今年のNISA枠で何を買う? S&P500か、オルカンか、それとも日本の高配当株か

岡田禎子
2025年1月30日 17時00分

今年のNISA枠で何を買う?

2025年相場が始まって1か月。トランプ大統領の言動も大いに気になるところではありますが、もうひとつ個人投資家を悩ませているのが、「NISAで新しく割り当てられた枠をどう使うのがいいか?」ではないでしょうか。

アメリカ株のS&P500か、オルカンか、それとも日本の高配当株か……?

実は筆者も、昨年の新NISAデビュー組のひとりです。それまでのNISAはあまり使い勝手が良くなく、メリットも感じていませんでしたが、新NISAになって断然お得になったのを機にNISA口座を開設しました。

〈参考記事〉新NISAは魅力マシマシ 資産形成に大きな差が出る銘柄選びのヒント

成長投資枠ではS&P500に一括投資し、つみたて投資枠ではオルカン(全世界株式型ファンド)を毎日コツコツと。あわせて360万円分にフル投資を行いました。「これで万全!」と自信満々で、実際のパフォーマンスも今のところ良好です。

しかしながら、昨年8月の暴落を境に、その考えはゴロリと変わりました。そして出した結論とは……。

実際のバフォーマンスを検証しながら結論を探り、一年間この課題に悩み抜いた筆者なりの答えも合わせてお伝えいたします。同じように悩めるあなたの参考になれば幸いです。

昨年みんなは何を買った? 

まずはパフォーマンスの観点から探ってみましょう。

日本証券業協会によると、新NISA元年だった2024年の1〜9月において、証券会社10社のNISA口座での買い付け額のうち、74%は成長枠、36%がつみたて枠でした。成長枠での買い付け額を「株式」と「投資信託」に分けてみると、株式59%、投資信託が41%でした。

さらに、この成長枠での株式買い付け額の上位10銘柄は日本株で占められていました。一方、投資信託の買い付け額上位10銘柄の投資先は海外や内外で、インデックス型が中心となっています。なお、成長枠ではアクティブ型も利用されていました。

実際の銘柄を見てみましょう。以下はSBI証券の年末時点における、成長投資枠での日本株保有ランキングです。日本電信電話<9432>、日本たばこ産業<2914>、三菱UFJフィナンシャル・グループ<8306>など大型高配当株がずらりと並んでいます。

】日本電信電話<9432>
】日本たばこ産業<2914>
】三菱UFJフィナンシャル・グループ<8306>
】トヨタ自動車<7203>
】三菱商事<8058>
】KDDI<9433>
】三菱重工業<7011>
】オリエンタルランド<4661>
】三井住友フィナンシャルグループ<8316>
10】武田薬品工業<4502>

投資信託の資金流入ランキングではS&P500と全世界株式(オルカン)が圧倒的な2強となっていることがわかります(QUICKのデータをもとにSBI証券が作成した資料を参照)。

】eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)
】eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)
】HSBC インド・インフラ株式オープン
】アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信 Bコース(為替ヘッジなし)
】野村世界業種別投資シリーズ(世界半導体株投資)
】楽天・S&P500インデックス・ファンド
】SBI・V・S&P500インデックス・ファンド(愛称:SBI・V・S&P500)
】フィデリティ・世界割安成長株投信 Bコース(為替ヘッジなし)(愛称:テンバガー・ハンター)
】フィデリティ・新興国中小成長株投信(愛称:エマージング・ハンター)
10】楽天・オールカントリー株式インデックス・ファンド

NISAでの人気はやはり、日本の高配当株と、S&P500、オルカン、というのが2024年の傾向でした。

結局いちばん強かったのは?

では、そんなS&P500とオルカン、日本に高配当株について、20224年の成績を確認してみましょう。

比較したのは、資金流入ランキングで上位に入った「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」と、国内株式型で人気の高い「日経平均高配当利回り株ファンド」(いずれも三菱UFJアセットマネジメント)という3つのファンドです。

最も上昇率が高かったのがS&P500、続いてオルカン、日本株です。S&P500とオルカンの上昇が大きいのは、アメリカ株の上昇にプラスして円安の影響があります。ドル円相場は昨年1月時点では140円台前半でしたが、年末には157円台となっており、為替だけで10%以上の上昇でした。

もう少し長い期間で見てみましょう。コロナショックのあった2020年からの比較チャートを見てみます。やはりS&P500、オルカン、日本株の順ですが、その間のドル円は2020年1月時点の110円近辺から42%もの上昇となっています。

