【集中連載】株をやるなら必ず押さえておきたい「相続」の基礎知識

長嶺超輝
2018年8月3日 11時00分

株をはじめとした資産運用をしている方なら気になるのが「相続」です。させる・・・場合でも、する・・場合でも、いざ実際にそうした状況が迫ってこないと真剣に考えられない人も多いでしょうが、いざというときでは遅いのが相続対策なのです。そこで、株をやるなら必ず押さえておきたい相続の基礎知識を、集中連載で解説します。

そもそも「相続」とは?

相続」とは、亡くなった方の財産を相続人が引き継ぐことをいいます。

「お金は天国へ持っていけないよ」と、よくいわれますが、まさにその通りなのです。亡くなった後は、生前に得た財産はこの世に置いて残さなければなりません。命が尽きるまでの間に、キレイさっぱり使い切ることができればいいのでしょうが、実際には、なかなかそううまくはいきません。

民法が定める「早い者勝ち」のルール

ただ、亡くなった方の財産を、所有者がいない状態のままにするわけにもいかないのです。

民法239条では、所有者のいない不動産は国の所有となり、それ以外の財産(動産)で所有者がいなければ、最初に持ち去っていった人の「早い者勝ち」にすると定めています

とはいえ、誰かが亡くなるたびに、そのようなやり方で進めるのでは、かえって争い事が増えてしまいそうです。病気などで今にも亡くなりそうな方の家の周りには、財産ほしさに大勢の人が取り囲んで待っている……そんな空恐ろしいことにもなりかねません。

「私有財産制」は資本主義の大原則

かといって、人が亡くなった途端に、動産も不動産もすべて国のものとしてしまえば、「私有財産制」という資本主義の基本ルールが崩れてしまいます。

人々が正当に手に入れたものは、よほどの理由がない限り、国や都道府県、市町村によって奪われることはありません

たとえば新しい道路をつくるとき、その計画地の住人に対しては、国が多額の補償金を支払った上で立ち退いてもらいます。放置されて荒れ果てた空き家だからといって、地元の自治体は、そう簡単に取り壊すわけにいきません。

それは日本が資本主義社会であり、「私有財産制」というしくみが保障されているからです。民間人が得た財産を、国などが簡単に持っていけるのは、社会主義や共産主義の世の中です。

こうして「相続」という制度ができた

よって、死亡した方の財産について、「早い者勝ち」での奪い合いを認めるのも、すべて国が没収してしまうのも、日本の社会では都合が悪い方法となってしまうのです。

そこで、ある人が亡くなった瞬間、財産は「相続人」によって引き継がれるものとしました。これが「相続」という仕組みです

相続人は、亡くなった方にとって身近な家族であることが一般的です。詳しくは次回以降に説明しますが、亡くなった方の子どもや兄弟姉妹、夫や妻、親などが相続人になるのが原則です。それはそれで、ひとつの落ち着きどころといえるでしょう。

なぜ「相続税」がかかるのか、その理由

しかし、まだ問題が残っています。

もし仮に、亡くなった方が莫大な資産を持っていれば、その資産を特定の家系だけで、ずっと独占できることになってしまいます。それでは、世の中の経済的な格差が固定されたままです。やがて、不平等・不公平な感覚が広がって、この社会から活力が失われてしまうかもしれません。

そこで、一定以上の規模の資産が相続される場面では、その一部を国が徴収し、さまざまな行政サービスなどで世の中へ還元することによって、社会全体のバランスを保とうとしています

このような目的で、遺産の中から納めるべき税金が「相続税」なのです。


知っておきたい相続の基礎知識

1 【集中連載】株をやるなら必ず押さえておきたい「相続」の基礎知識(本記事)
2 だれが相続人になるのか? 法定相続人の序列とその割合
3 相続税はいくらになるのか? 計算方法と遺産分割のポイント
4 意外と知らない相続のスケジュールと、手続きの注意点
5 気になる相続対策その1 相続が始まった後にできること
6 気になる相続対策その2 相続が始まる前にしておけること

[執筆者]長嶺超輝
長嶺超輝
[ながみね・まさき]法律・裁判ライター。1975年、長崎生まれ。3歳から熊本で育つ。九州大学法学部卒業後、弁護士を目指すも、司法試験に7年連続で不合格を喫した。30万部超のベストセラー『裁判官の爆笑お言葉集』(幻冬舎新書)のほか著書多数。
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