6月の株価はどうなる? 株主総会ラッシュを経て、いよいよ株高ウィークがやってくる!
《マーケットにはその月ごとに恒例のイベントやアノマリー(経験則)が存在します。それらをしっかり熟知し把握することでチャンスを逃さず、“一段上の投資”を行うことができます。では、株主総会ラッシュや株高ウィークが待ち受ける6月相場の特徴とは?》
6月は日本株が優位な月
6月は日本株が優位な展開となりやすい月です。
初旬〜中旬は3月期決算企業の決算発表も出揃い、株式市場は落ち着きを取り戻します。この時期は、決算内容をふまえての売買が行われます。アパレルや小売、外食などではゴールデンウィークの結果を含む「5月の月次売上高」が発表され、投資家の注目を集めます。
今夏に向けた気象予報が発表されて猛暑関連銘柄が動きやすくなる時期でもあります。
また、6月はメジャーSQの月です。今年は「9日」で、その前と後では相場のムードがガラリと変わることがあるので、注意が必要です。
中旬〜下旬には株主総会が宴もたけなわとなります。企業とアクティビストとの戦いに注目です。そして、最終週は配当金の再投資効果による株高が期待されます。
日本株高&アメリカ株安となりやすい
日本株とアメリカ株は連動性が高いものの、実は6月にかぎっては、日米の株価の方向性に開きが生じる展開となりやすい、という傾向があります。
アメリカ株は、セルインメイ(5月に株を売れ)との相場格言にあるように、例年夏場にかけて調整色が強まります。
その一方で、日本株は3月期企業の決算発表が一段落するこの時期に買いが再開し、また、株主総会を控えて株価上げ賛成ムードとなりやすく、さらに、自社株買いや配当金再投資効果などから株価が高くなりやすい傾向にあるからです。
実際に2000年以降の6月の勝敗を見てみると、ダウ平均株価は8勝15敗であるのに対して日経平均株価は14勝9敗と、日本株に大きく軍配が上がっていることがわかります。
ただし、ここ数年は海外情勢に振り回されている側面もあるので、注意したいところです。
6月の日経平均株価はどう動く?
では、実際の日経平均株価はどのように動いたのでしょうか。過去3年の値動きをチャートで確認してみましょう。
・2020年6月の日経平均株価
新型コロナの移動制限が解除されたことによる経済活動の再開に伴う景気回復への期待や、アメリカ株の上昇で、日本株は堅調となりました。中旬には中国でのコロナ感染拡大で大きく下落が、月末にかけてはFRBの金融緩和策やアメリカの景気対策への期待感で再び上昇基調となりました。
・2021年6月の日経平均株価
前半は堅調に推移したものの、16日のFOMCで2023年にゼロ金利政策を解除する方針が示されると、アメリカと同様に日本株も900円以上の大幅下落となりました。その後、日米ともに株価は持ち直しましたが、方向感を欠いた動きとなりました。
・2022年6月の日経平均株価
10日発表の米CPI(消費者物価指数)が市場予想を上回る上昇だったことを受けて、FRBが0.75%の大幅利上げを決定。ヨーロッパの中央銀行もインフレ抑制を優先した利上げを発表したことから、世界的な景気減速への懸念が広がり、日本株も大きく下落しました。
はじめ堅調、なか軟調、終わりにかけては回復基調
それぞれのチャートを見ると、総じて初旬から中旬にかけては堅調に推移するものの、中旬で一旦軟調に転じ、その後、月末にかけては回復基調になっています。
この背景には、6月のスタートは決算発表明けで小康状態となりやすく、メジャーSQを超えたあたりから月末にかけては黄金の株高最終週に向かって上昇となりやすい、という傾向があるためです。
ただ、6月は日本株には何かと優位な展開になりやすい傾向はあるものの、ここ数年は海外情勢に大きく振り回されてしまっています。株価的にも上下の振り幅が大きく取引には注意したいところです。
特に今年は、米FRBが5月の会合で次回FOMC(6月13〜14日)で利上げを停止する可能性を示唆したこともあって、この結果によってはまた大きく方向性が変わる可能性があります。
外は梅雨でも気分は早くも夏!