もちろん期間によって捉え方は変わるものの、このような単純な比較でも、日本株に比べてアメリカ株、特にS&P500が圧倒的に強いことがわかります。

案外しぶとい日本の高配当株

上のチャートで注目したいのは、2023年から2024年にかけてはオルカンよりも日本株のパフォーマンスが良かったことです。これは、東証のPBR改革などによって日本株が買われ、その強さを発揮したという背景があります。

さらに、長期で見る際のポイントとして、S&P500やオルカンが強い下落局面になっても、日本株は底堅さを発揮している点があります。

例えば2022年6月は、米FOMCの利上げによって世界的に株価が下落した月。2023年10月もアメリカの金利上昇で株価は世界中で下落しましたが、日本の高配当株はしぶとさを見せています。

チャートの形状も、ボラティリティ(変動幅)が高く似たような動きをするS&P500とオルカンに比べて、日本株は緩やかな上昇で推移していることがわかります。

これらのことから、S&P500またはオルカンと日本の高配当株を組み合わせることで安定的な強さを発揮する、と言うことができそうです。個別銘柄や為替に左右されない点からも、分散投資の効果が存分に発揮されるのではないでしょうか。

S&P500とオルカン、どちらがいいのか?

ここで、S&P500とオルカンの違いをおさらいしておきましょう。

S&P500とはアメリカの主要株価指数のひとつ。アメリカを代表する企業500社で構成されているため、アメリカの株式市場全体の動きを反映する、といわれています。このS&P500に連動するように設計された投資信託(インデックス型ファンド)で投資できます。

一方のオルカンは、全世界の株式(=オールカントリー)を対象とした投資信託です。新NISA開始とともに「オルカン」の名で広く親しまれるようになり、個人投資家に大変人気があります。

具体的には「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス」という指数に連動するファンドで、アメリカ株を中心に世界の先進国・新興国にも投資します。オルカンを1つ持つことで世界中の株式に投資することができます。ちなみに、オルカンのアメリカ株比率は約6割となっています。

では、S&P500とオルカンどちらを持ったほうがいいのか?

やはり近年アメリカ株が強かったというのもあり、2024年初来と2020年以降の比較のどちらを見ても、S&P500が優位となっています。2025年も引き続きアメリカ株優位の展開が続くと見られているため、S&P500に軍配が上がるのではないでしょうか。

高配当株はファンドと個別株のどちらがいい?

そうなると、利益追求ならS&P500単独で、安定的な強いパフォーマンスを目指す場合はS&P500と日本の高配当株の組み合わせが最強、ということになるでしょうか。

では、日本の高配当株を買う場合、高配当株ファンドと個別株ではどちらがいいでしょうか?

高配当株ファンドに投資するメリットとして、少額から買えるという点があります。証券会社によっては100円から購入でき、高配当株を買いたくても個別株を買う資金がない人でも投資ができます。銘柄選択や売買もファンドマネジャーが行うので、自分で判断する必要がありません。

デメリットとして、投資先の配当収益がそのまますべて分配されるとは限らず、信託報酬のコストもかかるために個別株よりは資金効率は悪くなります。また、投資信託で分配金再投資コースを選ぶと、NISAの投資枠が分配金の額だけ埋まってしまうので注意が必要です。

とはいえ、どの高配当株を買っていいかわからない人、リサーチなどが面倒な人にとっては、高配当株のファンドを購入することで個別株より手軽に投資することができるでしょう。

パフォーマンス重視なら、この組み合わせ

S&P500か、オルカンか、それとも日本の高配当株か──悩ましいこの問いの答えとして、パフォーマンス重視なら、次のように選ぶのが良さそうです。

  • 利益を追求するなら……S&P500単独
  • 安定的な強いパフォーマンスを目指すなら……S&P500と国内高配当株の組み合わせ
  • アメリカ株への集中投資に躊躇するなら……世界中に分散投資のきくオルカンを選ぶ

ところで。筆者の場合、2024年の成長枠ではS&P500に一括投資して、そのおかげでアメリカ株の強い上昇を大いに享受したわけですが、実は2025年の新しい枠では高配当株投資に変更しよう、と考えています。

なぜ考えが変わったのか? それは、8月のあの歴史的暴落を経験したからです。そのお話はまた次回。

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[執筆者]岡田禎子
岡田禎子
[おかだ・さちこ]証券会社、資産運用会社を経て、ファイナンシャル・プランナーとして独立。資産運用の観点から「投資は面白い」をモットーに、投資の素晴らしさ、楽しさを一人でも多くの方に伝えていけるよう活動中。個人投資家としては20年以上の経験があり、特に個別株投資については特別な思い入れがある。さまざまなメディアに執筆するほか、セミナー講師も務める。テレビ東京系列ドラマ「インベスターZ」の脚本協力も務める。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、ファイナンシャル・プランナー(CFP)
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