日経平均株価はそろそろ落ち着くか。気になる6月相場の特徴とは【今月の株価はどうなる?】
《株式市場には、一定の季節性や、法則というわけでもないけれど参考にされやすい経験則(アノマリー)など、ある種のパターンが存在します。過去の例からひもとく6月の株式相場の特徴とは?》
6月は株主総会とメジャーSQ
6月は、日本企業の株主総会が数多く開催されるピークシーズンとなります。東証のデータによると、昨年(2021年)は3月期決算企業の16%が「24日」に、25%が「25日」に、そして27%が「29日」に株主総会を実施しており、下旬に集中していることがわかります。
また、6月は先物・オプションの精算日である「メジャーSQ」の月となります。
SQとは特別清算指数(Special Quotation)のことで、日経平均株価を原資産とする先物やオプションの清算に用いられる価格です。
先物取引では3・6・9・12月の3か月ごと、オプション取引では毎月の第2金曜日の寄付価格がSQとなり、これら先物とオプションの両方の決済が行われる日を「メジャーSQ」と呼びます。今年の6月は「10日」がメジャーSQ日です。
このメジャーSQに向けて、先物・オプション取引の清算に絡む現物株の取引が活発になり、それが相場の変動要因となることがあります。そのため、近年はかつてほど影響は大きくありませんが、市場で意識されているイベントのひとつとなっています。
6月の日経平均株価はどう動く?
そんな6月で、株価が「強い日」「弱い日」はいつになりそうでしょうか? それを知るために、6月の日経平均株価の過去データを振り返りましょう。日経平均株価についての公式データを公開している「日経平均プロフィル」を参照します。
戦後、東京証券取引所が立ち会いを再開した1949年5月から直近までの日経平均株価の日々の騰落率を確認してみると、6月で日経平均株価が上昇した確率(=勝率)が高いのは「30日」で、騰落率は68.97%でした。
反対に、6月で日経平均株価が上昇する確率が低かった(=下がる確率が高かった)のは「6日」です。騰落率は37.93%となっており、この日だけ4割を切っています。
過去20年は「大きな下落」か「小幅な上昇」
日経平均株価の月間の騰落状況(前月末終値と当月末終値の比較)を、2000年からの20年で見てみましょう。
5月末比では、月間で上昇したのが14回、下落が8回と、上昇した確率が6割を超えています。ただ、下落した年の下落率が大きく、かつ上昇した年の上昇率が小幅にとどまることが多かったため、平均の上昇率は0.4%と低位な結果となりました。
最近で下落率が高かったのは2016年の6月で、日経平均株価は月間で9.63%下落しました。
6月23日、イギリスは国民投票でEU(欧州連合)からの離脱を決定。事前の世論調査では残留派が優勢との報道もあったため、速報で離脱が優勢と報じられると金融市場に波乱が広がりました。翌24日の東京株式市場で日経平均株価は前日比1,286円安と8%の下落となり、ドル円の為替レートは1ドル=99円へと急激な円高が進行しました。
反対に、上昇率が最も高かった2003年の6月には、日経平均株価は7.82%上昇しました。
この年の4月28日に、日経平均株価は7,603円のバブル後最安値(当時)を更新しました。ITバブル崩壊によるアメリカ景気の減速、また、同3月の米英軍によるイラクへの空爆開始でイラク戦争が始まったことなどが影響しました。
日本でも長引く金融機関の不良債権問題などが懸念され、大手銀行の国有化なども株価の下押し圧力となっていました。しかし、この年の5月に、りそな銀行に約2兆円の公的資金が注入されて安心感が広がると、株式相場のムードは一転。その後は金融株を中心に上昇相場が続いたのです。
直近の6月の日経平均株価は?
