4月の株価はどうなる? 新年度入りからの選挙&決算発表で相場にも追い風が吹く?

岡田禎子
2023年4月4日 8時00分

hadeev / Adobe Stock

《相場の世界には、その月ごとに恒例のイベントやアノマリー(経験則)が存在します。年間のスケジュールに沿った資金の流れもあり、各月それぞれに特徴的な動きがあるのです。それらを知っているかどうかは、投資の成果も大きく影響します。新年度のスタートとなる4月相場の特徴とは?》

4月相場は「特別な月」

4月は新年度のスタート。国内の機関投資家による新規マネーや「4月の外国人買い」によって、日本株にとって一年を通じて最も追い風が吹く、まさに桜の季節らしい賑わいのある月といえます。

そんな4月相場では中小型株が注目されやすく、個人投資家主導で新興株が物色されやすい傾向があります。

中旬ごろからは、6月の株主総会に向けたアクティビストの株主提案ラッシュ、5月の大型連休に向けて期待される関連銘柄の物色、さらに、MSCI指数の入れ替え予想などで賑わいを見せます。そして、下旬からは3月期決算企業の本決算発表シーズンがスタート。市場の関心は決算発表銘柄に向かいます。

また、2023年は4年ぶりに統一地方選挙が行われるため、その関連銘柄にも注目が集まります。27〜28日には植田和男新総裁のもとで初の日銀金融政策決定会合が開かれます。金融緩和政策は当面維持が見込まれるもののその動きは株価への影響が大きく注視したいところです。

「4月の外国人買い」というアノマリー

4月相場の需給が良い理由のひとつに「4月の外国人買い」があります。

海外投資家の売買動向には季節性があり、例年4月は突出した買いが見られます。これは、国内の機関投資家が決算対策で3月末にかけて株を売却し、その反動で4月は買いに転じやすい、という動きを見越しての買いともいわれています。

東京証券取引所が発表している「投資部門別売買代金」によると、2012年以降の4月は、海外投資家はほぼ全て買い越しです。さらに、その買い越し額も4月は一年を通じて最大です(2020年の売り越しは2019年に発生したコロナショックの影響が大きいと考えられます)。

「4月の外国人買い」のアノマリーの有効性は高い、と考えてよさそうです。

4月の日経平均株価はどう動く?

そんな4月相場で、日経平均株価は実際にどのように動いたのでしょうか。過去3年の値動きをチャートで確認してみましょう。

2020年は、新型コロナウイルスの影響で止まっていたアメリカの経済活動の一部再開が決まるなど、事態の悪化に歯止めがかかったとの見方が広がり、上昇相場となりました。

2021年は、アメリカの金融引き締め観測から金利が上昇。アメリカ株は大幅安となり、日本株も調整を余儀なくされました。

2022年は、FRBの金融引き締め政策の加速や中国の新型コロナウイルス感染拡大による景気減速懸念によって、日米ともに株価は大きく減速となりました。

それぞれのチャートを見ると、4月初旬は上昇傾向が強いことが見て取れます。一般的には、月の後半に向かってさらに上昇する傾向がありますが、相場の先行きの不透明感が漂う場合、早めの利益確定も起こりやすい月だといえそうです。

4月相場を動かす材料と投資ポイント

ここからは、4月の恒例イベントや株価材料について見てみます。それぞれの投資ポイントについても、あわせて解説しますので、ぜひチェックしてください。

中小型グロース株の季節、到来!

4月はグロース市場の中小型株に関心が向かいやすい時期です。

無配当銘柄の多い中小型株は、2月・3月には物色の蚊帳の外に置かれてしまいますが、3月の配当落ちを過ぎると「出遅れ感」と「次期業績への期待感」から見直し買いが入る、というケースが過去に何度か見られます。特に、時価総額上位の主力株や直近IPOなどに資金が流れやすい傾向があります。

直近では、2022年の春相場で、FRBの金融引き締め加速が警戒される中、外部環境の影響が比較的小さいグロース中小型株に物色の矛先が向かいました。

【事例】ウェルスナビ<7342>

個人投資家向けロボットアドバイザーの最大手。2021年5月の高値から調整を余儀なくされていましたが、ロボアドバイザーの預かり資産が6500億円突破と報道されたことも材料視され、2022年3月の最安値から4月6日には約2倍の2859円なるなど大きくリバウンドとなりました。

統一地方選挙の関連銘柄とは?

