2月の株価はどうなる? 節分天井か、それとも… 春節の向こうに見えてくる波乱の予感
《マーケットには、その月ごとに恒例のイベントやアノマリー(経験則)がたくさん存在します。それらを知っておけば、株価が調整局面に入っても冷静に対処できます。「節分天井」といわれる2月相場の傾向と対策を解説する【今月の株価はどうなる?】》
2月相場は底堅い
2月は、相場に底堅い動きが見られる月です。1月の新春相場に続き、2月も上昇しやすい相場が続くことが理由です。ただ、決算を控えて次第に調整局面へと移っていきます。
上旬から中旬にかけては、中国の春節をはじめ旧暦の正月を迎えるアジアの主要市場が休場となるため、その代替として日本市場が買われやすくなります。
3月期決算企業では第3四半期の決算発表が本格化し、メガバンクや商社、ソニーグループ<6758>など投資家注目の決算が出揃います。そして中旬から下旬にかけては、3月期末に向けた配当取りの動きが活発化します。
2024年2月の具体的なイベントとしては、次のようなものがあります。
- 2日(金):夜、アメリカの1月の雇用統計が発表
- 7日(水):2024年のIPO第1号、Veritas In Silico<130A>が新規上場
- 13日(火):早朝、MSCIの入れ替え銘柄が発表。対象銘柄が盛り上がる?
- 13日(火):金融庁などが定めた「NISAの日」。関連イベントが数多く開催
- 13日(火):夜、アメリカの1月の消費者物価指数(CPI)が発表
- 15日(木):東証がPBR改善策の開示企業リストを公表(2回目)
1月末の米FOMCで金利の据え置きが決定されたことを受け、日米ともに株価は後退しました。さらに、2日の米雇用統計、13日の米CPIなどの結果次第では、早期の利下げ観測が後退して波乱の相場となる可能性があります。
また、日銀がゼロ金利政策を変更するかどうかの鍵を握る「春闘」の労使交渉も、この2月に開始されます。アメリカの金利動向とともに、こちらも注視したいところです。
「節分天井、彼岸底」ってホント?
近年の2月相場を見てみると、日経平均株価の成績は、過去10年では5勝5敗の五分ですが、20年では12勝8敗(勝率6割)とまずまずの高成績を残しています。
2月の有名な相場格言に「節分天井・彼岸底」があります。
この格言の意味するところは、節分の頃(2月上旬)に高値をつけた後は下降し、彼岸の頃(3月中旬)に安値をつける、というもの。ただ、これはかつての米相場が由来といわれ、海外相場の影響の大きい現在の相場には当てはまらない……というのが一般的な解釈となっています。
その一方で、年初にスタートした新春相場からちょうど節分の頃までは需給の強い上昇が続き、その後、3月期決算企業の決算発表といったイベントを控えて、次第に調整局面を迎える、という相場の動きを表しているともいわれます。
実際、過去の日経平均株価の騰落率を見てみると、2月で最も騰落率が高いのは「2日」の61.02%、低いのが「21日」の41.07%となっています(現在は祝日の「11日」を除く)。
節分の天井から彼岸の底へ……という傾向は、過去のデータからもある程度は見てとれる、といえそうです。
2月の日経平均株価はどう動く?
