新NISAは魅力マシマシ 資産形成に大きな差が出る銘柄選びのヒント

岡田禎子
2024年1月22日 8時00分

今年からNISA(少額投資非課税制度)が大きく改正されました。投資枠も拡張し、見違えるように使いやすくなった新NISAは、投資初心者やこれから資産形成を始める人にとって心強い味方となるでしょう。

NISAとは

NISAとは、証券口座に作った「NISA口座(非課税口座)」内で、毎年一定金額の範囲内で購入した金融商品から得られる利益が非課税になる、つまり税金がかからなくなる制度のことです。

例えば、ある株式を100万円で買って120万円で売却すると20万円の利益となり、通常では、その20万円に対して2割の税金がかかります。しかし、NISA口座で購入していれば、20万円の利益がまるまる手元に残ります。資産形成を行う人にとっては大変“お得”な制度となっています。

2014年から(つみたてNISAは2018年から)始まったこのNISAが、2024年からさらに使いやすく大改正されたのです。

新NISAのメリット

改正点の目玉は、制度自体が恒久化され、非課税制度も無期限となったことです。旧制度では、非課税となる期間が「一般NISA」で5年、「つみたてNISA」でも20年という期限の制約があることが難点だったのですが、これからは運用を続ける限りずっと非課税の恩恵を受けられます。

利用可能額も大幅に拡大されました。これまでは、「一般NISA」が120万円(×5年=600万円)、「つみたてNISA」は40万円(×20年=800万円)が上限となっていましたが、これが年間360万円、生涯で1800万円まで投資が可能となりました。

さらに、以前の「一般NISA」と「つみたてNISA」は選択制でどちらか一方しか利用できませんでしたが、新制度では「成長枠(旧一般NISA)」と「つみたて投資枠(旧つみたてNISA)」の併用が可能です(あわせて年間360万円まで投資可能、生涯投資枠1800万円のうち成長投資枠は1200万円)。

この投資枠は、投資元本(簿価)で管理されます。つまり、運用成績次第では2000万〜5000万円の運用資産を非課税で保有することも可能ということ。多くの人にとって、資産形成を行うには十分な額といえる規模ではないでしょうか。

使わないなんて、言わせない!

新NISAのメリットとして特に注目されているのは、枠の再利用ができることです。

例えば、成長投資枠(年間投資上限240万円)を使って100万円で買った株が200万円に値上がりしたので、売却して現金を引き出したとします。すると、元本の100万円分は新たな空き枠として、また利用できるのです。

ただし、この空き枠は年単位で管理されますので、再利用できるのは翌年以降です。したがって、旧NISAと同様に、短期的な売買に使うことはできません。

また、今回の大改正によって、自分のライフイベントに応じた柔軟な対応も可能になりました。住宅購入などまとまったお金が必要となったときに引き出し、また自分の良いタイミングで再びNISAを活用することもできるわけです。

「NISAを使わないなんて、もう言わせないぞ!」という金融庁の“ドヤ顔”が浮かびますね。

なお、新制度は旧制度と別枠で管理され、旧NISAで保有していた資産は非課税のまま継続できます。つまり、新制度の枠とは別に現制度の分を上積みして非課税で運用できるので、ぜひとも積極的に活用したいところです。

つみたて投資か、成長投資か

NISAは、投資経験が全くない人でも簡単に資産形成が取り組めるような設計になっています。

特に「つみたて投資枠」は、少額からの長期・積立・分散投資を支援するための非課税制度として2018年にスタートした投資初心者向けの制度です。

「つみたて投資枠」で購入できる商品は長期積立投資に向いたものに限定されているのが特徴で、金融庁の厳しい基準をクリアした投資信託やETF(上場投資信託)が対象です(2024年1月4日で280本/参照:つみたて投資枠対象商品:金融庁)。

「つみたて投資枠(旧つみたてNISA)」で人気があるの商品は、世界全体に投資する低コストの投資信託です。例えば、全世界株式に過去20年間(2001年1月〜2020年12月)、毎月1万円ずつ投資していたと仮定した場合の試算では、累計積立額240万円が約624万円(2.6倍)になっています。

