1社当たり0.6円! 投資家のバイブル『会社四季報』の5つのチェックポイント
投資家のバイブル『会社四季報』
上場企業3600社の情報が、たった2060円(税込)で買えます。しかも、「週刊東洋経済」でおなじみの東洋経済新報社の記者が取材したコメントと業績予想までついて、このお値段。あまりの分厚さ(辞書レベル)に圧倒されがちですが、ポイントさえ押さえてしまえば、コストパフォーマンスと情報の質は抜群です。
株式投資に必要な情報が凝縮されている『会社四季報』について、5つのポイントに絞ってお伝えします。まずはここからスタートしてみてください。四季報が手放せなくなるかもしれません。
何が書いてあるの? 四季報の構成を知ろう
四季報は年4回、3月、6月、9月、12月の中旬に発行されます。毎号新しいものを買い、前回、前々回の内容との変化をチェックすることが基本ですが、そこまで手が回らない場合は、直近の3月期末決算が収録される6月発行の3集夏号をチェックするのが良いでしょう。
とは言え、刻々と変わる株式市場をしっかりと捉えているのが会社四季報です。定期的に目を通し、今を理解すると共に、変化を確認しましょう。
四季報には企業の業績などから判断するファンダメンタル分析について非常に役立つ情報が詰まっています。膨大な情報を分かりやすく整然と並べた四季報ですが、「私は四季報しか株式投資をする上で参考にしておりません」という有名な投資家の方がいるくらい内容が充実しています。
まずは四季報の構成から見てみましょう。
1ページの半分を使い、社名や本社、事業所、従業員数などに基本情報、記事、株主構成や役員、財務、資本移動、業績などが整然とコンパクトにまとまっています。またページ上部の欄外にはチャートと指標があります。
この構成を踏まえた上で、5つのチェックポイントへ進みましょう。
【ポイント1】基本情報からみえてくるもの
四季報チェックポイントその1は社名と本社の欄です。
まずは株式投資をする場合に欠かせない4ケタの証券コードと社名をチェックしましょう。株式投資では基本的に4ケタの証券コードで銘柄を認識しますので、ここが一番重要なところです。
その隣の【特色】の欄にはその企業の業態などが簡潔に書かれています。ひと目でその企業の事業や業界での位置が分かります。
更にその横に【事業】の欄に注目して下さい。その企業の部門別売上構成比率が書かれています。
例:【連結事業】電子部品50(4)、情報機器41(3)、他2(3)【海外】60
この場合、売上比率に占める電子部品が50%、情報機器が41%、その他2%となります。またカッコ内は売上高利益率となっており、電子部品で売上高利益率が4%となります。続く【海外】は海外売上比率で、例1で言うと、売上の60%を海外で稼いでいるということになります。更に下に目を落とすと本社や事業所数、従業員数などが分かります。
いずれもその企業がどのような事業を行い、何で利益を得て、どのようなカラーを持っているのかがひと目で分かります。特定の事業での売上比率が高ければ、その事業が世の流れに乗っていれば成長期待が高い反面、依存度の高い事業が不振となれば企業が傾きやすい、と言うことが分かります。また売上比率と売上高利益率から何で稼いでいるのかが分かります。
社名から連想していた事業、創業時の事業とは違う事業で利益を稼いでいる企業も多く、何で儲けているのかいないのか、は投資対象を絞る場合に重要な情報となります。また海外での売上比率が高ければ為替に反応しやすい、海外での売上がなければ国内景気に左右されるなど、企業のカラーが明確となります。
【ポイント2】記事
ポイントの2つ目は記事です。これは四季報の記者による業績予想などを含めたコメントです。この欄が四季報の肝と言っても良いでしょう。
特に見出しで触れられる【大幅増益】【黒字転換】や【減益】【下方修正】などの内容、新規事業への取り組み、事業展開など、業績に直結するものだけに、しっかり読み込むことが投資の大きな判断材料となります。
【ポイント3】業績欄
ポイントの3つ目は業績欄です。これまでの実績の数字と共に今期、来期の四季報による業績予想が書かれています。
まずは売上、本業の利益である営業利益、そして最終的な利益、1株利益がそれぞれ伸びていること、あるいは回復しているかどうか確認しましょう。
それを踏まえた上で、来期以降に成長が見られることが重要です。継続的な安定成長の銘柄を狙うのか、業績が劇的に回復する銘柄を狙うのか、それぞれの狙い目によって業績の実績と今期以降の成長期待を読みましょう。
ここにしっかり目を通すことで、個別銘柄の判断と共に、それぞれの業界の動向、また株式市場全般にまで知識を広げることが出来ます。ここは四季報の肝であり重要なチェックポイントです。
また、会社が発表する業績予想ではなく、四季報編集部が予想する2期分の予想が見られるということにこの四季報の懐の深さがあります。(同様なもので日経会社情報がありますが、こちらは上場企業が発表する業績予想のみの掲載です)
【ポイント4】指標面から四季報を活用
チェックポイントその4は配当欄です。
毎年業績の増減に関わらず、同額の配当を続けている企業は、「配当性向(利益のどの程度を配当に回すかという指標)」が低いケースが多いのですが、安定配当に対する安心感が増すため長期保有の投資家にとって人気となることがあります。
しかし、何と言っても注目は増配を行う企業です。特に継続的に増配を続けている企業は、業績が拡大しているという見方と共に、積極的な株主還元を行っている点で評価できます。
配当欄には配当利回りも書かれており、これが2%を超えてくると配当面からの投資対象としての妙味が増し個人投資家に人気がでてきます。
また、四季報の巻末には株主優待も一覧となって掲載されています。株主優待には記念品的なものもありますが、金権や割引券など、現金に近いものも多くあります。
配当欄に書かれている配当額に加え、株主優待による上乗せ分も含めた実質配当利回りを計算して、更に投資妙味の高い銘柄を狙う方法もひとつです。
【ポイント5】チャート及び指標欄
ポイントの5つ目はチャート及び指標欄です。ページ上部に2銘柄分並んで、チャートと各種指標が出ています。
チャートは約3年分が月足で記載されています。これで大局的な株価の動きをチェックしましょう。買いの狙いは当然上昇トレンドにある銘柄です。また、下ヒゲや上ヒゲの長いローソク足、十字線などはいずれも転換点に出るサインですので見つかった場合は更にチャート分析を進めてみることも有効です。
横にある指標も非常に重要な投資判断材料となります(詳しくは「たったふたつだけ。ローソク足の簡単な見方<実践編>」を参照)。
予想のPERから割安、割高を探ることは当然ですが、その下の実績にも注目です。実績PERの高値平均、安値平均は3期分の株価と1株利益から算出したものです。つまり、過去3期、PERは高値と安値平均の間を動いたということになります。現在の株価と来期予想1株利益から算出したPERがこの平均のどこに位置するかにより、簡易的に株価の割安・割高をすぐに判断することが出来ます。
PERの高値平均に近ければ割高、安値平均に近ければ割安ということになります。当然ながら割安であれば買い、割高であれば売り、という投資判断材料のひとつになります。新たに買う時だけでなく、持ち株の売り判断の材料にもなります。
投資家のバイブル「会社四季報」を使いこなす
会社四季報を読み解く5つのチェックポイントいかがだったでしょうか。紹介したポイントはあくまで基礎です。四季報にはまだまだ多くの情報と見方が存在します。とはいえ、まずはこの基本の5ポイントからスタートしてみていただければと思います。