知らなければ損? ROE(株主資本利益率)からわかる優良銘柄
優良銘柄を探す指標「ROE」とは
株式投資で株価が上昇し続ける優良銘柄を探したい。これは、株式投資を行う人であれば誰でも考える当然の思い(願望)ではないでしょうか。
欲を言えば、ファーストリテイリングやヤフー、楽天といった株価が数倍から数十倍にまで大化けした銘柄を探せないものか? と思っている方も多いでしょう。こうした銘柄をいかに見つけ出すかは、株式投資の醍醐味ですね。
そうはいっても、どこを見て判断すればいいのかわからない。そんな方にまず見ていただきたい投資指標が「ROE(株主資本利益率)」です。
ROEの意味を知り、どのように捉えればいいのかがわかるようになれば、優良銘柄を探す際の重要な切り口のひとつとなります。今回は、このROEについて解説していきたいと思います。
なぜROEなのか?
なぜROEが、優良銘柄を見つけ出すために有効な指標なのか? 答えは、外国人投資家が投資する際にROEを重要な指標(判断基準)としているからです。
ご存じの方も多いかもしれませんが、日本の株式市場における外国人投資家の存在は非常に大きく、売買代金では60%ほどを占めています(ここでは詳しい説明は省きますが、外国人投資家とは海外の年金基金や投資信託、ヘッジファンドといった海外在住の投資家を指します)。
つまり、日本の株式市場に影響力のある外国人投資家が投資する株を探すということは、「株価が上昇し続ける優良株」を探すことにつながる第一歩なのです。
いかがでしょうか? ROEについて知りたくなってきましたか? 次は、ROEの意味を理解していきましょう。
ROEは収益性を見る投資指標
ROEは「Return On Equity」の略称で、日本語では株主資本(自己資本)利益率と言います。主に、企業の収益性を見る投資指標として利用されています。
まずはROEの計算式を示しましょう。
この式は、株主が出したお金(株主資本)に対してどれぐらいの利益(当期純利益)が得られたのか、その割合を示しています。違った見方をすると、その企業の経営者が株主に対してどれぐらい責任を果たしたのか、その度合いと受け取ることもできます。
【参考記事】PER・PBRの裏に隠された真実…… ROEとの密かな三角関係とは?
株主にとってみれば、自分が投資したお金が効率よく使われ、利益となっていることが重要です。なぜなら、その利益は「配当金」として還元される、もしくは「利益を上げる優良企業である」と認識されて株価が上がる、どちらにせよ株主にとって投資リターンが生まれる要因となるからです。
具体的な例で考えてみましょう。
- A社:株主資本 100円 当期純利益10円 ROE 10%
- B社:株主資本 50円 当期純利益10円 ROE 20%
A社はROE10%。毎年10円の利益を生むことによって、株主資本である100円を10年かけて稼ぐことができます。一方のB社は、当期純利益は同じ10円ですが、株主資本が50円なので、半分の5年間で株主資本の50円を稼ぐことができます。
さて、どちらが効率的な経営をしているでしょうか? おわかりですねよ。もちろんB社です。
投資家というのは、売上や利益だけではなく「どれだけ効率的にビジネスをしているか」という観点で企業を見ています。それを最もわかりやすく、教えてくれるのがこのROEなのです。
では、ROEがどのくらいだと優良企業なのでしょうか?
