【集中連載】株をやるなら必ず押さえておきたい「相続」の基礎知識
そもそも「相続」とは?
「相続」とは、亡くなった方の財産を相続人が引き継ぐことをいいます。
「お金は天国へ持っていけないよ」と、よくいわれますが、まさにその通りなのです。亡くなった後は、生前に得た財産はこの世に置いて残さなければなりません。命が尽きるまでの間に、キレイさっぱり使い切ることができればいいのでしょうが、実際には、なかなかそううまくはいきません。
民法が定める「早い者勝ち」のルール
ただ、亡くなった方の財産を、所有者がいない状態のままにするわけにもいかないのです。
民法239条では、所有者のいない不動産は国の所有となり、それ以外の財産(動産)で所有者がいなければ、最初に持ち去っていった人の「早い者勝ち」にすると定めています。
とはいえ、誰かが亡くなるたびに、そのようなやり方で進めるのでは、かえって争い事が増えてしまいそうです。病気などで今にも亡くなりそうな方の家の周りには、財産ほしさに大勢の人が取り囲んで待っている……そんな空恐ろしいことにもなりかねません。
「私有財産制」は資本主義の大原則
かといって、人が亡くなった途端に、動産も不動産もすべて国のものとしてしまえば、「私有財産制」という資本主義の基本ルールが崩れてしまいます。
人々が正当に手に入れたものは、よほどの理由がない限り、国や都道府県、市町村によって奪われることはありません。
たとえば新しい道路をつくるとき、その計画地の住人に対しては、国が多額の補償金を支払った上で立ち退いてもらいます。放置されて荒れ果てた空き家だからといって、地元の自治体は、そう簡単に取り壊すわけにいきません。
それは日本が資本主義社会であり、「私有財産制」というしくみが保障されているからです。民間人が得た財産を、国などが簡単に持っていけるのは、社会主義や共産主義の世の中です。
こうして「相続」という制度ができた
よって、死亡した方の財産について、「早い者勝ち」での奪い合いを認めるのも、すべて国が没収してしまうのも、日本の社会では都合が悪い方法となってしまうのです。
そこで、ある人が亡くなった瞬間、財産は「相続人」によって引き継がれるものとしました。これが「相続」という仕組みです。
相続人は、亡くなった方にとって身近な家族であることが一般的です。詳しくは次回以降に説明しますが、亡くなった方の子どもや兄弟姉妹、夫や妻、親などが相続人になるのが原則です。それはそれで、ひとつの落ち着きどころといえるでしょう。
なぜ「相続税」がかかるのか、その理由
しかし、まだ問題が残っています。
もし仮に、亡くなった方が莫大な資産を持っていれば、その資産を特定の家系だけで、ずっと独占できることになってしまいます。それでは、世の中の経済的な格差が固定されたままです。やがて、不平等・不公平な感覚が広がって、この社会から活力が失われてしまうかもしれません。
そこで、一定以上の規模の資産が相続される場面では、その一部を国が徴収し、さまざまな行政サービスなどで世の中へ還元することによって、社会全体のバランスを保とうとしています。
このような目的で、遺産の中から納めるべき税金が「相続税」なのです。
知っておきたい相続の基礎知識
1 【集中連載】株をやるなら必ず押さえておきたい「相続」の基礎知識(本記事)
2 だれが相続人になるのか? 法定相続人の序列とその割合
3 相続税はいくらになるのか? 計算方法と遺産分割のポイント
4 意外と知らない相続のスケジュールと、手続きの注意点
5 気になる相続対策その1 相続が始まった後にできること
6 気になる相続対策その2 相続が始まる前にしておけること