気になる相続対策その2 相続が始まる前にしておけること

[夏の特別企画]株をやるなら必ず押さえておきたい相続の基礎知識を、集中連載で解説しています。前回は、相続対策のうち、相続が始まった後にできることを説明しました。最終回の今回は、相続が始まる「前」にできることについて解説します。

相続の「前」と「後」

できることならスムーズに進めたい遺産相続。そのために事前にできる相続対策があります。これは同時に、自分が遺産を残す立場だと考えたときに何ができるか、ということでもあります。

(1)生前贈与

相続税は、亡くなった時点での遺産に対して課税されます。つまり、生前に別の人へ資産を渡しておけば、そこに相続税は課されないのです。

特に将来、相続人となりうる家族(推定相続人)へ前もって資産を贈与しておけば、相続で引き継いでもらうよりも節税できます。これを「生前贈与」といいます

もちろん、贈与した資産には贈与税が課されます。しかし、贈与の相手方ひとりあたり年間110万円の基礎控除があるため、その範囲内であれば、贈与税はかかりません。贈与税の申告すらも不要です。

つまり、早い段階から毎年着実に生前贈与を実行し続けるほど、節税効果が高まるのです。

形だけの贈与は認められない

ただし、生前贈与には注意点があります。

身内同士で示し合わせたような、形だけの贈与は認められません。必ず贈与契約書を証拠として残し、贈与先の口座の預貯金は贈与者自身で引き出せないよう、印鑑やキャッシュカード、パスワードなどを推定相続人が独自で管理しておかなければなりません。

また、相続開始直前3年間の生前贈与には、例外的に相続税が課されてしまいます。重い病気などにかかり、余命が長くないとわかった時点で、いわば駆け込み的に生前贈与を実行しても、それは実質的に相続と変わらないからです。

その意味でも、節税のための生前贈与は早めに始めておくことが効果的です。

(2)贈与税の配偶者控除

贈与税には、年間110万円の基礎控除の他に、配偶者控除として2000万円の枠が認められています。結婚20年以上の夫婦の間で、マイホーム(居住用不動産)や、マイホーム購入用の資金を2000万円まで贈与した場合には、そこに贈与税が課されないのです。

ただし、基礎控除と違って、配偶者控除を受ける事実を税務署に申告しなければならないので、注意が必要です。

また、マイホームの購入には不動産取得税や、所有権移転登記を申請するときの登録免許税などが課されます。贈与税が非課税になるメリットばかりに気を取られると、結局は足が出てしまうリスクもあるのです。

(3)遺言状

遺言は、民法で定められた相続人や相続分に縛られず、遺産を残す本人の考えによって、どの遺産を誰に割り当てたいか、文書にして残しておくことです。

民法に定められた形式や手続きに従って作成している遺言状なら、その人の最終意思として最大限に尊重されます。ただし、法定相続人が遺産を相続できるものと期待している一定の割合(遺留分)は、遺言によっても変更できません。

遺言によって誰にどの遺産を重点的に割り当てるかで、相続税の額が大きく変わってきますし、非課税にすることもできます

たとえば、1億6000万円までの非課税枠がある「配偶者の税額軽減特例」や、マイホームの不動産評価額を5分の1にまで圧縮できる「小規模宅地の特例」などを使いこなした遺言を作成できれば、大切な家族に高い節税効果も残すことができます。

最近では、遺された方への配慮の意味も込めて、遺言を作っておく人が増えているようです。そのときに相続税についても念頭においておくと、無用な諍いを回避することができるかもしれません。

株と相続対策はお早めに

計6回にわたって相続の基礎知識について解説してきました。株をやっている方の場合、どの証券口座にどれくらいの資金が入っているのか、また、そもそも株をやっていることすら、ご家族が知らない……なんていうこともあるようですね。

「大した額じゃない」と思っている方もいるかもしれませんが、価格が日々変動するのが株です。いざ相続となった場合に、実は大きな資産になっていたり、はたまた暴落して負債になっていたり、といったことも考えられます。

事前に伝えておくことに抵抗があるようでしたら、せめて遺言を作成し、そこに証券口座の一覧を記しておくなど、可能な対策を取っておきたいものです(ネット証券の場合は、ログインIDとパスワードも併記しておいたほうがいいようです)。

なお、今回の連載では一般的な相続に限定して説明をしてあります。株式を相続する場合に特に気をつけるべき点については、こちらの記事もご参考にしてください。

【参考記事】もしも相続する遺産の中に「株」があったら? 自動的に分割されない点に注意


知っておきたい相続の基礎知識

1 株をやるなら必ず押さえておきたい「相続」の基礎知識
2 だれが相続人になるのか? 法定相続人の序列とその割合
3 相続税はいくらになるのか? 計算方法と遺産分割のポイント
4 意外と知らない相続のスケジュールと、手続きの注意点
5 気になる相続対策その1 相続が始まった後にできること
6 気になる相続対策その2 相続が始まる前にしておけること(本記事)

2018/09/07

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気になる相続対策その2 相続が始まる前にしておけること」の著者
長嶺 超輝
[ながみね・まさき]法律・裁判ライター。1975年、長崎生まれ。3歳から熊本で育つ。九州大学法学部卒業後、弁護士を目指すも、司法試験に7年連続で不合格を喫した。30万部超のベストセラー『裁判官の爆笑お言葉集』(幻冬舎新書)のほか著書11冊。最新刊に『東京ガールズ選挙(エレクション)——こじらせ系女子高生が生徒会長を目指したら』(ユーキャン・自由国民社)。
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