6月の株価はどうなる? 波乱に備えつつ最後のチャンスにつかみたい銘柄とは

岡田禎子
2025年5月24日 11時00分

《6月といえば、梅雨に衣替え──。実は株式市場にも、月ごとの「風物詩」があります。お決まりのパターンや上がりやすい株など、その月ならではの「あるある」を知っておけば、ムダな損失を避け、大きなチャンスをつかめるかもしれません》

波乱から上昇へ向かう6月相場

6月は波乱含みながら月末にかけて上昇が期待できる月です。

前半は決算発表が一巡して材料難となりやすく、メジャーSQや機関投資家の持ち高調整なども重なって波乱含みとなります。ただ後半は、株主総会シーズンの本格化とともに配当金の再投資効果などが期待できることから月末にかけて上昇しやすい、という傾向があります。

日経平均株価の過去20年の6月の月間騰落率(=前月終値と当月終値の比較)は平均で+0.6%となっており、一年の中では突出したパフォーマンスではないものの、比較的底堅い動きを示すことが確認できます。

もちろん、今年も例年どおりの値動きをするとは限りませんが、こうした相場の季節性や、その月の恒例イベントにあわせた値動きのパターンを事前に知っておくことで、それを先回りして投資することもできるようになります。

さらに、月ごとのアノマリーからその傾向や特徴を読み解くことで、効率的な物色がしやすくなります。「アノマリー」とは相場における経験則のことで、根拠はないけどよく当たるものや、相場格言として長く言い伝えられているものも多くあります。

〈参考記事〉最も株高・株安になりやすいのは何月? 意外と知らない株式相場のパターンとは

6月の株価はどう動く?

もともと6月相場は、決算発表が一巡して物色の手掛かりが掴みにくく、小康状態となりやすい月。

そのため、メジャーSQ(今年は13日)への警戒感や、機関投資家が持ち高調整のために出す売りなどによって「不安定な前半」となりがちなのに対して、株主総会シーズンの到来や月末の配当再投資効果によって「後半は上昇」という構図となります。

〈参考記事〉「メジャーSQ」で株価が上昇? 現物株への影響も理解する

(過去の6月の日経平均株価のチャートはこちら

加えて、2025年の6月は例年以上に重要イベントが目白押しです。

まずは15日からカナダで開催されるG7サミット(主要7か国首脳会議)。14日は米トランプ大統領の、15日は中国・習近平主席の誕生日とも重なることから、米中の「バースデーサミット」としてサプライズな外交カードが切られる可能性も取り沙汰されています。

こうした政治的な動向は、金利や為替、株式市場に影響を与える可能性があり、投資家にとって見逃せない週となりそうです。

また、16日・17日には日銀金融政策決定会合、17日・18日にはアメリカでFOMCが開かれます。現時点では日米ともに政策金利の据え置きが見込まれているものの、特にアメリカの関税政策やインフレ指標の結果次第では、中央銀行のトーンに変化が生じるリスクもあります。

6月のアノマリーで上がる株

そんな6月相場で上昇しやすいのは、どんな銘柄でしょうか? 過去10年(2015年~2024年)の6月相場で勝率が高かった銘柄を見てみましょう。

6月相場に強い銘柄として相場ではおなじみの企業が上位に並んでいます。なかでも目を引くのが、この10年で一度も6月に下落したことのないトランザクション<7818>。株価上昇のポイントは、高い成長性と、7月に行われる第3四半期の決算発表です。

・トランザクション<7818>

トランザクションは、デザイン雑貨などを企画・製造・販売する企業で、株式市場では「推し活消費」の代表的な銘柄のひとつ。推し活の浸透と、それに伴う消費拡大を追い風にして、2桁成長を遂げてきました。

6月の株価上昇のトリガーとして意識されるのは、6月末に出される上方修正と、例年7月上旬に発表される第3四半期の好決算です(同社は8月期決算のため、3〜5月期が第3四半期)。

