12月の株価はどうなる? 年末高から辰巳天井への期待とともに注意したいこと

岡田禎子
2023年12月1日 17時00分

《マーケットにはその月ごとに恒例のイベントやアノマリー(経験則)が存在します。それらを知っておけば、株価上昇の波も逃さずに乗ることができます。大納会に向けて上昇しやすい傾向がある、といわれる12月相場の特徴とは?》

12月相場は年末高を目指す

12月は年末に向けて上昇しやすい月です。

初旬〜中旬にかけては、年末商戦関連銘柄や配当金再投資効果などで需給はあるものの、アメリカの巨額の節税売りに押され下落しやすい傾向があります。ただし、8日のメジャーSQの前後で相場がガラリと変わる可能性があるので注意が必要です。

12〜13日に行われる米FOMCでは、市場の予想通りに利上げ打ち止めとなるかに投資家の注目が集まります。18〜19日には日銀金融政策決定会合が開かれ、植田総裁の発言に注目です。また、JT<2914>など12月の高配当銘柄に見直し買いが入りやすい時期でもあります。

中旬〜下旬にかけては外国人投資家や日本の機関投資家がクリスマス休暇に入るため、極端な薄商いの中、相場の主役は個人投資家へと変わります。そうして、師走恒例のIPOラッシュに突入。年の終わりの12月最終週は、新年への期待感から株価は上昇しやすくなります。

騰落率は強いけど、景色の変化に要注意

12月の月間騰落率は、直近10年間では6勝4敗、20年間で見ると15勝5敗となっており、11月に続いて勝ちやすい月です。

ここで注意したいのは、月の前半と後半で景色が全く異なるということです。前半は株価が下落しやすく、後半は上昇しやすい傾向があります。

その理由は、前半は節税対策の売りが出やすく、株価が下落しやすいことにあります。節税対策の売り(節税売り)とは、含み損が出ている株式を売って、すでに実現している利益と相殺することで、売却益にかかる税金を節約しようという動きのことです。

アメリカでは11〜12月にかけて積極的に節税売りが行われ、安くなった株式をさらに売り叩く動きもよく見られます。アメリカと仕組みは違うものの、日本でも、年末相場では同年内に発生した利益と損益通算して税金を減らす動きが活発化します。

こうした日米の節税売りの動きが、師走相場の株価の大きな下押し圧力としてのしかかってくるのです。

さらに、外国人投資家や日本の機関投資家のクリスマス休暇を控えて、大型株の上値が重くなりがちという事情も加わってきます。

後半は個人主導で年末高へ

ところが、メジャーSQ(12月8日)を通過した後の中旬以降は、相場の景色がガラリと変わります。

《参考》「メジャーSQ」で株価が上昇? 現物株への影響も理解する

機関投資家がクリスマス休暇に入って極端な薄商いとなるために、市場は個人投資家主導の相場となります。そうした中で、大納会(年内最終営業日)に向けて株高の動きとなりやすい傾向があるのです。

年末までのラスト2週間の日別騰落率(1949年〜)はほぼ5割以上と高く、年末高の傾向が明らかに見て取れます。この12月特有の動きを利用して、安くなったところは仕込むなどの対応をしたいものです。

12月の日経平均株価はどう動く?

では、実際の日経平均株価はどのように動いたのか、過去3年の値動きをチャートで確認してみましょう。

・2020年12月の日経平均株価

欧米などで新型コロナのワクチン接種が始まり、世界経済の正常化期待が広がったことや、アメリカで追加経済対策が成立したことなどで、ダウ平均株価は史上最高値を更新。日経平均株価も、1990年以来となる27,000円台まで回復しました。

・2021年12月の日経平均株価

米FOMCでの量的緩和縮小の決定や2022年の利上げ見通しが3回となったものの、世界的に新型コロナウイルスの変異型・オミクロン株拡大の警戒感が後退したことや、半導体株の復調もあって、アメリカ市場が上昇し、日本株もそれに続くように上昇しました。

・2022年12月の日経平均株価

米FRBの金融引き締めが長期化するとの見方が広がったことや、景気後退による業績悪化懸念の台頭を嫌気して、アメリカ株が下落。加えて、無風に終わると思われていた日銀金融政策会合(19〜20日)で、まさかの長短金利操作(イールドカーブコントロール)の修正が決定されます。

この「YCCショック」で日経平均株価は一時800円安となるなど、日本株も大きく下落となりました。

過去3年のチャートを見てみると、2022年こそ大きく下落していますが、2020年、2021年は中旬から月末の大納会に向けて上昇基調となっており、12月相場の特徴がよく表れています。「中旬以降の株価上昇の波が来たなら乗るべし!」といったセオリーも、アノマリー的には成立すると言えそうです。

