株式市場の行方はアメリカ次第? 気になる11月相場の特徴とは【今月の株価はどうなる?】

佐々木達也
2022年11月1日 12時00分

Blooming Sally/Adobe Stock

《株式市場には、一定の季節性や、法則というわけでもないけれど参考にされやすい経験則(アノマリー)など、ある種のパターンが存在します。過去の例からひもとく11月の株式相場の特徴とは?》

11月相場の注目はアメリカの行方

国内では定例のイベントなどが特にない11月ですが、アメリカでは早くも年末商戦がスタートし、GDP割を占める個人消費の動向が注目されます。ただ、例年アマゾン・ドット・コム<AMZN>などECを中心に盛り上がる年末商戦ですが、今年はインフレ加速でこうした流れに陰りも出ています。

また、アメリカでは2年ごとに、大統領選挙と中間選挙が交互に実施されます。今年は中間選挙の実施年で、こちらの行方も注目されています。

過去のデータ、定例イベントなどを見ながら11月相場を読み解くヒントを探っていきましょう。

11月の日経平均株価はどう動く?

まず、11月相場で株価が「強い日」「弱い日」はいつになりそうかを見てみます。

それを知るために、11月の日経平均株価の過去データを振り返りましょう。日経平均株価についての公式データを公開している日経平均プロフィルを参照します。ここには、戦後、東京証券取引所が立ち会いを再開した1949年5月から直近までの日経平均株価の日々の騰落率が掲載されています。

このデータを確認してみると、11月に日経平均株価が上昇した確率(勝率)が高いのは「22日」で、騰落率は68.9%でした。

反対に、11月で最も日経平均株価の上昇する確率が低い(=下がる確率が高い)のは、「7日」の32..7%となっています。

過去20年の11月は上昇が7割! 強含むこと多し

日経平均株価の月間の騰落状況(前月末終値と当月末終値の比較)を2000年から見てみます。10月末比では、月間で上昇したのが15回、下落が7回で、上昇した割合が68%と優勢でした。2000年からの平均騰落率も2.4%となっています。

下落率が最も高かったのは200911月で、日経平均株価は月間で6.9%下落しました。

この前年のリーマン・ショックの影響が世界経済を下押しする中、日経平均株価は2009年3月にバブル後最安値となる7000円割れを記録しました。

10月にはギリシャで政権交代が起き、新政権の誕生と同時に、政府の債務残高がこれまで公表していた水準を遙かに上回っていることが発覚。粉飾財政が明るみとなり、ギリシャ国債の格付けが引き下げられ、金利が上昇し債務不履行(デフォルト)の可能性が浮上。欧州発の信用不安が株安につながりました。

反対に、この21年で上昇率が最も高かったのは202011月で、日経平均株価は15%上昇しました。

この年は、コロナの感染が世界中に拡大していた中、11月に米ファイザー<PFE>などが開発していたコロナワクチンについて臨床試験て有効性が確認され、規制当局に緊急使用の許可を申請するとの見通しを明らかにしたことから、世界的に株高の流れとなりました。

また、アメリカの大統領選挙で民主党のバイデン氏が現職の共和党トランプ氏を破り、イベント通過での買い戻しや新政権による経済対策への期待が広がったことも買いの一因となりました。

直近3年の11月の日経平均株価は?

それでは、最近の11月の日経平均株価の値動きはどうだったのでしょうか? 過去3年間のチャートを見ながら振り返りましょう。

201911月の日経平均株価

201911月の日経平均株価は月間で1.6%上昇しました。

この年は、米中の貿易摩擦が株式市場の懸念となっていましたが、アメリカが中国に対する関税を撤回するとの見方が広がったことも、相場のサポートになりました。

202011月の日経平均株価

202011月の日経平均株価は月間で15%上昇しました。前述のとおり、コロナワクチンの実用化への期待が広がり、世界的に株価が上昇しました。

202111月の日経平均株価

202111月の日経平均株価は月間で3.7%下落しました。

新型コロナの変異種(オミクロン型)が南アフリカで発見されたことで、株式市場に警戒感が高まりました。また、米FRB(連邦準備制度理事会) のパウエル議長がインフレ退治のため早期の利上げに積極的な姿勢を示したことも、株式にネガティブであると受け止められ、日本株の売り材料となりました。

