すべてはココから始まった! 数々の成長株を生むマザーズ市場の魅力とは

岡田禎子
2018年12月14日 8時00分

株式投資の大きな醍醐味と言えば、「これは!」と見込んで買った銘柄が大きく成長し、大きな利益を得ることではないでしょうか。時価総額が1兆円を超えたZOZO<3092/旧・スタートトゥデイ>やエムスリー<2413>も、その成長ストーリーはマザーズから始まりました。

メルカリ<4385>や、腹筋マシン「シックスパッド」で有名なMTG<7806>の上場でも大きな注目を集めたマザーズ市場。相次ぐ超大型上場で、今後、市場そのものの変化も期待されています。そんなマザーズ市場の特徴と、それをうまく利用した投資手法について解説します。

マザーズとは? 誕生の背景にバブルあり

マザーズとは、東京証券取引所が運営する成長企業向けの市場のことです。その名称は、「Market of the high-growth and emerging stocks」の頭文字「MOTHERS」から取られています。

現在の東京証券取引所には、市場第1部、市場第2部、マザーズ、JASDAQ、そしてTOKYO PRO Marketの5つの市場があります。それぞれの位置関係は、下の図のようになっています(日本取引所グループホームページより借用)。

1990年代、ITバブル真っ盛りで新たなベンチャー企業が次々に誕生する中、マザーズは「高い成長可能性を秘めた企業に資金調達の機会を与えること」「投資家に魅力的な投資対象を提供すること」を目的として、大阪証券取引所のナスダック・ジャパン(現在のジャスダック)に対抗する形で、1999年11月に開設されました。

このような歴史的背景もあって、東京証券取引所ではマザーズを「近い将来の市場第1部へのステップアップを視野に入れた成長企業向けの市場」と位置付けています

マザーズは上場しやすい一方、厳しいルールも

マザーズでは成長性が最も重視されるため、東証1部、2部より上場基準が緩く設定されています。例えば、創業して間もない企業や、将来の成長は見込めるものの先行投資などにより赤字決算の企業であっても、マザーズになら上場することができます。

ただし、上場基準が緩い一方で、上場後の情報開示については四半期決算の開示や公開後の会社説明会の義務付けなど、厳しいルールが課せられます。

2014年には、「1部へのステップアップを視野に入れた成長企業向けの市場」とするマザーズの位置付けを明確にするために、「マザーズ10年経過後の適用基準(いわゆる10年ルール)」が導入されました。つまり、マザーズ上場後10年以上経ったら、1部もしくは2部へ昇格するか、マザーズに残留するかの2択を迫られます。

このため、創業後間もない若い企業が多いのが特徴です。業種もIT関連やサービス関連などが多く、この2業種で上場企業の過半数以上を占めています。

株価100倍も珍しくない! 若い銘柄が大化け

若い成長企業が集まるマザーズでは、株価10倍どころか100倍以上の銘柄も多く生まれています。

例えば、マザーズを代表する銘柄のひとつ、創薬ベンチャーのそーせいグループ<4565>は、2014年の利益の黒字化に伴い、2016年には26,180円の高値をつけ、2008年の安値91円47から約287倍と驚異的な伸びとなりました(※注:2018年6月の株式分割前の数字で表示しています)。

また、ペッパーランチを展開するペッパーフードサービス<3053>や工具通販サイトを運営するMonotaRO<3064>、アルバイトサイト「バイトル」を運営するディップ<2379>なども、株価100倍以上を達成しています。この3銘柄はいずれも現在は東証1部に昇格しています。

(参考記事)意外と身近な「テンバガー」 大化けする銘柄の傾向を見抜く

株価の値動きが激しさもマザーズならでは

東証1部は、売買高の約7割を外国人投資家が占めているのに対し、マザーズは個人投資家が主体です(2018年7月金額ベース)。

時価総額(株価×発行済株式数)が小さく、流通量も少ないため、わずかな売買でも株価が大きく動くことになります。何かひとたび材料が出れば、ストップ高(一日の値幅制限まで株価が上昇すること)やストップ安(一日の値幅制限まで株価が下落すること)が連続しやすい傾向にあるのです。