2023年は4年に一度の統一地方選挙の年。前半の9日には道府県と政令市、後半の23日には政令市以外の市町村に加えて衆参の補欠選挙も実施されます。

株式市場では昔から「選挙」も投資テーマのひとつとして意識され、「選挙といえばあの銘柄!」というように、特定の関連銘柄に短期的な資金の流入が見られます。

具体的には、選挙関連機材のムサシ<7521>や、選挙に使うハガキ印刷や封筒を手がけるイムラ<3955>、テレマーケティングのりらいあコミュニケーションズ<4708>、さらに、開票作業や出口調査を行う人材派遣のパソナグループ<2168>が挙げられます。

株主提案提出ラッシュに注目

4月はアクティビストが大忙しです。3月期決算企業の株主総会は6月に開催されますが、「株主提案」がある場合は8週間前までに通知する必要があるため、5月の大型連休を挟むと4月末がリミットとなるからです。4月中旬頃から、通知の実行や開示が相次ぎます。

経営に対する改善要求に加え、余剰金の配当や取締役の選任まで、多くの株主の関心を集める提案に株式市場は敏感に反応します。

2022年には、岩手銀行<8345>がイギリスの投資ファンドであるシルチェスターから、増配などの株主還元を求める株主提案を受けたと開示し、株価は5%以上も上昇しました。その後、同ファンドは滋賀銀行<8366>や京都銀行<8369>など有力な地銀にも次々と提案を行ったことも話題になりました。

今年も決算発表シーズンがやってくる

4月は、2月期決算企業と3月期決算企業の本決算が相次ぎます。

主力株の先発隊として注目されるのが、安川電機<6506>。サーボモーターとインバータで世界トップの同社の決算発表は、日本の製造業の先行指標といわれています。本決算が2月であるため、他の3月期決算企業群よりもひと月早く動向がわかるからです。今年は4月7日が決算発表日です。

下旬には、同じく日本株の今後を占う意味で注目度の高い日本電産<6594>やディスコ<6146>などの決算発表があります。その内容次第では、相場全体の雰囲気がガラリと変わることも多く、注意が必要です。

これら第一陣を皮切りに、決算発表が本格化します。決算発表では企業の業績予想に注目が集まりますが、日本企業は基本的に保守的な予想を出す傾向があります。さらに、企業によって強気・弱気など個性があるため、過去の傾向を知った上で、個々の企業の見解をしっかりと見極めたいところです。

株主還元策も株価に影響する

決算発表では、自社株買いや増配の発表といった株主還元の姿勢も、株価に大きな影響を与えます。特に近年、自社株買いが増加しており、今年は東証のPBR要求などでさらに増えそうです。

一般的に、自社株買いを発表した企業の株価は上昇する傾向にあります。需給の改善やROE向上、EPSの増加などが期待できるからです。足元では、シチズン時計<7762>やアドウェイズ<2489>、岡三証券グループ<8609>がストップ高となるなど、自社株買いの発表で株価は大きく反応しています。

海の向こうの決算にも要注意

4月下旬からは、アメリカのハイテク大手GAFAMの第1四半期の決算発表があります。これらの動きも、日米の株価や投資家心理に大きな影響を与えることになるでしょう。

今年の4月相場は、花見の祝い酒となるか、それとも「サクラチル」となるのか。日米の決算発表がその分かれ道となり、そこから5月のセルインメイへとつながっていきます。

金融不安は落ち着くのか、日銀の金融政策はどうなるのかなど、トレンドが見えずに不安定な相場展開が続きますが、ここでご紹介したような4月相場の特徴を知っていれば、今後の予測や戦略を立てやすく、「まさか」の事態にも心に余裕を持って対応することができるでしょう。

[執筆者]岡田禎子
岡田禎子
[おかだ・さちこ]証券会社、資産運用会社を経て、ファイナンシャル・プランナーとして独立。資産運用の観点から「投資は面白い」をモットーに、投資の素晴らしさ、楽しさを一人でも多くの方に伝えていけるよう活動中。個人投資家としては20年以上の経験があり、特に個別株投資については特別な思い入れがある。さまざまなメディアに執筆するほか、セミナー講師も務める。テレビ東京系列ドラマ「インベスターZ」の脚本協力も務める。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、ファイナンシャル・プランナー(CFP)
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