その材料、オイシイのはいつまで? 材料の賞味期限が株価に与える影響とは

石津大希 2020/10/21

《株価の変動に影響を与えるできごとを「材料」といいます。材料のなかには、短期的な影響で終わるものと、長きにわたって影響を与え続けるものがあります。影響力が続く期間、すなわち「材料の賞味期限」を理解することで、目先の株価の乱高下に惑わされずに済むようになるかもしれません》

良い材料でも株価が上がるとは限らない

企業は日々、さまざまなリリースを発表する。新商品や新サービス、他社との提携、決算などの業績……。それら多くの材料をもとに、投資家たちは「どの銘柄をいつ買おうか、売ろうか」を考える。

しかし、「これはいい材料だ! 株価が上がるに違いない!」と思って買ったら、あっという間にしぼんでしまい、拍子抜けしてしまった経験はないだろうか。このような現象が起きる理由は、株式市場では材料の中身と株価の動きが必ずしもリンクしないからだ。

ならば何を手がかりにしたらいいのか、と思うかもしれない。そこで、「材料の賞味期限」を見極めることの重要性を強調したい。

「材料の賞味期限」とは?

「材料の賞味期限」とは、平たくいえば「その材料がどの程度の期間、企業の業績に影響を与えそうか」ということだ。注意してほしいのは、「株価」に対する影響ではなく「業績」への影響という点だ。

企業が発表するリリースの中には、短い期間だけ業績に影響を与えそうな内容と、長い期間にわたって業績に寄与しそうな材料がある。

  • 賞味期限が短そうな材料……不動産を売ったら利益が出た、災害によって工場が一時ストップした、消費増税前の駆け込み需要で売上が一時的に急増した、など
  • 賞味期限が長そうな材料……数億円で工場を建てた、新事業開発に向け大手と提携した、業務フローを見直したら利益率が上がった、新技術に関連した特許を取得した、など

ごく素直に考えれば、賞味期限が短そうな材料は株価に短期的・一時的な影響を与え、一方、賞味期限が長そうであれば株価への影響も長期間にわたるように思える。だが、必ずしもそうとは限らない。

賞味期限が長い材料で株価が急騰&急落!

・リファインバース<6531>

マザーズに上場し、産業廃棄物処理と再生樹脂製造販売を手掛けるリファインバース<6531>は2020年8月20日、第三者割当増資を通じて三菱ケミカル(三菱ケミカルホールディングス<4188>の子会社)から約2億円の出資を受けると発表した。

リファインバースは、この資金によって設備投資を行う計画だ。併せて、三菱ケミカルから廃プラスチックの回収業務も受託するという。上の材料の例に照らし合わせると、これは長期的業績に影響を与える「賞味期限が長そうな材料」と言えるだろう。

しかし、株価は少し違和感のある動きを見せた。材料発表前の850円前後から、一時は2,500円を上回る水準にまで急騰。しかしそれ以降は買いは続かず、すぐにしぼんだ後は1,500円付近で推移している。

シンプルだが意義深い材料なのに……?

この材料は、一言で片づけてしまえば「設備投資のための資金調達と事業の受注」というシンプルなものだが、その意義は深い。

まず、小規模なリファインバースが大手である三菱ケミカルから業務を受託することで、業界内での信用向上とそれに伴う営業力強化が期待できる。

また、資本力のある三菱ケミカルから資金を調達することは、設備投資を行うことで増収と利益率アップが期待できるほか、負債の調達もしやすくなり、さらなる投資もしやすくなる。

それなのに、なぜ株価はすぐにしぼんでしまったのだろうか? リファインバースの株価が急失速したのは、短期筋の動きが背景にあると考えられる。

賞味期限前に材料が消費される理由

株式市場のプレーヤーの中には、長期での値上がりを期待する投資家のほかに、短期的な取引を繰り返すことで利益を得る短期トレーダーも数多くいる。彼らは、その企業の業績が伸びそうかどうかという視点ではなく、株価の動きを見て、銘柄を選んだりエントリーのタイミングを図ったりしている。

材料についても、「この材料の賞味期限はどのくらいか」という時間軸ではなく、「その材料でどれだけ値上がりしそうか」という点を見る。そして、一定の値上がり益が出たらすぐに利益確定し、その資金を次の銘柄(トレード)に回す。短期トレードでは時間よりも回転率(トレード回数)が重要だからだ。

冒頭で、材料の賞味期限とは「業績」に影響を与える長さであって「株価」に与える影響ではないと書いた理由が、ここにある。

厳密には、長期的に業績に寄与することは、理論上、株価にも長期的に影響を与える。しかし、株式市場には様々な立場のプレーヤーの様々な思惑が渦巻いており、それが株価を形成していく。そのため、本来長期的なはずの影響を、短期間のうちに吐き出すような動きを見せることもある。

言ってみれば、賞味期限を待たずに、早々に材料を使い切ってしてしまうようなものだが、このように一見、非合理的な動きを見せることも多々あるのが株式市場ということだ。

勝機を見出す鍵は「中身」にあり

リファインバースの株価がしぼんでしまったことを受けて、私のもとには「もうこの材料は株価上昇につながらないよね?」という相談があった。この意見は、材料の賞味期限を「株価の動き」から判断したのだろう。だが、上で説明したように、材料と株価はいつも理論的な動きをするとは限らない。

この話は、長期投資派の初心者にとっては困惑のタネになるかもしれないが、同時に、チャンスにもなることを理解しておきたい。材料の中身を自分の目で見て、本当の賞味期限をイメージする癖を身につければ、目先の株価の動きに惑わされずに済むようになる。

リファインバースの例でいえば、「材料の(業績に対する)賞味期限は長い」と思われる一方で足元の株価は下落しているため、今後の上昇の可能性にかけて、しぼんでいる安値で買ってその後の株価上昇を待つといった手法もできるようになる、ということだ。

このように、興味のある銘柄で何か材料が出た際には、その「中身」を見て、賞味期限を自分の頭で考えてみると、新たな可能性が広がるかもしれない。

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[執筆者]石津大希
石津大希
[いしづ・だいき]外資系投資顧問会社で株式アナリストとして勤務したのち独立。ファンダメンタルズ分析の経験を生かして、客観的データや事実に基づく内容を積極的に発信。市場で注目度の高いトピックを取り上げ、深く、そして、わかりやすく説明することを心がける。旧名義:星野涼太
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