6月は梅雨の季節。しかしながら、投資家はすでに梅雨明け後にやってくる本格的な夏に向けて、猛暑関連銘柄(サマーストック)の物色に余念がありません。
猛暑関連銘柄とは、夏季の気温の上昇に伴って売上高の伸びが期待できる銘柄群のことをいいます。猛暑予想の場合は買われやすく、冷夏予想の場合は逆に売りが出やすい傾向にあります。
ただ、「麦わら帽子は冬に買え」という相場格言があるように、実際は夏になってから買うのでは手遅れです。気象庁の3か月予報や、日本の気象に影響を及ぼすエルニーニョ現象やラニーニャ現象などの予測が発表されると、そこから連想買いが働く、という動きになります。
エルニーニョ現象は、猛暑など異常な天候の要因になると考えられています。気象庁では5月12日に発表した監視速報で、今後夏までの間にエルニーニョ現象が発生する可能性が高い(80%)としています。
ただし、この速報は一般的に、7月に発表される速報(6月分のデータによる)までの予測にはある程度の不確実性がある、と知られています。次回の発表は6月9日に予定されていますので、しっかりチェックしておきましょう。
代表的な関連銘柄は、やっぱりビール
猛暑関連銘柄の代表的なものは、ビール、エアコン、アイスクリーム、清涼飲料水などです。
具体的には、ビールは値上げを発表したアサヒグループホールディングス<2502>やキリンホールディングス<2503>、サッポロホールディングス<2501>、アイスクリームでは森永製菓<2201>など。エアコンではダイキン工業<6367>や三菱電機<6503>、富士通ゼネラル<6755>などが中核銘柄です。
また、熱中症対策にもなるスポーツドリンクの大塚ホールディングス<4578>や、日焼け止めや熱冷ましグッズの資生堂<4911>やコーセー<4922>、小林製薬<4967>なども代表的なサマーストック銘柄です。
株主総会シーズン到来
6月は株主総会のシーズン。特に最終週は株主総会ラッシュで、なかでも29日は500社以上が開催を予定している最大の集中日となっています。その株主総会を控え、企業に対するアクティビスト(物言う株主)の株主提案といった活動が活性化します。
実は、会社の定款の変更には、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要、という高いハードルがあります。
役員報酬の個別開示や買収防衛策の廃止といったコーポーレート・ガバナンスの改善や強化の提案はアクティビスト側の賛成票を集めやすい一方で、大幅な増配の要求などは、経営状況にもよりますが賛否が分かれがちです。
例えば昨年、イギリスの投資ファンドであるシルチェスターが京都銀行<8369>など複数の地銀に増配を提案しましたが、いずれも否決されました。ただその後、各地銀は株主還元を強化する動きとなり、結果的に株価も上昇となったのです。
今年も、シルチェスターによる大林組<1802>や京都銀行への特別配当の株主提案、ロンシャン・SICAVからの自社株買い実施の株主提案に対して反対表明している戸田建設<1860>など、話題性の高い株主総会が続々と開催されます。
特に今年は、東証がPBR(株価純資産倍率)1倍割れ企業に状況改善を求めたこともあって、企業側は東証とアクティビストからの両方のプレッシャーを受けることとなります。株主総会に向けて、企業とアクティビストのせめぎ合いに注目です。
黄金の株高ウィークがやってくる!
6月の最終週は「黄金の株高ウィーク」といわれています。
3月期決算企業の多くは、株主総会で利益処分案が承認された直後に期末配当の払い込みを行います。その配当金を受け取った投資家が一部を再投資に充てれば、需給効果は大きくなります。これを「配当再投資効果」といいます。
特に最終週は株主総会→配当支払いが大ラッシュとなるため、日本相場の“ゴールデンウィーク”となるのです。
実際、戦後から現在までの日経平均株価の6月の騰落率を見ると、権利付き最終日(28日)から月末までの3日間は上昇率6割をマークしており、特に30日は67.8%と素晴らしい成績です。さらに、今年度の配当総額は過去最高を更新する見込みで、そのインパクトは大きくなるのではないでしょうか。
6月はラストチャンス?
早いもので、6月は1年の折り返し地点です。
株式相場には、「1〜6月の上半期のリターンは7〜12月の下半期のリターンを上回る」というアノマリーもあります。また、黄金の株高ウィークを過ぎると「七夕天井」といわれるように、夏枯れ相場が待っています。
儲け時の最後のチャンスともいえる6月相場。その独特な動きのクセまでも熟知して、果敢に投資に挑みましょう。