過去3年間で見ても、日経平均株価の11月の勝敗は2勝1敗と上昇が多くなっています。

株価を動かす11月のイベント 

株価にも影響を与える11月のイベントには、どのようなものがあるでしょうか。

アメリカ中間選挙。決戦は火曜日(8日)

11月はアメリカの選挙の月です。アメリカでは2年ごとに、上下両院議員が改選(上院は3分の1ずつ)となる中間選挙と大統領選挙が交互に実施されます。2022年は中間選挙の年。投票日は11月の第一週の月曜日の翌日の火曜日と決められており、今年は8日に投開票が実施されます。

大統領の政治に対する採点という意味合いをもつ中間選挙では上院(議席数100)の分の1と下院(議席数435)のすべてが改選されます。 

アメリカの政治サイトによれば、1028日時点では、上院は改選・非改選あわせて与党・民主党の予想議席数が46議席、野党・共和党が48議席、拮抗が6議席と、やや野党の共和党が有利。一方、下院の予想は民主党が173議席、共和党が225議席、拮抗が37議席と、共和党が圧倒的有利の予想です。

つまり、状況によっては上下院ともに野党の共和党が過半数の議席を獲得する可能性もあるという予想で、この場合、民主党のバイデン大統領と共和党が多数派の上下院で大きなねじれが生じることとなり、政策運営がこれまで以上に進みにくくなると受け止められる可能性があります。

世界的なインフレの進行やガソリン価格の上昇などによる生活への影響で、バイデン大統領の支持率は昨年から低下が続いてきました。ただ、足元ではインフレ抑制法の成立や共和党が推進する中絶禁止法案への反発、ガソリン価格上昇の一服でやや支持率は回復しています。

アメリカの政治の行方は日本だけでなく世界全体にも影響を及ぼしますので、結果に注目です。

年末商戦スタート。勝負は金曜日(25日)

また、11月はアメリカで年末商戦が本格化する月です。インフレが加速する中での消費の動向に注目が集まります。なかでも、ブラックフライデー11月の第4金曜日)が一年を通じてもっとも大きなセール日となり、今年は1125日がこれに当たります。

1027日にEC大手のアマゾン・ドット・コムが発表した1012月期の業績見通しは市場予想を下回り、株価は大幅安となりました。インフレやマクロ経済の不透明感の中で消費者は支出を抑えている、との会社側のコメントもあり、消費動向に陰りが出ています。

アメリカの消費が大きく落ち込むと景気減速のリスクが意識され、アメリカ株、さらには日本株にとっても弱気材料となるため、年末商戦の結果も年末の相場を左右するファクターとなりそうです。

年末相場に向け主力大型株に注目

日経平均株価の過去データをもとに、11月相場の特徴をいくつかご紹介しました。 

10月の日米の株式相場では、FRB12月のFOMC(連邦公開市場委員会)に向けて利上げのペースをトーンダウンさせるのではないか、との期待で買い戻されました。

また、日米企業の決算については、個別企業では明暗が分かれていますが、全体としては「想定していたほど悪くない」と受け止められる企業も出てきており、戻り基調が続いています。

市場参加者の間では「中間選挙の翌年は株価が上昇しやすい」とのアノマリー(経験則)もあります。政権が支持率てこ入れのため新たな経済対策を打ち出すとの期待が持たれる、といった理由によるものですが、果たして今回はどうなるでしょうか。

日本の株式市場は、インバウンド関連銘柄に一部、利益確定の売りが出ているものの、全国旅行支援などの活性化策を受け、ホテルやレジャー施設の予約は活況で、株価は先高感が続いています。相場の戻りを受けて売られていた半導体関連銘柄などにも押し目買いが入っています。

こうした中で、トヨタ自動車<7203>やホンダ<7267>、ソニーグループ<6758>、村田製作所<6981>など「出遅れの主力大型株」が復調するかどうかが、年末相場に向けて注目となりそうです。

[執筆者]佐々木達也
佐々木達也
[ささき・たつや]金融機関で債券畑を経験後、証券アナリストとして株式の調査に携わる。市場動向や株式を中心としたリサーチやレポート執筆などを業務としている。ファイナンシャルプランナー資格も取得し、現在はライターとしても活動中。株式個別銘柄、市況など個人向けのテーマを中心にわかりやすさを心がけた記事を執筆。
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