それでは、最近の6月の日経平均株価の値動きはどうだったのでしょうか? 過去3年間のチャートを見ながら振り返りましょう。
・2019年6月の日経平均株価
2019年6月の日経平均株価は月間で3.7%上昇しました。
米IT大手4社(GAFA)に対して独占禁止法が適用されるとの報道で、月初からハイテク株などが売られました。しかし、月半ばに開催された米中首脳会談で米中摩擦への懸念が後退したことや、米FRB(連邦準備制度理事会)議長が金利引き下げの可能性を示唆したことで景気回復への期待が強まり、株式市場を下支えしました。
・2020年6月の日経平均株価
2020年6月の日経平均株価は月間で1.8%上昇しました。
新型コロナウイルスの感染が年初から拡大し、3月に日経平均株価は安値をつけました。しかし、アメリカで大型の経済対策や金融緩和が打ち出され、ヨーロッパでも同様の動きが見られことを受け、その後は戻り相場が続きました。
ただ、中国でのコロナ感染拡大や、海外の金融緩和による副作用としての円高・ドル安が輸出株などを下押しし、上昇幅は小幅にとどまりました。
・2021年6月の日経平均株価
2021年6月の日経平均株価は月間で0.2%下落しました。
中旬に開かれた米FOMC(連邦公開市場委員会)でFRBが、2023年じゅうにゼロ金利政策を解除するとの方針を発表し、それが株式市場に逆風となるとの見方からアメリカ株が売られ、日経平均株価も“つれ安”(引きずられる形で値下がりすること)になりました。
しかしながら、その後はコロナワクチンの普及による経済再開への期待や、アメリカでの大型インフラ投資計画などが下支えとなり、月末では小幅な下落となりました。
直近3年間の6月を見ると、日経平均株価は2勝1敗となっており、20年間の月間騰落状況と照らし合わせても平均的と言えそうです。
株価を動かす6月のイベント
株式市場にも影響を及ぼす可能性のある6月のイベントといえば、まずは前述の株主総会が挙げられます。
たとえば、株式総会の当日に株価が下落していると個人投資家などからの質問のトーンも厳しくなることが多いたため、企業が自社株買いの実施を行う時期も6月が多くなると言われています。
今年は特に4月下旬からの5月までの決算発表シーズンで、今期の業績予想を発表すると同時に自社株買いの計画を発表する企業が多く見られました。
企業は株主のものであり、余った手元資金は成長投資に振り向けるか、さもなくば自社株買いで株主に還元すべし、との認識が上場企業の間で広がっており、2021年度の自社株買い(取得枠)は8兆円超と過去最高を更新。今年度もさらに高水準の自社株買いの設定や実施が行われると見られています。
また、6月中旬には例年、世界的なゲームの見本市の「Electronic Entertainment Expo(E3)」が開催されてきました。2022年は残念ながらコロナの影響で開催中止となってしまいましたが、例年であれば6月はゲーム関連株が盛り上がりを見せるタイミングでもありました。
参院選で注目したいコロナ対策の行方
月の下旬から7月にかけては参院選も市場の話題となりそうです。
参議院議員の任期は6年で、3年ごとにその半数を改選する選挙が行われます。公職選挙法では参院選の投開票日を「閉会日から24日以後30日以内」と定めており、今年の閉会日は6月15日の予定ですので、大方の予想では6月22日に公示、7月10日に投開票となりそうです。
参院選は巡ってはさまざまな論点が予想されるものの、新型コロナ対策の緩和についても注視されそうです。
政府は6月10日から添乗員パッケージツアーに限り、外国人観光客の受け入れを再開すると発表しました。また一部では、新型コロナの感染法上の分類をエボラウイルスやSAASと同じ2類から季節性インフルエンザと同じ5類に引き下げることへの期待も出ています。
また、円安の加速によって海外から見た日本のモノやサービスの割安感が高まっていることからも、インバウンド消費の再開によって鉄道、航空、ホテル、レジャーなどのアフターコロナ関連株の物色がさらに盛り上がる可能性もありそうです。
そろそろ落ち着きを取り戻すか…
日経平均株価の過去データをもとに、6月相場の特徴をいくつかご紹介しました。
2022年はロシア・ウクライナ問題やアメリカの金融引き締めの影響を受けて、年初から波乱の相場展開が続いていましたが、5月を迎えてアメリカ株などはやや落ち着きの兆候も見られてきました。日経平均株価もこの6月に一段の値固めができるかどうか、注視される月となりそうです。