株価が「10倍」になる株に出会う、たったひとつの方法

岡田禎子
2021年9月14日 8時00分

儲かる株を見つける「物差し」

「株価が2倍3倍と伸びていくような、格別に儲かる株が欲しい!」

そう意気込んで株式投資を始めたのは、とある株初心者くん。いま話題の株や、決算が良かった株、チャートの形が抜群の株など、あれこれと手を尽くして研究してみたものの、結果はパッとしません。

一方で、この道20年の大ベテランさんは、またひとつテンバガー(株価が10倍になること)を発掘。人生の特等席から余裕の微笑みを浮かべて、のんびりと相場を眺めています。

「銘柄選びにあれこれと手を出すのは、株式相場を知らない奴のすることだ。
 格別に儲かる株を見つけるには、たったひとつ、『ある物差し』を使えばいいのさ」

さて、その物差しとは何でしょうか? 先に答えを言ってしまうと、それは「時価総額」です。

時価総額とは?

株式投資は比較と選択のゲームであり、投資家は、他と比べて最も魅力的な銘柄を選択しようとするものです。

銘柄のどこを比較して、何を拠り所として選択するか。投資家それぞれの考え方やスタイルがあり、比較するポイントも選択の決定打も、それこそ投資家の数だけあると言っても過言ではありません。

ただ、特に株を始めたばかりの初心者からすれば、「シンプルに銘柄(企業)同士を比べたい!」と思うかもしれません。

そんなときに便利に使える物差しとなるのが「時価総額」です。

時価総額とは、投資家が評価したその企業の価値を表す指標です。極端に言えば、その企業を丸ごと手に入れたい場合いくら用意すればいいのか、ということ。

時価総額は、企業が実際に発行した株式の総数に現在株価をかけ合わせることで算出されます。

  • 時価総額(円)=発行済み株式総数×株価

例えば、2021年9月13日時点のソニーグループ<6758(旧・ソニー)>の発行済み株式総数は1,261,058,781株、株価は12,235円ですので、時価総額は約15兆円となります。

  • 1,261,058,781株×12,235円=15,429,054,185,535円(15兆4290億5418万5535円)

つまり、15.5兆円ほどあればソニーのすべてを買収できる、というわけです(実際には、そう事は簡単ではありませんが)。

〈参考記事〉改めて考える時価総額 その意味と銘柄選びにうまく活用する方法とは

時価総額を物差しとするメリット

時価総額を物差しとして使えば、企業と企業を簡単に比較することができるようになります。

・どんな国の企業でも同列に比較できる

まず、世界中のどの国の企業であっても同じテーブルに載せて比較することができる、という点が挙げられます。

例えば、日本のトヨタ自動車7203>とアメリカのアップル<AAPL>は、どちらの会社のほうが大きいのか?という疑問が湧いたとき、時価総額という数値を用いれば簡単に答えが出せます。

トヨタ自動車の時価総額は約33兆円(2021年9月13日時点)。2位以下を大きく引き離して、「日本でいちばん大きい企業」の地位を確固たるものにしています。

それに対して、アップルの時価総額は約2.5兆ドル(同9月10日時点)。日本円に換算すると、約275兆円です。

  • トヨタ自動車……約32兆円
  • アップル…………約275兆円(約2.5兆ドル)

こうして時価総額で比較してみれば一目瞭然。「アップルのほうが圧倒的に大きい」ことがすぐにわかります。

・同業他社との比較も簡単できる

また、時価総額という物差しを用いることで、同じ業界内の比較も簡単にできます。

例えば商社株。2020年6月には、常に業界トップだった三菱商事8058>の時価総額を、ついに伊藤忠商事8001>が抜いて首位に躍り出たことがメディアで大きく取り上げられました。

これは、商社の主な収益源である資源価格が下落する中、生活関連ビジネスに強いとされる伊藤忠商事に対する投資家の評価が、他社と比べて高くなったからです。それによって株価が伸び、それをもとに算出される時価総額も増したのです。

このように、同業種内でなぜ時価総額の差が出たのかを考えることで、企業や業界への理解をより深めることもできるようになります。

なお、時価総額のデータは、ヤフーファイナンスなどの情報サイトでリアルタイムの株価変動にあわせて更新されていますので、いちいち計算する必要はありませんよ。

(参照)時価総額上位:株式ランキング – Yahoo!ファイナンス

時価総額でテンバガーを見つける

時価総額を用いることで企業を比較できることはわかりました。では、どうすれば冒頭のベテラン投資家のように「テンバガー」を見つけられるのでしょうか? 10倍とまではいかなくても、株価が2倍3倍と成長する株を見つけるには、時価総額をどう使えばいいのでしょうか?

それを考えるには、時価総額というものについて、もう少し深掘り必要があります(以下、時価総額はすべて2021年9月13日現在)。

テンバガーになりやすいのはどんな株か

例えば、時価総額1兆円のA社と時価総額100億円のB社があるとします。どちらの株が10倍になりやすいと思いますか?

