その株、いつ売るの? 買うよりも大切な出口戦略について考える

高株 昇
2019年1月17日 8時00分

買った株が上がったのはいいけれど、一体いつ売ればいいのか? 悩んでいるうちに月日が流れ、いつの間にやら値は下がり、塩漬けだけが溜まっていく……という人は実は多いのではないでしょうか。それを回避するには、「買う前に売り時を決めておく」ことが重要です。

入口よりも出口が大事な理由

株を買うとき、「いくらで売るか」を決めていますか? 買った株がどんなに値上がりしても、売らないことには利益は確定しません

ところが、入口である買う場面では、銘柄・株価・購入時期などを理論的に分析して慎重に判断しているのに、出口の売る場面では、雰囲気に流されたり情報に振り回されたりして安易に判断してしまう人が少なくありません。

投資は出口戦略が重要です。株を買う際には売る場面も想定し、いざ売るときには冷静に判断できるように準備しておきましょう。

成功する経営者の、成功の秘訣

企業が新規事業を立ち上げるときや既存事業を拡大するときは、社運をかけて投資をすることになります。

その際、成功している経営者の多くが、メインシナリオのほかにリスクシナリオも描いています。事業がうまくいけばよいですが、当然、環境の変化や不測の事態が生じるなど想定外の展開になることもあり得るからです。

うまくいかなかったときは、事業を続けるのか撤退するのか、続けるならどのように困難を乗り越えるのかを明確に示さなければなりません。何もしなければ、時間の経過とともにコストが拡大し、さらに経営を圧迫することにつながります。

このときに迅速かつ的確な判断ができるかどうかは、事業に投資する際に「出口戦略」を描いていたかどうかにかかってきます。

あなたの出口は誰かの入口

株式投資も同じです。どんなに時間とお金をかけて慎重に銘柄を選んだとしても、予想が100%的中することはまずありません。

たとえ買ってすぐに値上がりしても、いつまで続くかはわかりませんし、株を持っているだけでは、配当金や株主優待は獲得できても、それ以上の利益は得られません。

株で確実に利益を出すには、いつかは売らなければなりません。そのためには、自分の保有株を誰かが買ってくれなければいけないのです

そう考えると、自分が売りたいときに買ってくれる人がいるのか、いくらなら買ってくれるのか、といった買い手の気持ちを考える必要があります。株を売ろうとする人の出口は、買おうとする人にとっては入口なのです。

どこが出口になるかは方針次第

株を買う時点に売り時を考えていても、株価は様々な要因で動きますから、想定通りにならないことも多いはずです。

どんなに相場が変わったとしても、売り時を変更するならそれなりの理由を持つべきです。もっと上がりそうだと感覚的に判断するのではなく、売る根拠を明確にしなければいけません

短期トレードなら、たとえば出来高が急増して大きな上昇波動に入りそうだからとか、長期投資なら、決算発表で営業利益の数値が想定を上回ってしばらく上昇が続きそうだから、といったことが売る根拠になることもあるでしょう。

しかしながら、そもそも短期トレードのつもりなのか長期投資のつもりなのか、はっきりしていない人が多いように見受けられます。

短期から入って長期に出る?

短期トレードでは、チャートを見ながら株価の動きを判断し、素早く売買するのが基本です。一方、長期投資では、企業の業績や財務内容などを分析し、将来的に成長しそうな銘柄を買って保有することが基本になります。

ところが、短期トレードのつもりで買った株が値下がりしたため、長期保有に切り替えてしまうケースが少なくありません。反対に、企業の成長を見込んで投資したのに、一時的な値下がりに耐えきれずに売ってしまう人も多いでしょう。

目先の値動きに一喜一憂するのはよくありませんが、長期的な資産形成を掲げていても、きちんとした出口戦略を持たなければ絵に描いた餅になってしまいます。

出口があるから利益になる

保有している株を、老後に備えて定年退職する頃に売るつもりでいても、その出口を前にリーマンショック級の大暴落があったらどうしますか? 世界中の人が参加する株式市場に個人の事情は関係ないのです。

しっかりと利益を出すには、株を買う前に、投資方針と出口戦略をきちんと立てておくことが不可欠です。

方針と出口を明確にし、しっかりと利益を確定していけば、資産全体に余裕を持てるようになります。そうなれば、含み損が出て株価が回復しそうにない銘柄の損切りもしやすくなると思います。

[執筆者]高株 昇
高株 昇
[タカカブ・ノボル]証券会社を経てファイナンシャル・プランナーとして独立。お金に関する各種セミナー、金融系資格取得講座、企業研修などで幅広く講師を務めるほか、書籍・雑誌・ウェブメディア等での執筆活動、コンサルティング活動なども行う。ファイナンシャル・プランナー(CFP)、証券アナリスト。
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