ちなみに、今期(2025年8月期)の営業利益は10期連続での最高益更新が見込まれており、年間配当も39円から55円へ増配される予定です。

ただ、中間決算までの進捗率は49%で、これは5年平均並み。4月につけた高値を超えるには、エンタメというテーマ性の盛り上がりと、市場の想定を上回るほどのサプライズ決算による株価の後押しが必要となるかもしれません。6月11連勝となるか、注目です。

6月に猛暑関連銘柄が強い理由

6月は猛暑関連銘柄への物色が強まる月でもあります。

この10年で9勝しているキーコーヒー<2594>や8勝の明治ホールディングス<2269>は飲料・アイスクリーム関連、いずれも9勝のグンゼ<3002>とZOZO<3092>は夏物衣料関連として、それぞれ猛暑に向けて6月のこの時期から注目を集め始めます。

2025年の夏も全国的な猛暑が予想されています。気象庁によると、地球温暖化の影響やラニーニャ現象の名残で、6〜8月は全国的に平年を上回る高い気温となる見込みで、特に、梅雨明けが早まって夏の前半から高温が続く……とのこと。

その他の猛暑関連銘柄では、値上げ効果も期待されるビール業界のほか、アイスクリーム関連では好業績で勢いに乗る森永乳業<2264>も挙げられるでしょうか。

これら猛暑関連銘柄をはじめ、食品や小売といった内需株の需要が高まるのも6月相場の特徴のひとつ。今年は「実需+猛暑特需+値上げメリット」の三拍子が揃うテーマでもあり、気温同様、関連銘柄もアツくなるかもしれません。

株主総会シーズンはアクティビストに注目

6月も後半に入ると株主総会のシーズンがやってきます。今年は27日(金)が集中日。株主総会はかつての「形式的なセレモニー」から「経営評価の場」に変容しつつあり、ガバナンス改革や株主還元強化策が評価される重要なタイミングです。

昨年2024年6月の株主総会では、過去最高となる113社が株主提案を受け、うち59社はアクティビスト、いわゆる「物言う投資家」などによるものでした。2025年もその流れは継続することが予想されます。アクティビストのターゲットとなった銘柄は、投資家の注目が特に集まります。

アクティビストたちの提案は「株価重視の経営」への変化を促す力があり、たとえ否決されたとしても、構造改革や株主還元など起爆剤となるケースも多く見られます。そのため、アクティビスト関連銘柄には投資家の期待感が一層高まり、株価が動意しやすいのです。

今年注目される提案としては、以下のようなものが挙げられます。

再投資効果で株高ウィークがやって来る!

6月末には、3月期決算企業による配当金の支払いのピークを迎えます。

投資家に支払われた配当金が新たな投資資金として株式市場に戻り、需給面から株価を押し上げることを「再投資効果」と言います。2025年3月期の配当総額は約18兆円に上るとされ、4年連続での過去最高を更新予定です。再投資されるのはその一部だとしても、需給には大きな影響を与えます。

特に6月の最終週は、株主総会(配当決定)のラッシュ→配当支払いラッシュ→再投資資金流入で、日本株相場は「株高ウィーク」に突入する……というのも6月相場のアノマリーです。

例年7月から8月にかけては売買が大幅に減少するいわゆる「夏枯れ相場」になる傾向にあり、その意味でも、6月は「前半戦最後の儲けどき」とも言えます。テーマ性のある銘柄をチェックし、機を逃さずに挑みましょう。

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[執筆者]岡田禎子
岡田禎子
[おかだ・さちこ]証券会社、資産運用会社を経て、ファイナンシャル・プランナーとして独立。資産運用の観点から「投資は面白い」をモットーに、投資の素晴らしさ、楽しさを一人でも多くの方に伝えていけるよう活動中。個人投資家としては20年以上の経験があり、特に個別株投資については特別な思い入れがある。さまざまなメディアに執筆するほか、セミナー講師も務める。テレビ東京系列ドラマ「インベスターZ」の脚本協力も務める。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、ファイナンシャル・プランナー(CFP) note:https://note.com/okapirecipe_555
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