【トレーダーが解説】そこは本当に「底」なのか? プロが見ている数字と負けない仕掛け方
誰だって、底値で買って天井で売ってウハウハしたい! でも、本当に底で買えるなら誰も苦労はしないのです。ここが底だ!と思って買ったら全然底ではなく、むしろ「奈落の入り口」だったりして、コロナ相場でも痛い目を見た人は多いのではないでしょうか。
そんな中、まるで「底」を知っているかのように、暴落相場でも大きな利益をあげるのがプロのトレーダーたち。彼らは「底」をどう判断しているのか、実際のチャートを使って教えてもらいました。
次なる底はいつ? プロでも底はわからない
──ズバリ、次の「底」はいつ来るのでしょうか?
トレーダーK氏:まず最初に重要な教訓として「底がどこかなんて誰にもわからない」ということを理解してください。
コロナショック時の日経平均株価で見てみましょう。例えば2020年2月28日~3月5日は、それまでの下落から「底っぽい」形状になっていますよね。
そこで「底かな?」と思ったら、その後さらに落ちていってしまっています。20,000円を切り、18,000円を切り、あれよあれよと言う間に3月19日には16,358円まで下落しました。
でも、3月19日の時点で「ここが底だ!」とわかっていた人は、どこにもいません。もちろん、プロトレーダーだって同じです。株価が戻った時点で、「どうやら3月19日の頃が底だったな」とわかるに過ぎないんです。
当然、次の底がいつ来るか、それがいくらになるのかも、誰にもわかりません。
よく「あのタイミングが底だった。あのとき買っておけばよかった(涙)」と悔しがる人がいますが、そもそも、底とわかって買うことなんてできないのです。それに、株価が上がったから悔しいのであって、「もっと下がった! 買わなくてラッキー!」となったケースだってあるはずです。
「逃した魚は大きい」と言われるように、悩んで買わなかった後で株価が上がったときには、悔しくてつい何度も見返してしまうから、余計に強い印象が残るのかもしれません。それよりも、買わずに損を免れたケースをちゃんと振り返ったら、自分の幸運をかみしめられるはずなんですが。
底は過去の底に倣え。プロが見るのは「前回安値」
──そうは言っても、何かいい目安はないものでしょうか?
トレーダーK氏:相場に関わる人間が注視している数値については言えます。それは「前回安値」。
このチャートで言うと、2020年4月3日が前回安値です。
単純に、「直近で最も株価が落ちたところ」を見れば大丈夫。それより前の底が3月19日の、チャートが最もへこんでいるところですね。
ただし、例えば10年などの長期チャートで見たら、もっと大きな底があります。ここまでは日足で見てきましたが、月足に変えてみましょう。こうすると、2016年6月に14,864円という底があることがわかります。さらに2011年11月には8,000円という大底がありますね。
このように長期で見たうえで、次なる「底候補」は2016年6月の14,684円だな、というふうにプロは考えているんです。あくまで「候補」ですけれど。
そして、今回の3月19日の16,358円という底も、前回安値でどこか似たような底があったのか?と思うかもしれませんが、それが実際にあったのです。少し前になってしまいますが、2016年11月18日の16,111円です。
つまり、4年前の底がターゲットとして注視されていたのです。
日経平均株価は2020年3月に大きく暴落し始めましたが、その暴落のさなかで、トレーダーたちはまず直近の大きな底(❶2019年8月)を見ます。株価がそれを破って下がってしまったら、次の底(❷2018年12月)を見る。
今回はそこも破られ、最終的に2016年11月の底(❸)で底打った、というわけです。このように、前回の安値を次々にずっと追っているだけなんです。
暴落相場では「果てしなく落ちていく」という恐怖に駆られるかもしれませんが、実はプロたちは「過去の底」という目安を持っているので、「どこまで下がるんだろう」と不安になることもないのです。どんなに下げたとしても、それは過去に行ったことのある底だからです。
そこは本当に底なのか? 暴落相場での仕掛け方
──2020年3月の暴落時に、株価が2016年11月の底をうかがった時点で「ここで底を打って、もう上がるんじゃね?」という思惑で仕掛けた人もいたのでしょうか?
トレーダーK氏:いっぱいいたと思います。
前回安値については「ここで反発する」という人たちと「いや、まだ落ちる」という人たちの思惑がぶつかり合います。売りが強いと底を抜けてしまう。そうなると、またさらに次の底を目指してぶつかり合いが起き……の繰り返しです。
底でバトル発生。その後、勝ち上がったらさらなる強敵のいる底へ。そして、またバトル発生! というわけです。だから、単純に「前回安値で反発する」なんて言えないんです。いずれは過去の安値で底が来る、でも、どの安値で底になるかは誰にもわからない──それが真実です。
底を探すというのは現実的なやり方じゃないとわかっていただけるのではないでしょうか。底については、あとから「結果的にそこが底だった」ということしか誰にも言えないわけですから。
それでも、前回安値のところで張っていたトレーダーはいます。さらに落ちていくかもしれない一方で、もし底を打ったら一気に儲かりますからね。
でも、多くの方が想像しがちな「待って待って待って、一番の底を見極めて、全資金をどかーんとつぎ込んでバーンと買う」なんてことはプロはしません。負ける可能性も見越した上で反発を狙いにいくわけですから、それは決して「賭け」などではなく、通常の取引となんら変わらないのです。
2020年3月の「大底」で買えたプロは、たぶんこんな感じです。
- 1つ目の前回安値で、「ここで上がるだろう」と10万円を投入
➡失敗。底が割れる - さらに過去の前回安値で、「もう上がるだろう」と10万円を投入
➡失敗。さらに底が割れる - さらに過去の前回安値で、「そろそろ上がってくれるだろう」と10万円を投入
➡成功。反発する - 「よっしゃいける」と30万円、50万円を順次投入。反発が終わった時点でさっさと利益確定
もちろん、これはあくまで一例で、実際には、上げと下げの複数シナリオを持ってポジション管理しながら買っていく(売っていく)のがプロの仕掛け方です。
暴落相場でもプロが勝てる理由
実際に株価が反発して「行ける」ことがわかってから大きな資金投入し、上昇が収まってきたらさっさと回収。プロのトレードって、想像以上に地味というか、手堅いんですね……という私のつぶやきに、K氏はひとこと「プロですから」。そう、どんな場面でも確実に勝つのがプロなのです。
- 底とは、「あとから見ればアレが底だった」とわかるもの
- 目安は前回安値。ただし、必ず反発するとは限らない
- 前回安値で張ることもできるが、くれぐれも資金管理は慎重に
プロトレーダーの話を聞く度に、自分のトレードの「なんとなくぶり」を思い知らされ、よく今まで大けがをしなかったもんだと眩暈がします。それと同時に、このままではいずれ痛い目に遭うであろうことも痛感。いま一度、正しいトレードのあり方を復習したいと思います。