注視すべきは日米の中央銀行

ただ、昨年はまさかのYCCショック(日銀の金融政策修正)で大きく下落してしまいました。今年も、日米の中央銀行の動きには目を光らせる必要があるでしょう。

今年は12〜13日に米FOMCが開催されます。市場では利上げ終了観測が高まっているものの、FRBの高官からは慎重な発言も出ています。続いて、18〜19日には日銀の金融政策決定会合が開かれます。植田総裁の発言次第では、株式相場やドル円相場に大きな影響を与えそうです。

さまざまな可能性も想定しつつ年末相場に挑むようにしましょう。

年末恒例のIPOラッシュが到来

例年12月はIPO(新規株式公開)ラッシュに伴って、新興市場を中心に年末の株高期待が活性化しやすい傾向にあります。新規上場した銘柄では、初値以降の株価が急騰する動きも出やすいです。

ただ、IPO市場は一種のマネーゲーム的な様相を呈することも多い点には注意が必要です。「株価は株価に聞け」と言わんばかりに、需給だけが優先されて、ファンダメンタルズでは説明のできない株価形成が行われがちです。

そのときのマーケットの地合いなども大きく影響し、相場全体が軟調であればリスクマネーの動きが鈍化して初値が伸び悩むことも。

また、2023年のIPO市場は、下期に入ってから初値が公開価格を下回る「公募割れ」の銘柄が目立っています。特に10月は、上場した12社のうち5社が公開価格を割り込みました。

とはいえ、キャスター<9331>のように初値が公開価格の3.1倍となった銘柄もありますし、足元では中小型株の復調も見られます。

《参照》3倍の初値も久々に出た! しかしマザーズ指数は有終の美を飾れず、苦戦は続く【IPO通信簿】

12月に予定されているIPOは15社。成長グロース系やファンドエグジット系のIPOは、かつてほどの人気がなく伸び悩む印象です。話題性のある銘柄としては、宇宙ベンチャーのQPS研究所<5595>や、初のNPO法人からの上場となる雨風太陽<5616>などが投資家の注目を集めそうです。

地合いに注意しつつ、銘柄選びはより慎重な目で臨むようにしたいものです。

今年のクリスマス商戦で賑わう銘柄は?

12月に入ると百貨店や量販店を中心に、お歳暮商戦やボーナス商戦、クリスマスのイベントやプレゼントなどに関連したクリスマス商戦、さらには、お正月を迎える準備の歳末商戦など、次々と商戦が始まります。

テレビやマスコミなどでも大きく取り上げられ、それに伴って年末商戦関連銘柄が賑わいます。個人投資家も懐にボーナスが入り、消費意欲・投資意欲ともに大いに盛り上がるというもの。百貨店や家電量販店、食品メーカー、ゲームメーカーなど幅広い企業が対象となります。

具体的には、三越伊勢丹ホールディングス<3099>やビックカメラ<3048>、日本KFCホールディングス<9873>、モロゾフ<2217>、ハピネット<7552>、任天堂<7974>など。

ただ足元では、年末(クリスマス)商戦の行方は不透明な状況となっています。アメリカでは個人消費の低下が見られ、全米小売業協会(NRF)の予想によると、年末商戦の売上は前年比3〜4%の小幅な伸びにとどまる見込みとのことで、警戒感が高まっているのです。

一方、日本ではインバウンドの回復や賃上げによる業績拡大などで、堅調な動きとなっています。このまま年末に向かって年末商戦が盛り上がりを見せるのかどうか、見極めたいところです。

いよいよ天井がやって来る!?

来たる2024年は「辰年」。

新年を占う十二支の相場格言では、「寅は千里を走り、卯は跳ねる、そして、辰巳天井を迎える……」とされています。

《参考》干支で読む株式相場

十二支の中では最強のパフォーマンスを誇る辰年。迎える新年はどうなるのか? 大いに気になるところではありますが、その前に、まずは年末相場が「掉尾の一振」となるよう期待したいものですね。

*掉尾の一振(とうびのいっしん)……捕らえられた魚が尾を大きく振る様になぞらえて、「物事の終わりに勢いを増す」ことを意味する慣用句。年末高となる12月相場を言い表す相場格言として使われる

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[執筆者]岡田禎子
岡田禎子
[おかだ・さちこ]証券会社、資産運用会社を経て、ファイナンシャル・プランナーとして独立。資産運用の観点から「投資は面白い」をモットーに、投資の素晴らしさ、楽しさを一人でも多くの方に伝えていけるよう活動中。個人投資家としては20年以上の経験があり、特に個別株投資については特別な思い入れがある。さまざまなメディアに執筆するほか、セミナー講師も務める。テレビ東京系列ドラマ「インベスターZ」の脚本協力も務める。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、ファイナンシャル・プランナー(CFP)
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