では、実際の2月の日経平均株価はどのように動いたのか、過去3年の値動きをチャートで確認してみましょう。
・2023年2月の日経平均株価
米CPIが市場予想を上回る伸びを示したことから金融引き締めが長期化するとの観測が強まり、アメリカ株は下落。日本株も一時“連れ安”となったものの、円安・ドル安が進んだことから輸出株が下支えする格好で、月末にかけては底堅い動きとなりました。
・2022年2月の日経平均株価
24日、ロシアがウクライナへの侵攻を開始。リスクオフの姿勢が欧米各国や日本市場でも高まり、アメリカ株、日本株ともに大きく下落となりました。
・2021年2月の日経平均株価
新型コロナウイルスのワクチン接種が国内でも始まり、経済活動の早期正常化への期待が高まりました。日経平均株価は一時、1990年8月以来、実に30年ぶりとなる3万円台を回復しました。ただ月末にかけては、長期金利の上昇でアメリカではハイテク株を中心に下落し、日本株も連れ安となりました。
過去3年のチャートを見てみると、「前半は堅調、後半にかけては下落しやすい」という動きになっていることがわかります。まさに、「節分天井・彼岸底」といわれる2月相場の特徴がよく現れているといえるでしょう。
また、ここ数年はアメリカの金利動向に左右されやすいことも見て取れます。
市場では、FRBは3月にも早期の利下げに踏み切るだろう……との見方が支配的ですが、FRB高官による「3月利下げの折り込みは尚早」との発言も相次いでいます。今後発表される重要指標で市場の見方が見直しされと、相場の調整が起こる可能性もありますので注意が必要です。
高配当株に機関も個人も注目
例年2月は高配当株が注目されやすいタイミングです。それは、3月末割り当ての「権利付き最終日1」が意識されるようになるからです。そのため2月に入ると、国内&海外の機関投資家、個人投資家がそろって期末に向けた配当取りの動きを活発化させます。
機関投資家の場合、期末までの保有期間でどれだけの利回りを確保できるのかを重視して、特に高利回りが期待できる高配当銘柄を積極的に取りに行きます。
一方、個人投資家は株主優待の権利取りにも注目します。配当+優待で考えると、その高い利回りのおかげで“お得感”のある銘柄も少なくないため、優待が人気の銘柄で売買が活発化するのです。
特に2月末は、外食や小売、サービスなどの内需系企業の決算が集中しています。権利付き最終日に向かって売買が活発化しますので、株価の上下には注意しましょう。
今年2月末の権利付き最終日は27日(火)。2月末に決算を迎えるのは、次のような銘柄などです。
- イオン<8267>
- イオンモール<8905>
- オンワードホールディングス<8016>
- コメダホールディングス<5343> など
春節でインバウンドも本格回復?
「春節」は、中国・中華圏をはじめとして旧暦を使用する国・地域におけるお正月(元日)です。2024年の春節は2月10日(土)で、中国では10日から17日(土)までが春節期間として8連休になります。
この大型連休にあわせて、中国の国内外で「民族大移動」ともいわれる大規模な人の動きがあり、日本にも多く中国観光客がやってきます。
中国は景気低迷中ながらも、昨年の国慶節(2023年9月29日〜10月6日)の連休には、一日の出入国者数が2022年のほぼ4倍となり、コロナ禍前の2019年と比べても85%にまで回復しています。コロナ関連の水際対策が撤廃されて初めての春節となる今年は、国内外の旅行がさらに高まると予想されます。
中国国内の調査によると、海外旅行先として人気なのはアジア地域。なかでも「日本」は行きたい国ナンバーワンだそうです。
近年の中国人観光客の消費動向として、コロナ禍前は「爆買い」が多かったのに対し、最近は「観光」などの体験を求める人が多くなっています。日本の美しい景観や人気アニメの聖地巡礼のほか、日本のおもてなしの接客体験など、「モノよりコト」を重視する傾向にあるのです。
とはいえ、中国人観光客の圧倒的な購買力は、やはり大手百貨店をはじめとするインバウンド銘柄にとって商機到来といえます。株価への好影響が期待できる業界としては、ほかに鉄道やホテルなどでしょうか。
- 百貨店……高島屋<8233>、三越伊勢丹ホールディングス<3099>
- 鉄道……JR東日本<9020>、JR西日本<9021>、JR九州<9142>、小田急電鉄<9007>、京阪ホールディングス<9045>など
- 宿泊……京都ホテル<9723>、共立メンテナンス<9616>
日本は、昨年2023年の訪日外国人数は回復傾向が鮮明で、10月には総数ベースで2019年の対同月比101%となり、コロナ禍前の水準に達しています。ただ、中国からの訪日客数は同35%に留まっており、回復の遅れが目立っています。
処理水問題で大きく下落した資生堂<4911>を含め、2024年の春節がインバウンド銘柄の本格的回復の起爆剤となるのか、大いに注目したいところです。
2月13日は「NISAの日」
今月からスタートした「新NISA」。2月13日は、語呂合わせ(ニ・イ・サ)から「NISAの日」に定められています。この前後に実施される予定の証券業界の各種キャンペーンで、さらなる投資家の拡大が期待されます。
その新NISA効果もあって、足元は年初から需給が強い相場が続いています。ただ、2月後半からはトヨタグループをはじめ政策保有株を手放す動きが活発化してくることや、日銀の金融政策変更の思惑なども強まるため、このまま株高を持続できるどうかがポイントとなります。
今年も「節分天井」となってしまうのか? アノマリーを理解して、できるだけの対応策を練っておきましょう。
- 権利付き最終日……配当などの権利を得ることのできる最終売買日。原則として期末に設定される ↩︎