なぜサブスク銘柄が買われているのか? 株価成長を見抜く本当のヒントとは

石津大希 2020/07/15

株式市場にも到来したサブスクブーム

継続課金型のサービスであるサブスクリプション、いわゆる「サブスク」の注目度が高まっている。有名レストランが月額制での提供を開始するなど、馴染みのあるサービスにもサブスクが導入されつつある状況だ。

株式市場でも近年、サブスク関連企業のIPOが増えており、高い時価総額がつくなど評価も高い。マザーズ市場の時価総額上位には、会計ソフトのフリー<4478>やマネーフォワード<3994>、名刺管理サービスのSansan<4443>といったサブスク企業がいくつかランクインしている。

【フリー<4478>の株価推移】

【マネーフォワード<3994>の株価推移】

【Sansan<4443>の株価推移】

サブスク銘柄が高評価な本当の理由

ビジネスのニューウェーブのような捉え方をされることも多いサブスク。次世代感や、メディアにおける露出の多さ、ネット上での話題性などもあって、株式市場ではサブスク企業に買いが向かいやすく、また、その状況がさらなる買いを呼び込む流れができているようだ。

だが、サブスク関連銘柄について、単に「いま旬だから」「話題になっているから」という理由だけで見ているとしたら、ひょっとするとチャンスを見逃すことになるかもしれない。そこには、投資対象として高い評価を得るだけの理論的裏付けがあるからだ。

さらに言えば、その理論的裏付けを理解することは、長期的に株価の成長が見込める銘柄を見抜く重要なヒントにもなり得る。

株価成長に寄与する収益の安定性&継続性

株価が中長期的に上昇するためには「収益の安定性」が重要となる。

機関投資家を中心にファンダメンタルズ分析を行う投資家は、3~10年ほどの業績をある程度想定し、それをベースに妥当な株価水準を見定めていく。その際、収益が安定的(年によって大きく変動しない)ならば、その予想はある程度、現実を捉えたものになる。

しかし、収益に安定感がなければ業績予想の意義は薄くなり、こうした投資家の目線からすると不透明感が強く、ハイリスクな投資になる。そしてハイリスクということは、それだけで妥当な株価を算出する際にディスカウントされてしまうのだ。

「安定的な収益」というといまひとつイメージができないかもしれないが、要するに「ブレの少ない継続的な収益がどれだけ見込めるか?」ということだ。

その点、サブスクについてはかなりイメージしやすいのではないだろうか。契約が続く限り、サービスを提供する企業には継続的な収益が発生する。サービスについて顧客満足度が高ければ継続期間が長くなるので、単純な収益額の増加はもちろん、収益の安定感・継続性も高まることになるわけだ。

収益安定業種はサブスクだけじゃない

当然のことながら、収益が安定的・継続的な業種はサブスクだけではない。

身近なところで言えば、電気・ガスが挙げられる。日々の生活の中で、誰もが電気料金やガス料金を毎月支払っているだろう。季節によって支払う額は多少変わるものの、電力会社やガス会社からすれば、顧客数や顧客から受け取る料金は毎年ほぼ一定であり、極めて安定的・継続的な収益を上げている。

また、不動産運用もわかりやすい例だ。不動産運用とは、不動産を購入し、それを個人や法人に貸し付けて毎月賃貸料を受け取るビジネスのこと。個人の場合は投資用マンションの購入と同じ仕組みなので、イメージしやすいのではないだろうか。

同様に、銀行業も安定的・継続的な収益を得る事業である。預かった資金を融資することで、支払利息と受取利息の差である利ザヤを安定的に得る仕組みだ。

収益安定業種から勝者を見極めるポイント

では、サブスクを含め、収益が安定している業態ならばどんな企業でも株価は上がりやすいのかというと、もちろんそうではない。

足元でサブスク企業が堅調な値動きを見せている背景には、ビジネスモデルに安定性があるほか、成長テーマとして顧客数が大きく拡大していることも関係している。市場規模が急拡大しているということだ。「安定感+成長性」という構図により、株価が上昇しやすくなっているのである。

ただ、成長市場なだけに、業界内での競争は厳しい。機能としては似たようなサービスであるものの、細部の品質の違いで勝者と敗者が決まるような競争が展開されている。また、継続的なサービスという性質上、顧客を競合他社から奪うことも容易ではない。

これにより、勝者は安定的・継続的に多額の収益を上げられる一方、敗者は低収益のまま、悪い意味で安定的に事業を続けることになる。

すなわち、単に「収益安定業種だから」という理由だけでは買い材料とはなり得ず、「市場は拡大しているか?」「業界内で競争に勝っているか?」の2点を見定めようとする姿勢が重要となってくる。

市場の拡大については、例えば電気・ガスの市場規模は横ばいのため、それら企業への投資で高いリターンを得るのは難しいかもしれない。また競争については、例えば月次契約数などのIR情報を見比べて、競争環境においてどのようなポジションにいるのかをチェックすることも有効だろう。

そのサブスク銘柄は本当に安定的か?

一顧客当たりから得る収益が安定的・継続的なサブスク。確かにそれは、投資家にとっては業績予想の組み立てにおいてプラスに働くものの、足元では厳しい競争が繰り広げられ、多くのサブスク企業は広告宣伝費を投下することでまずは売上高を伸ばす(顧客数を増やす)という戦略を採っている。

つまり、ビジネスモデル自体には本質的に安定性・継続性があるものの、市場環境・事業環境を背景にそうした戦略が採られた結果、会社全体の収益で見れば安定性がない、というケースも少なくない。

具体的には、広告宣伝費が利益を押し下げる一方、顧客数が増えて売上高は不安定的に伸びるという事態も、実際に多く起こっている。サブスク関連銘柄を見るうえでは、このような状況を理解し、通常以上に市場規模の推移や競争状況の確認に気を配らなければならないと考える。

いずれにしても、〝何となく〟の空気感で買っているのだとすれば、いま一度、サブスク銘柄について見直してみたほうがいいかもしれない。

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[執筆者]石津大希
石津大希
[いしづ・だいき]外資系投資顧問会社で株式アナリストとして勤務したのち独立。ファンダメンタルズ分析の経験を生かして、客観的データや事実に基づく内容を積極的に発信。市場で注目度の高いトピックを取り上げ、深く、そして、わかりやすく説明することを心がける。旧名義:星野涼太
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