日経平均が暴落しても上がった株を探してみる

千葉 明
2024年8月28日 12時00分

《東京証券取引所が立つ日本橋・兜町。かつての活気は、もうない。だがそこは紛れもなく、日本の株式取引の中心地だった。兜町を見つめ続けた記者が綴る【兜町今昔ものがたり】》

 「ブラックマンデーに次ぐ大幅な下げ幅」「ブラックマンデー時を上回る過去最高の下げ幅」──8月早々、日経平均株価の暴落が発現した。かつ、その後しばらく「1日の変動幅1000円以上」という相場が見受けられた。

 いまや多面的な評論活動を展開している「ホリエモン」こと堀江貴文氏などは、「今回、狼狽売りで損をした人は投資家としての資質に欠ける。やめたほうがいい」とする。「一理あり」と私も思う。

ブラックマンデーの裏で起きていたこと

 1987年10月19日のブラックマンデー。私に兜町に身を置き、まさにその現場を取材をしていた。あれに匹敵する暴落が起きたということで、89年に上梓した『男が勝負する時』(世界文化社)を読み返してみた。

ブラックマンデーは1987年10月19日のNYダウ:508ドル下落を指す。これを受けた翌週月曜日20日の日経平均は3836円の大幅下落となった。

 バブル相場を牽引したとされる橘田義和(野村證券取締役株式部長・当時。以下同じ)は当日早朝、社長の田淵義久に呼び出された。「大丈夫か」。「問題ありません。コンセントを抜くだけで止まりますから」

 橘田の言い分にも一理あった。システム売買が執られていたニューヨーク株式市場では、その影響で「まとまった売りが売りをよび、暴落を生み出す危険性を孕んでいた」。20日朝方の成り行き注文は「買い:850万株」に対し、「売り:6億1330万株」。だが翌21日のダウは106ドル高となった。システム売買の自粛・停止が背景となった。

そうした一方でブラックマンデーを受けた20日、兜町ではこんな展開があった。公にはされていないが、私は当事者に直接聞いた。(中略)当時の大手証券4社の株式部長会が、昼食会を兼ねて行われた。45分間。そして後場早々に、こんな場面が大手各社の現場で行われた。

 例えば、日興証券の自己株買い(手口)に帝石や日本鋼管が……。野村証券の買いに石川島が……。大和証券の手口にNTTが……。相次いで値段をつけていった。

 前場、東証1部で値段がついていた銘柄は54。率にして5%足らずだった。4社の部長会では誰となく、「売り気配のまま手をこまねいていたんでは、売り気配は下がり続け相場の底割れに繋がりかねない。買い向かいに我々自身が先鞭をつけるべきではないか」とする認識が共有されていったという。

 後日、4社の株式部長を訪ねて真偽を問いただしたが、誰も「否定」はしなかった。

《参考記事》消えた兜町人(2) 大暴落の歯止め役を買って出た「火中の栗を拾う男」

なぜ、大暴落でも株価が上がったのか

 さて、大暴落という流れに「銘柄選択術」を求めてみたいと思う。今回の急落時にも値崩れをほとんど起こしていない、むしろ、そんな流れの中でも「値上がり」をみせた、かつ誰もが知っているような企業を探したい。そして、その「何故」を考えてみよう。 

 出会ったのがMonotaRO<3064>。年初来安値1,353円(2月6日)に対し、8月9日に2,421円の年初来高値をつけた。工場・工事用間接資材のネット通販(現時点で登録口座数900万超)を個人・小規模業者を展開している、あのモノタロウである。

 モノタロウは2000年に、住友商事の社内分社として設立された。中心となった人物は、のちに「プロ経営者」と称されることになる瀬戸欣也氏である。米グレンジャー社との合弁会社として「ビジネスの将来性を感じた仲間で作った」(瀬戸氏)。モノタロウの外国人持ち株比率が78.6%(前12月期末)と高い要因の一つは、こうした設立経緯による。

 収益状況・株主策の動向を遡って調べてみる。「15期連続増収・営業増益」「15期連続増配」。世界中がコロナ禍に晒されて苦悩した2020年12月期も「19.7%増収、23.8%営業増益」。以降も「20.6%増収、23.1%営業増益/19.1%増収、8.6%営業増益/12.5%増収、19.4%営業増益」。そして今期計画は「12.7%増収(2865億7000万円)14.4%営業増益(358億2000万円)」。連続増配も持続している。

 「外国人投資家が手放すはずがないよな」と改めて痛感させられた。

 念のため申し上げておくと、モノタロウを「買い」と薦めたくて本稿を書いているわけではない。例えば、「連続増収・営業増益」を達成している銘柄は、他にもある。モノタロウの「15期連続」は、ランキングでは7位タイ。モノタロウに勝る「連続企業」を探す入り口になれば、というつもりだ。

《参考記事》株で資産形成するなら見ておきたい、長期増収増益&連続増配の銘柄たち

 ちなみに、現在株価は2,263円。対して、10人のアナリストによる目標株価の平均は1,826円。10人中1人が強気、1人がやや強気も、中立が4人で、弱気が3人となっている。これをどう見るか。ご判断は各自で。「投資はあくまで自己責任」を改めて付け加えておく。

【おすすめ】なぜ明日上がる銘柄がわかるのか 元手30万円を数億円の利益に変えたプロの銘柄選び

[執筆者]千葉 明
千葉 明
[ちば・あきら]東京証券取引所の記者クラブ(通称・兜倶楽部)の詰め記者を振り出しに、40年以上にわたり、経済・金融・ビジネスの現場を取材。現在は執筆活動のほか、講演活動も精力的に行う。『野村證券・企業部』『ザ・ノンバンク』『円闘』など著書多数。
最新記事
本コンテンツは情報の提供を目的としており、投資その他の行動を勧誘する目的で作成したものではありません。銘柄の選択、売買価格など投資の最終決定は、ご自身のご判断で行っていただきますようお願いいたします。本コンテンツの情報は、弊社が信頼できると判断した情報源から入手したものですが、その情報源の確実性を保証するものではありません。本コンテンツの記載内容に関するご質問・ご照会等にはお答えいたしかねますので、予めご了承くださいますようお願い申し上げます。また、本コンテンツの記載内容は予告なく変更することがあります。
友だち追加
お知らせ
» NTTドコモのマネーポータルサイト「dメニューマネー」に記事を提供しています。
dメニューマネー
» 国際的ニュース週刊誌「Newsweek(ニューズウィーク)」日本版ウェブサイトに記事を提供しています。
ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
» ニュースアプリ「SmartNews(スマートニュース)」に配信中。「経済」「マネー」「株・投資」ジャンルから、かぶまどをチェック!
SmartNews(スマートニュース)
銘柄選びの教科書
トヨタを買って大丈夫?