優良企業のROEの基準
優良企業を表現するひとつの参考数値として、「ROEが10%以上」と言われます。
先ほども述べたように、このROEを重要な投資指標として捉える外国人投資家が多く、その期待に応える目安となっているのが「10%以上」とされるケースが多いからです。
つまり、「ROE10%以上」は彼らの目安であり、世界標準なのです。世界で打ち勝つ企業に成長するには、このハードルを越える必要があります(世界の投資家から投資対象となる最低条件と言えるかもしれません)。
最近では経営者が目標ROEを掲げることもあり、投資家・経営者ともに重要指標という認識が強くなってきています。
日本の新しい株価指数として「JPX日経インデックス400」が2014年に誕生しました。この採用基準に「ROE」が含まれているのも「世界基準で戦える日本代表企業を選ぶんだ」という日本の取引所の思いが伝わってきます。
ROEの注意点
最後に、ROEを見る際の注意点をあげておきましょう。先ほど紹介した計算式を見直していただきたいのですが、ROEは以下の条件では大きい数値になることがあります。
- 「当期純利益」が大きい
- 「株主資本」が小さい
したがって、「株主資本」が小さい企業が大きな「利益」を生んだ場合、ROEは非常に高くなります。ここで注意していただきたいのが借金(負債)です。借金は「株主資本」には入らないため、多くの借金をして利益を上げた結果、高いROEになるケースもあるということを理解しておきましょう。
【参考記事】急増する「自社株買い」 個人投資家のとるべき戦略を3つのポイントから解説
しかし、決して、借金自体が悪いということではありません。資金調達には様々な方法があり、どのような方法をとるかということも企業の重要な経営判断となります。
もし「負債」も含めて企業分析したい方は、ROA(総資産利益率)を使ってみると、より多面的に企業を分析することができます。
割安株投資の罠
「よし、ROEについてよくわかった。早速、ROEを活用して割安な銘柄に投資しよう」と思った方もいるでしょう。でも、よく考えてください。
ROEやPER、PBRなど、株式投資において基本的なこれらの分析指標を使うだけで利益が出るならば、勤勉と言われる日本の個人投資家はもっと利益が出てもいいと思いませんか? でも、実際にはそんなことありませんよね。
割安株(バリュー株)投資には重要な前提(考え方)があります。それは「株価は、短期では企業価値と乖離するが、長期では一致する」ということです。
わかりやすく表現するならば、「短期的には株価(企業価値)は上下するものの、長期的には適正な価格に落ち着く」という考え方です。つまり、この考え方を前提に割安株(適正な株価ではないと思われる株)を買って保有し続ければ、いずれは株価が上がり、利益が出るあろうと考えて投資するわけです。
これが、割安株投資の大きな落とし穴(罠)なのです。なぜかというと、答えはシンプルです。「長期間(たとえば20年間)、割安のままの銘柄」が数多く存在するからです。
【参考記事】鵜呑み厳禁! 地味だけど堅実と言われる「割安株投資」の真実
株式市場には多くの「思い」が存在します。
- 今日、利益をあげたい
- 今月、利益をあげたい
- 今年、利益をあげたい
- 2年~3年間で利益をあげたい
- 5年~10年間で銀行の定期預金よりは少し利益をあげたい
- 現金以外で資産を保有しなければならない
- 資産の25%は株式を保有しなければならない
- 月間の平均出来高が100万株以上なければならない
- 東証一部上場企業でなければならない
- 一定の相場急落時(災害やテロなど含む)は保有株を売却しなければならない
などなど、個人・法人問わず多くの人の「思い」が株式市場を動かします(上記のうち「ねばならない」は法人部門でのルールである場合があります)。
そのなかで、日本国内では4000弱の銘柄が上場しており、必ずしもある指標(今回で言えば「ROE」)から見て「割安」だからという理由だけで売買してしまうことは、思わぬリスクになる(利益にならない、値が動かない等)ことがあります(「失われた20年」とされる期間の日本株の株価推移を見れば一目瞭然です)。
本記事をご覧いただいた皆様は、どうぞ、そのようなことのないように。
くれぐれも罠にはご用心
外国人投資家も注目する世界共通の分析指標であるROE。これを正しく理解して、みんなが注目する優良銘柄を探す最初の検索(足切り)条件としてみてはいかがでしょうか?
単に10%以上の銘柄を探すということではなく、指標の意味を理解し、過去と同業種間での比較をすることが重要です。「割安株投資の罠」に引っかからないようにご注意ください。