IPO公募割れを引き起こす3つの要因と3つの共通点

岡田禎子 2020/02/19 12:13

公募割れは避けられる悲劇

個人投資家に大人気のIPOですが、ここ数年、全体の1割程度は初値が公募価格を下回る「公募割れ」となっています。やっと当選したIPOでまさかの損をするなんて……と涙を呑むことにならぬよう、公募割れ銘柄の共通点と損をしないためのポイントを確認しましょう。

公募割れの要因は主に3つ

2019年の新規上場(IPO)は86社。そのうち初値が公募価格を上回った企業は76社と、8割以上の勝率となっています。しかし、初値が公募価格を下回った、いわゆる公募割れ企業も9社ありました。

IPOが公募割れとなる要因は主に3つあります。

  • 日本株の状況
  • IPO社数の月間ペース
  • 銘柄の個別要因

2019年の日本株は、米中貿易戦争の深刻化、世界景気の後退懸念などで弱含みの展開となり、IPO市場も失速、8月以降は悲観ムードが漂っていました。しかし、アメリカの金利低下で底打ちとなり、10月以降から年末にかけて日本株は上昇。IPO市場も復調となり、12月はIPOバブルと言われるほど活況となりました。

このように、そのときの株式市場の状況によって、IPO市場も影響を受けます。また、同じ月内でIPOが多い場合、人気の度合いによって資金分散が起こり、初値の勢いが限定的になります。さらに、それぞれの銘柄の個別要因が加わって「公募割れ」という結果になるのです。

2019年の公募割れランキング

では、個別要因にはどんなものがあるのでしょうか。2019年の公募割れ9社を振り返ってみましょう。以下は、公募価格と初値の差額(=初値で売却した場合の損失額)順に並べた「残念ランキング」です。

【第1位】大英産業<2974>

北九州地盤で新築マンションや新築一戸建て住宅の販売を手がける会社。

●どうして割れた?

月最初の単独IPOでしたが、地方のマンション・戸建て販売の不動産業と超不人気な業種であり、さらに福岡証券取引所上場という理由もあって、個人投資家の注目度が低く、残念ながら初値は公募価格を割り込み、初値売りでは19,000円のマイナスとなりました。

【第2位】SREホールディングス<2980>

不動産事業、ITプラットフォーム事業、AIソリューション事業を展開する会社。

●どうして割れた?

ソニー<6758>の子会社という知名度もあり、不動産テック、AI関連とテーマ性も十分、業績堅調でもあったのですが、公開規模が100億円超えの大型案件で、予想PER100倍超えの割高感、また同日に同じ不動産テック系のランディックス<2981>もマザーズ上場だったことから、小型案件を好む個人投資家はそちらに向かったようです。ランディックスは203,000円のプラスで、まさに明暗が分かれた結果となりました。

【第3位】HPCシステムズ<6597>

科学・工学向け高性能コンピュータのソリューション提供を手がける会社。

●どうして割れた?

ハイテク企業のIPOは人気が高いものの、公開規模が60億円超えとマザーズでは大型案件であること、個人投資家にとってはネガティブイメージが強いベンチャーキャピタルの出口案件色が強いこと、加えてIPOの悲観ムードが漂った9月の最終上場だったということもあり公募割れに。

【第4位】Chatwork<4448>

ビジネスチャットツール「Chatwork」の開発やセキュリティソフト「ESET」の代理販売を行う会社。

●どうして割れた?

同種のツールとしてはバツグンの知名度がある同社。連続赤字から黒字化しての上場と、何かと注目度は高かったのですが、市場に悲観ムードが漂っていた9月の上場で、公開規模は150億円超え、予想PERは1,000倍以上、さらにベンチャーキャピタルの出口案件色も強いことから、個人投資家から敬遠される結果となりました。

【第5位】BASE<4477>

Eコマースプラットフォーム「BASE」やオンライン決済サービス「PAY.JP」を手がける会社。

●どうして割れた?

