意外と知らない相続のスケジュールと、手続きの注意点

[夏の特別企画]株をやるなら必ず押さえておきたい相続の基礎知識を、集中連載で解説しています。前回は、「相続税」の計算方法と遺産分割のポイントを説明しました。今回は、相続手続きの一般的なスケジュールについて解説します。

相続の手続き

人が亡くなると、その瞬間に遺産は「法定相続人」へと相続されたものとして扱われます。

しかし、それはあくまでも法律の世界での取り扱いの話なのであって、実際には「死亡届」を役所に提出しなければ、何も始まりません。

まずは死亡届を提出する

死亡届が、亡くなった方の本籍がある役所の戸籍課に提出されることによって、戸籍や住民票が書き換えられます。

死亡者の「除籍」という手続きが行われたことが示されている戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)を証明書類として、相続をめぐるさまざまな手続きが進められるようになります。

死亡届の提出には、印鑑などが必要ですが、葬儀会社が代行してくれることが大半です。なぜなら、遺体に関する火葬許可申請(埋葬許可申請)のために必要だからです。

銀行が独自に口座凍結することも

銀行は、亡くなった方が名義となっている口座を、しばらく使えないように凍結します。これは、一部の相続人が不正に遺産を引き出したりするなどの抜け駆けを防止するためです。

この口座凍結は、死亡届の提出がきっかけとなることもあれば、銀行が独自ルートで名義人の死亡の事実を調べる場合もあるようです。

なお、保険会社に対して生命保険金の受け取りを申請するには、死亡届と一体になっている死亡診断書が必要となります。病院に申し出て、追加で死亡診断書を作成してもらうか、保険会社に問い合わせて、診断書のコピーの提出でも間に合うかどうか確認してみましょう。

死亡届が必要になる場面

死亡届によって、死亡者が除籍された戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)が必要となるのは、次のような場面です。

・遺言書の検認

亡くなった方が生前に、自身で書いた遺言書(自筆証書遺言・秘密証書遺言)が見つかった場合は、家庭裁判所がその内容をチェックして、現状を保存する「検認」の手続きが必要です。このときに、戸籍謄本を家庭裁判所に提出しなければなりません。

・遺族年金などの受け取り

厚生年金や国民年金の遺族年金(遺族厚生年金・遺族基礎年金)や国民年金の寡婦年金の受け取りを申請するときも、戸籍謄本を提出しなければなりません。

遺族年金や寡婦年金は、残された配偶者や子どもの生活を経済的に支えるための制度ですが、受け取りにはさまざまな条件がありますので、事前に社会保険事務所などに問い合わせて確認しましょう。

・遺産の名義変更

遺産の中に含まれている不動産や預貯金を、どの相続人が引き継ぐのか、話し合いを終えれば、その所有権を正式に移転するための名義変更を行います。不動産なら法務局、銀行口座なら銀行の窓口に、戸籍謄本を提出して手続きします。

・相続税の納税

遺産の総額が基礎控除額を上回り、相続税の納税対象となったならば、亡くなった方の住所を管轄する税務署に、相続税を納めます。納付期限は死亡の翌日から10か月以内です。納付の際に、戸籍謄本を提出することになります。

相続のスケジュール

では、亡くなった方の遺産を相続する場合に、相続人がやるべきことのスケジュールを確認しましょう。

・相続放棄・限定承認(3カ月以内)

相続人が遺産を一切受け取らないことを「相続放棄」と言います。たとえば、遺産の中に多額の負債が含まれているような場合には、相続放棄によって負担を免れることができます。この意思表示は、相続開始を知った日から3カ月以内に家庭裁判所に申述する必要があります。

なお、遺産をすべて受け取ることを「単純承認」、プラスの財産の範囲内で負債も引き取ることを「限定承認」と言い、「限定承認」とする場合にも、3カ月以内に家庭裁判所に申述します。

・所得税準確定申告(4カ月以内)

個人が死亡した場合、その年の1月1日から死亡日までの所得を、相続開始を知った日の翌日から4カ月以内に確定申告(準確定申告)をしなければいけません。これは相続人全員が納税者となる義務があります。

・相続税の申告・納付(10カ月以内)

遺産に相続税がかかる場合には、相続開始を知った日の翌日から10カ月以内に、相続人全員が相続税の申告・納税をしなければなりません。

相続税は相続人ひとりひとりが実際に取得した財産に対して課されるため、申告期限(10カ月)までに遺産分割の協議で話がまとまっている必要がある、ということになります。

なお、現金で納付する場合には10カ月以内ですが、延納物納を選択する場合でも、申告期限(10カ月)までに申請書を提出して許可を受けておく必要があります。

・遺留分の減殺請求(1年以内)

民法では、法定相続人が必ず相続することができるとされている最低限の相続分(遺留分)が保証されています。万一、遺言によって遺留分未満の財産しかもらえなかった場合には、それを知った日から1年以内に「遺留分の減殺(げんさい)請求」を行うことで、これを取り戻すことができます。

遺留分は通常、遺産の2分の1ですが、相続人が直系尊属のみの場合は遺産の3分の1となります。ただし、兄弟姉妹には遺留分はありません。

・相続税の特例適用(3年10カ月以内)

相続税の軽減特例である「配偶者の税額軽減」や「小規模宅地の評価減」を適用するには、遺産分割協議が終わっていることが要件となります。そのため、もし申告期限(10カ月)までに協議がまとまっていないと、これらの特例は適用できません。

ただし、その後3年以内に協議が整えば、特例を適用する内容に申告を訂正することができます。


知っておきたい相続の基礎知識

1 株をやるなら必ず押さえておきたい「相続」の基礎知識
2 だれが相続人になるのか? 法定相続人の序列とその割合
3 相続税はいくらになるのか? 計算方法と遺産分割のポイント
4 意外と知らない相続のスケジュールと、手続きの注意点(本記事)
5 気になる相続対策その1 相続が始まった後にできること
6 気になる相続対策その2 相続が始まる前にしておけること

2018/08/24

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意外と知らない相続のスケジュールと、手続きの注意点」の著者
長嶺 超輝
[ながみね・まさき]法律・裁判ライター。1975年、長崎生まれ。3歳から熊本で育つ。九州大学法学部卒業後、弁護士を目指すも、司法試験に7年連続で不合格を喫した。30万部超のベストセラー『裁判官の爆笑お言葉集』(幻冬舎新書)のほか著書11冊。最新刊に『東京ガールズ選挙(エレクション)——こじらせ系女子高生が生徒会長を目指したら』(ユーキャン・自由国民社)。
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