次なる大化け銘柄はどこに? 上昇トレンドを見抜く鍵は「新高値」

岡田禎子
2020年9月28日 8時00分

《株式投資では「株価が安いときに買って、高くなったら売る」のが〝テッパン〟ですが、「安い」ばかりを見ていては上がる株は見つけられません。実は「高い」を狙うことで、大きな利益につながる可能性が高まるのです。注目すべき「新高値更新銘柄」とは?》

「新高値」で上昇トレンドを見極める

株式投資で大きな利益を狙うには、強い「上昇トレンド」に乗ることが大切です。強い上昇トレンドに乗った株は投資家の夢を乗せて、株式相場を駆け上がります。しかし、約3700社の上場企業の中からどうやって上昇トレンドを見つければいいでしょうか? その鍵となるのが「新高値」です。

「新高値」とは?

新高値」とは株価が上昇し、過去の最高値を超えた(抜いた)ときの価格のことを言います。

過去一定期間における値段の最高値を更新したときに使われ、比較する期間によって呼び名が変わります。取引所に上場したとき以来の高値は「上場来高値」、その年の高値は「年初来高値」、昨年からの高値は「昨年来高値」と呼びます。

それ以外にも、数年ぶり、あるいは十数年ぶりに新高値を更新したような場合には、「〇年来高値」といった言い方をすることもあります。特に「10年来高値」は、それだけの時を経て株価が回復したということで、いわば〝二度目の春〟に対する期待から注目されやすくなります。

ちなみに、日本の株式市場では、1月から3月にかけては、数える日数が少ないため、前年の1月以降の高値を更新したときに「昨年来高値」を使います。

新高値更新銘柄の“勝ち組”要素

新高値を更新した直後に買えば、低いリスクで大きな利益が狙える」というのは、売買におけるひとつのセオリーです。なぜなら新高値更新銘柄は、新高値を更新できない株に比べて、その後の株価が大きく飛躍する可能性が期待できるからです。

新高値更新銘柄は需給バランスがいい

株価は、買う人(需要)が多ければ上がり、売る人(供給)が多ければ下がります。需要と供給のパワーバランスで株価が決定する仕組みを株の「需給関係」といい、買いが多いと「需給関係が良い」、売りが多いと「需給関係が悪い」といいます。

新高値更新銘柄は、需給関係が良いと考えられています。その理由のひとつは、「戻り待ちの売りが出ない」から。「戻り待ちの売り」とは、別名「やれやれの売り」。

過去に高い株価で買った投資家は、損を抱えたまま我慢して持ち続けています。その株価が買値近くまで戻ってくれば、「やれやれ、やっと戻ったか」といって手放そうとする投資家が、わらわらと出てきます。そして、そうした売りをこなさなければ、株価はなかなか上がることができません。

株式相場では需給関係は何よりも優先されるため、新高値を更新できない銘柄は、過去に付けた高値が重しとなって、そこから株価が大きく上昇するのは難しい状態となります。

新高値更新で株価は一気に上昇する

それに対して新高値を更新した銘柄は、その株を持っている投資家のほぼ全員に含み益が出ている状態です。特に上場来高値を更新した場合は、すべての投資家がプラスになっているということ。

売りたい投資家はすでに売ってしまい、残っているのは、利益確定売りのタイミングを待つニコニコ顔の投資家ばかり。売りが少なく買いは多い、というように需給関係が改善されて、株価が一気に上昇しやすくなるのです。

つまり、新高値を更新した銘柄は、更新できない銘柄に比べて、新しいステージ、新しいトレンドへと一気にブレイクしやすい株だといえるのです。

新高値更新は“大化け”のサイン

一般的に、株価と業績は連動すると考えられています。しかしながら、株式相場は、そこそこ業績が良いからと言って簡単に新高値を更新させてくれるような甘いフィールドではありません。

新高値更新とは、これまでにつけたことのないような高い株価がつくということ。そんな新高値更新銘柄には、企業にとって業績面での大きな「変化」があるはずです。

企業の「変化」が投資家を引き寄せる

投資家は、企業の変化に対して鋭い嗅覚を持っています。もしも以前とは違う高利益な体質に生まれ変わった企業があれば、放っておくはずがありません。徐々に人気が出て、やがて新高値を更新するというわけです。

次世代通信規格「5G」の通信計測器というニッチな市場ながら世界トップクラスとなったアンリツ<6754>や、海賊サイト閉鎖で利用者が急増したイーブックイニシアティブジャパン<3658>は、投資家の大好物である「変化」によって実際に新高値を更新した銘柄です。

変化の大きさによっては、株価は2倍、3倍、ことによっては10倍に急騰することもあります。

また、新高値更新というニュースが出ることで、さらに多くの投資家に注目されるようになります。注目銘柄になれば、短期筋の資金も入りやすくなり、さらに人気銘柄となって株価は押し上げられます。

新高値を更新するということは、その銘柄が今後大化けするひとつのサインであり、人気者となった時点で買えば、それは最も効率の良い投資となるのです。

・ジャストシステム<4686>

「ATOK」「一太郎」といった文章作成ソフトなどを開発するジャストシステム<4686>は、2012年末に参入した小中学生向けの通信教育「スマイルゼミ」が収益の柱へと成長しました。

2009年3月期までは4期連続赤字でしたが、この年に出資を受けたキーエンス<6861>による改革が徐々に浸透して、高利益体質に変化。2019年8月8日、ついに約14年ぶりとなる新高値を更新しました。企業の変化が実になり、そこに投資家が引き寄せられた証しとしての新高値更新と言えるでしょう。

2020年3月期の経常利益は前期比70.3%増の131億円と、2期連続で過去最高益を更新。コロナ禍が追い風となる教育ICT関連銘柄としても注目は熱く、株価はその後も上昇は続けて、2020年7月31日には8,490円をつけています。

高値掴みには要注意

新高値更新銘柄を狙う際に特に重要なのは、新高値を更新した「直後」に乗る(買う)ことです。しかし、それは同時に「高値掴み」というリスクに常にさらされていることを忘れてはいけません。

株式市場は常に先を見るので、話題性だけでも株価は大きく上がります。そのような上昇は短命で終わり、新高値を更新した直後に下落する「ダマシ」となることも少なくありません。

新高値を更新中の銘柄を見つけても、資金管理や損切りの徹底が重要であることは言うまでもありません。また、しばらく保有する前提で買うのであれば、話題性だけ上がっていないか業績の伸びなどもあわせてチェックすることで、さらなる勝率アップを見込めるでしょう。

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[執筆者]岡田禎子
岡田禎子
[おかだ・さちこ]証券会社、資産運用会社を経て、ファイナンシャル・プランナーとして独立。資産運用の観点から「投資は面白い」をモットーに、投資の素晴らしさ、楽しさを一人でも多くの方に伝えていけるよう活動中。個人投資家としては20年以上の経験があり、特に個別株投資については特別な思い入れがある。さまざまなメディアに執筆するほか、セミナー講師も務める。テレビ東京系列ドラマ「インベスターZ」の脚本協力も務める。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、ファイナンシャル・プランナー(CFP)
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