10月まで大型案件や赤字上場で厳しい結果が続いていた流れを受けて、人気のEコマースや決済系ではあるものの、赤字上場でかつ公開規模が150億円超えであること、ベンチャーキャピタルの出口案件色が強いことから個人投資家の選別の目は厳しく、公募割れとなってしまいました。

【第6位】ステムリム<4599>

大阪大学発バイオベンチャー。自己組織再生を促進する「再生誘導医薬」の開発を手がける会社。

●どうして割れた?

IPOの地合いが悪い中、赤字のバイオベンチャーでハイリスク・ハイリターン銘柄であること、公開規模が290億円超えであること、公募価格が仮条件の下限で決まったこと、ベンチャーキャピタルの出資が多く、ストックオプションやロックアップなしも多いことから上場後も売り圧力が強いことが予想されるなど、個人投資家の警戒感は高く公募割れとなりました。

【第7位】メドレー<4480>

人材採用システム「ジョブメドレー」、クラウド診療支援システム「CLINICS」、医療メディア「MEDLEY」等、医療ヘルスケア領域におけるインターネットサービスの開発・提供を行う会社。

●どうして割れた?

医療系×人材市場とIPOでは人気のあるテーマながら、赤字上場で公開規模が200億円超え、ベンチャーキャピタルなどの公募株売出し比率が高く、ロックアップも1.5倍などと出口案件の印象が強かったことなどから、12月のIPOラッシュの中で個人投資家に敬遠されてしまったようです。

【第8位】KHC<1451>

兵庫県を中心に建設・不動産事業を展開する会社。日本アジアグループ<3751>傘下。

●どうして割れた?

不動産業という不人気な業種に加えて、東証2部上場で、しかも親子上場と、個人投資家に敬遠される要素が揃っていた同社。さらに、コプロ・ホールディングス<7059>や個人投資家に知名度バツグンのミンカブ・ジ・インフォノイド<4436>も同日上場だったため、2019年初の公募割れ銘柄という不名誉なデビューとなりました。

【第9位】ダブルエー<7683>

「ORiental TRaffic」ブランドなど婦人靴を中心とした自社商品の企画・販売を行う会社。

●どうして割れた?

業績は好調であるものの、小売業というテーマ的に新鮮味に欠けることや、公募規模の48億円超えはマザーズ上場案件としてはやや大きいことから、人気が出ずに公募割れに。

公募割れ銘柄3つの共通点

2019年の公募割れ銘柄からもわかるように、公募割れをする銘柄にはいくつかの共通点があります。そのひとつが「公開規模が大きい」こと。

IPOによって市場に資金が流入しますが、その額(公開規模)が大きすぎると需給悪化が懸念されるため、初値にはマイナスになります。個人投資家は軽量感を重視しますので、小型案件は人気が出やすく、反対に大型案件は警戒される、というわけです。

また、企業が資金調達のために新規株式を発行する「公募株」に対して、既存の株主が保有株を売り出す「売出株」は、その販売分は既存の株主に資金が入ります。そのため、公募株よりベンチャーキャピタルなどの売出株が多い場合には「出口案件」と見られ、個人投資家から警戒されます。

IPO投資は、新規上場企業の成長性に期待して投資するものです。そのため、新興市場であるマザーズやジャスダックへの上場であれば注目度が高まりますが、東証1部・2部は老舗企業や成熟した企業というイメージがあり、人気化しにくく初値にはマイナス要因となりがちです。

残り物には福がある?

こうした条件が揃ってしまった結果、残念ながら公募割れになったとしても、長期の視点で考えれば買いのチャンスかもしれません。つまり、その銘柄がお宝銘柄となるか大失敗銘柄となるかは投資家次第、との言えるのです。

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2020/02/19
[執筆者]岡田禎子
岡田禎子
[おかだ・さちこ]証券会社、資産運用会社を経て、ファイナンシャル・プランナーとして独立。資産運用の観点から「投資は面白い」をモットーに、投資の素晴らしさ、楽しさを一人でも多くの方に伝えていけるよう活動中。個人投資家としては20年以上の経験があり、特に個別株投資については特別な思い入れがある。さまざまなメディアに執筆するほか、セミナー講師も務める。テレビ東京系列ドラマ「インベスターZ」の脚本協力も務める。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、ファイナンシャル・プランナー(CFP)【株窓アワード2019大賞】 →この執筆者の記事一覧へ

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