就活・転職クチコミサイト「キャリコネ」の運営するグローバルウェイ<3936>は、2018年4月13日(金)にスイスに子会社を設立、同時にその子会社でのICO(仮想通貨による資金調達)実施に向けた申請を行う方針と発表し、これを材料に5日連続のストップ高となりました。

一方で、2016年には、期待された新薬が効果なしと判定され、最高値7,700円から連続6日のストップ安を招いて986円まで暴落し、多くの投資家を天国から地獄に突き落としたアセキュラ・インク<4589>のような銘柄もあります。

(参考記事)株の失敗談・あるある10選 耳が痛くなった人のための処方箋つき

急成長する銘柄の株価変動パターンを知ろう

先ほどのそーせいグループの株価の値動きを参考に、成長株の株価変動パターンを見ていきましょう。

企業の黎明期である第1ステージは、業績が不安定で会社や業界の見通しも不確か。株価は投資家の期待や思惑によって、急騰したり、暴落したりを繰り返します。つまり、第1ステージは、株価と企業の利益は必ずしも連動しない時期となります。

急成長期の第2ステージでは、低迷状態から抜け出し、利益の拡大とともに株価も大きく上昇します。成熟期の第3ステージに入れば、利益の成長が鈍化し、株価も下落し始めます。

(参考記事)未来のアップル株を探そう!成長株を見分ける5つのポイント

玉石混淆のマザーズ。買うならココに気をつけて

マザーズは、第1ステージ〜第2ステージの銘柄が多く、タイミングを上手く捉えれば儲けるチャンスは多くあるものの、大きく失敗する可能性も高いということを、しっかり理解しておく必要があります。

玉石混淆のマザーズに投資する際は、話題のテーマに乗って買うのではなく、その会社がどのようなビジネスモデルなのか、どのような魅力的な新しい「価値」を社会に提供しているのか、自分なりにリサーチして納得した上で、1つの銘柄に集中せず分散して投資を行うことが肝心です。

成長を見込んで投資するわけですから、当然、中長期での保有が前提となりますが、その一方で、一定の含み損益が出たら素早く売却するなど、冷静な判断と行動力も必要となります

マザーズ市場全体に投資するには

マザーズ市場は個別銘柄だけではなく、マザーズ指数を使ったETF、東証マザーズETF<2516>や先物もあります。これらに投資することで、マザーズ市場全体に投資することができます。

東証マザーズ指数は、マザーズに上場する全銘柄を対象として算出される時価総額加重平均型の指数です。日経平均株価やTOPIXは日本経済全体の動向を示す指標となりますが、東証マザーズ指数は、新興やベンチャー企業の勢いを示す指標となり、動きが異なるのが特徴です。

魅力集まるマザーズ投資。必要なのは、先を見通す力

このように、マザーズは大きく成長する可能性を秘めた企業が集まる魅力的な市場です。しかしながら、あくまでも「可能性を秘めている」のであって、確実なことは何もありません。そこで最後に、アメリカの著名な成長株投資家マーク・ミネルヴィニ氏の言葉をご紹介しておきたいと思います。

 すべてのカエルが王子様に変身するわけではない

[執筆者]岡田禎子
岡田禎子
[おかだ・さちこ]証券会社、資産運用会社を経て、ファイナンシャル・プランナーとして独立。資産運用の観点から「投資は面白い」をモットーに、投資の素晴らしさ、楽しさを一人でも多くの方に伝えていけるよう活動中。個人投資家としては20年以上の経験があり、特に個別株投資については特別な思い入れがある。さまざまなメディアに執筆するほか、セミナー講師も務める。テレビ東京系列ドラマ「インベスターZ」の脚本協力も務める。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、ファイナンシャル・プランナー(CFP)
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