もちろん、投資商品ですから元本割れもあるわけですが、金融庁のお墨付きの商品を非課税枠で、それも少額から購入できるのは、資産形成を始めたい投資初心者に優しい制度といえます。

さらに新制度では「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の併用ができますので、同じ商品を購入すれば最大1800万円まで資産運用できる、ということになります。

「成長投資枠」は、投資信託だけでなく個別株やETF(制限あり)も購入でき、年間投資枠も大きいなどの特徴から、個別株に投資したい人や比較的短期での資産形成がしたい人、一括買いなど自分のタイミングで投資したい人など、ある程度は投資経験がある人に向いています。

NISAで買いたい高配当株

NISAの活用法として、特に個別株に投資したい人におすすめしたいのが高配当株です。というのも、NISAでは配当などのインカムゲインも非課税となるからです。

個別株だけで見れば、生涯の非課税枠は1200万円(成長投資枠)。枠いっぱい高配当株を買い付けて3%の利回りだった場合、年間の配当金は36万円。これが無期限に税金ゼロとなるのは、かなり魅力的です。

さらに、値上がり益(キャピタルゲイン)も狙うこともできます。

高配当株の選択基準としては、配当利回りが3%以上、時価総額が2000億円以上、利益成長が見込まれる企業、などが挙げられるでしょう。

NISA活用の注意点

NISAは運用の結果によっては元本割れを起こす可能性もあります。また、NISAは損益通算(同一年分の利益と損失を相殺する)ができません。

特に積立投資の場合は短期的には運用成績が出にくいことも多いので、長期で見守る必要があります。金融庁の試算でも、資産・地域を分散して積立投資を行った場合、5年の投資期間では元本割れの可能性が高いものの、20年になるとその可能性は限りなくゼロに近づくとされています。

投資信託の価格(基準価額)は上がったり下がったりしますが、過度に一喜一憂することなく、積立・分散投資を続けることが大切です。

また、成長投資枠で一括買いする場合は、高値掴みとならないよう投資タイミングに注意しましょう。

NISA活用は十人十色

飛躍的に使い勝手が良くなり利用枠も大幅にアップしたNISAですが、裏を返せば、老後資金は自分で用意してね、という国からの強いメッセージでもあります。将来の物価上昇にも備えておかなくてはいけません。

「つみたて投資枠」は金融庁お墨付き商品から選ぶ、とはいえ投資には元本割れもあるわけですから、さあ大変です。だからと言ってNISAを使わないでいたら、活用した人と比べて資産形成の結果は大きく違ってくるでしょう。

最大限に活用するコツは、運用資金と運用期間が確保できるのであれば、できるだけ早い時期に運用資産をNISAに集中させることです。

若く資産を持たない世代ならコツコツと積立投資を、資金に余裕のある60代なら積立に加えて成長投資枠で一括購入を毎年行う、共稼ぎなら家族単位で投資計画を立てる……など、年齢や保有資産の状況、さらに性格なども鑑みて、自分のライフプランに合わせた投資計画を立てることが大切です。

大変なことのようにも思えるかもしれませんが、自分で投資計画を立てて実行するのは投資の基本であり、最大の醍醐味でもあります。フレキシブルな対応ができるようになったNISAから、まずは始めてみましょう。

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[執筆者]岡田禎子
岡田禎子
[おかだ・さちこ]証券会社、資産運用会社を経て、ファイナンシャル・プランナーとして独立。資産運用の観点から「投資は面白い」をモットーに、投資の素晴らしさ、楽しさを一人でも多くの方に伝えていけるよう活動中。個人投資家としては20年以上の経験があり、特に個別株投資については特別な思い入れがある。さまざまなメディアに執筆するほか、セミナー講師も務める。テレビ東京系列ドラマ「インベスターZ」の脚本協力も務める。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、ファイナンシャル・プランナー(CFP)
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