  • A社=時価総額1兆円
  • B社=時価総額100億円

これらの企業がテンバガー(10倍株)になるということは、A社であれば、1兆円の10倍で時価総額が10兆円になることを意味します。

時価総額が1兆円の企業とは、日本航空<9201>や三菱重工業<7011>の規模に相当します。そんな大会社が、これからさらに売上や利益を大きく伸ばして10倍もの成長を遂げるのは、かなりハードルが高いことがわかるはずです。

ちなみに、現在の日本で時価総額が10兆円を超えているのは、わずか6社しかありません。すでに登場したトヨタ自動車とソニーグループのほかには、キーエンス<6861>、NTTこと日本電信電話<9432>、ソフトバンクグループ<9984>、そして、リクルートホールディングス<6098>です。

テンバガーの8割は時価総額100億円以下

それに対して時価総額が100億円の企業というのは、テンバガーで10倍になったとしても、まだ時価総額1000億円。1兆円の企業から見れば10分の1の規模です。

現在の規模(時価総額)が小さい企業は、サービスや商品が社会に認められて成長軌道に乗れば、株価もぐんぐん成長し、あっと言う間に2倍3倍、そして10倍へと拡大していくことも難しくありません。

加えて、時価総額が「100億円」や「300億円」といった節目となる水準に達すると、さらに大きくジャンプアップする可能性があります。それまで時価総額の小ささゆえに社内規定に縛られて買うことができなかった機関投資家なども、買いに入りやすくなるからです。

つまり、格別に大きな利益をもたらす可能性があるのは時価総額の小さい株、ということです。

実際、リーマンショック以降に株価が10倍になった株(テンバガー)のうち、実に8割は時価総額が100億円以下の株でした。

・ケアネット<2150

医療者向けウェブサイトを運営するケアネット2150>。医薬営業支援サービスなども手がけており、医療業界のDX銘柄として注目を集めています。

特に、コロナ禍で製薬会社のDX化が加速したことで、医薬営業支援サービスが好調に推移。2020年初め頃に700円台だった株価は、12月には6420円まで駆け上がり、2021年に入って5月末には8,000円を突破。短期間でテンバガー(10倍株)を達成しました。

時価総額80億円の頃にケアネット株を手に入れていたら、夢のテンバガーです。

それでは、時価総額はどうなっているでしょうか?

2020年初め、ケアネットの時価総額は80億円程度でしたが、4月に節目となる100億円を突破。それを境に出来高(売買が成立した株数)も急激に増加し始め、月には次なる節目の300億円に達し、2021年5月には800億円を超えました。

注目したいポイントは、上でも説明したように、100億円、300億円というの節目で出来高が増え、それによって時価総額もジャンプアップしていること。このような「節目」は様々なところにありますので、常に意識しておくことが勝てるコツになります。

大化けする小型株はどこにある?

株価が大きく成長する株価を見つけるには、時価総額が大きな株(=大型株)ではなく、時価総額の小さな株(小型株)を探せばいい──では、どこを探せば時価総額が小さく、今後成長しそうな株に出会えるのでしょうか?

時価総額の小さな株は、主に新興市場で売買されています。新興市場とは、若くて成長性の高い企業が多く上場している「東証マザーズ」や「ジャスダック」を指します。

そもそも株価が何倍にも成長するということは、過去や現在の実力よりも、将来的に期待できるような革新的なモノ・サービスを提供する可能性を秘めているからです。その可能性への期待が、株価を大きく押し上げる原動力となるのです。

日本の主市場である東証1部にも、これから成長が期待される新興企業が上場することありますが、そうした株はすでに時価総額も大きくなっていることが多く、また、機関投資家や海外投資家など圧倒的な資金力をもつ相手と熾烈な戦いを繰り広げなければいけません。

それに対して、個人投資家が主な市場参加者である新興市場は、格別に大きな利益をもたらす可能性のある株を発掘するのに最適な場と言えます。

未来の大谷翔平を探せ!

米メジャーリーグのスカウトマンたちは、地方から地方へと全米中を旅し、さらに海を越えて、将来のメジャーリーガーとなる逸材を求めてまわり、才能溢れる価値ある若手を発掘します。

株式市場におけるスカウトマンは、他ならぬ投資家です。未来のアップルや第2のソニーグループなど、いつの日か大金の実る木を誰もが常に探しています。確実に自分の利益にするには、まだライバルが目をつけていない小さな苗のうちに手に入れなくてはなりません。

自分が目をつけた株が本当に大きく成長してくれるのか……。テンバガーのように大きく成長する株を狙うことは、リターンが大きい分、見込み違いで失敗したときのリスクも大きくなります。それを理解し、リスクを負う覚悟を持つことが必要です。

(とびきりの才能ある選手を発掘するのは)野菜を買うほど簡単じゃない」
 ──映画「人生の特等席」(2012年・アメリカ)より、メジャーリーグのスカウトマンの台詞

それでも、時価総額という物差しを使うことで、大型株では難しい数か月で株価が2倍、3倍、時には10倍にすらなる可能性のある銘柄に出会うことができます。いずれは東証1部に昇格し、大谷選手のように大きく羽ばたいてくれるかもしれません。

個人投資家にそんな夢を抱かせてくれるのも、株式市場の魅力のひとつと言えるのではないでしょうか。

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[執筆者]岡田禎子
岡田禎子
[おかだ・さちこ]証券会社、資産運用会社を経て、ファイナンシャル・プランナーとして独立。資産運用の観点から「投資は面白い」をモットーに、投資の素晴らしさ、楽しさを一人でも多くの方に伝えていけるよう活動中。個人投資家としては20年以上の経験があり、特に個別株投資については特別な思い入れがある。さまざまなメディアに執筆するほか、セミナー講師も務める。テレビ東京系列ドラマ「インベスターZ」の脚本協力も務める。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、ファイナンシャル・プランナー(CFP)
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