務める。テレビ東京系列ドラマ「インベスターZ」の脚本協力も務める。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、ファイナンシャル・プランナー(CFP)
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