ラーメン銘柄が大健闘! 相場の雰囲気が一変する中で高値を更新した銘柄たち【今月の高値更新】
《株価の高値は、銘柄にとっての「自己ベスト」。その記録を新たに更新することは、“伸びしろ”の表れかもしれません。直近で高値更新を果たした銘柄から、いまの相場の流れを読み解きます》
3月は相場の雰囲気が一変
3月の日本株相場は、前半と後半で雰囲気が一変しました。月初にかけては、アメリカのインフレ進行への警戒感が台頭したものの、堅調な経済指標やバリュー株物色などもあり、日本株に資金が流入し、日経平均株価は9日におよそ6か月半ぶりの高値28734円を付けました。
しかし、アメリカで中堅のシリコンバレー銀行やシグネチャーバンクなどの経営破綻が発生したことをきっかけに、相場のムードが一変しました。金融システムへの不安が広がり、日経平均は16日に26632円を付け、約1週間で2000円ほどの下落となりました。
その後は、FRBによる緊急措置や破綻した銀行への買収など迅速な対応もあり、いったんは不安が後退し、戻り相場となって、月末に日経平均は28000円を回復しました。
高値更新銘柄から物色の変化を見極める
こうした中で、物色の変化を見るために格好の題材となるのが、高値更新銘柄です。
相場解説などで頻繁に使われる「高値更新」とは、読んで字のごとく、ある期間内の高値を更新したという意味です。ここに「昨年来」「年初来」「上場来」など期間を表す言葉が添えられて、「年初来高値を更新」などと言われます。また、新たについた高値を「新高値」と呼びます。
【株価の高値更新】
- 上場来高値……株式市場に上場して以来の高値。買い方の強い物色が株価に現れているといえる
- 昨年来高値……1〜3月に使われ、前年の1月1日から直近までの期間が対象
- 年初来高値……4月以降に使われ、その年の1月1日から直近までの期間が対象
3月の高値更新銘柄
それでは、この3月に高値を更新したのはどのような銘柄だったのでしょうか。さらにそこから、現在の相場状況を読み解いてみましょう。
EVインフラ加速で関連銘柄に脚光
脱炭素や自動車の電動化などの潮流が続く中で、EV(電気自動車)の電力インフラに関連した銘柄が続々と新高値を更新しています。
送配電機器を扱う東光高岳<6617>は、昨年から強い株価の基調が続いており、3月8日に昨年来高値2641円を付けました。6日の日本経済新聞で、「東京都がEV充電器の増設に本腰を入れ、中古マンション向けの補助上限を2倍超に引き上げる」と報道されたことも、高値更新のきっかけとなりました。
EVの普及には急速充電器の整備が急務であり、また、災害時にはEVから建物に電気を供給する電池にもなる点もポイントです。そこで、効率よく電気を給電するために使われるパワー半導体関連銘柄にも同様の動きが出ています。
自動車・家電向けのパワー半導体や電源機器メーカーのサンケン電気<6707>は、3月9日に昨年来高値11790円まで買われました。
同じ9日には、パワー半導体やFA機器(ファクトリー・オートメーション機器)の三菱電機<6503>も昨年来高値1602.5円と同じく買われました。
三菱電機はコロナの影響やインフレによるコスト増で重電システムや家電部門の苦戦が続いていましたが、今期は増収増益の見通しとなっています。14日には投資計画の上方修正を発表し、2021〜25年度のパワーデバイス事業の設備投資額を、従来から倍増となる約2600億円に大幅に引き上げるとしました。
こうした動きは、同じくパワー半導体メーカーの富士電機<6504>、ローム<6963>などでも相次いでおり、需要の伸びがうかがえます。
WBC侍ジャパン優勝でにぎわった銘柄たち
今年の3月は、日米などで開催されたWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)で日本代表・侍ジャパンが見事、アメリカを破って世界一に輝きました。株式市場でも、関連銘柄がにぎわいを見せました。
スポーツ用品のミズノ(美津濃)<8022>は、10日に年初来高値3760円を付けました。ミズノは侍ジャパンのオフィシャルパートナーを務めており、開幕前から公式応援グッズなどが大人気で売り切れが続出していました。
同じく10日には、スポーツ用品卸・小売りのゼット<8135>も昨年来高値420円を付けています。このほか、英国風パブのハブ<3030>も2月から急騰し、9日に年初来高値1003円を付けました。
注目してほしいポイントは、3銘柄ともにWBC開幕戦の8日近辺に高値を付け、その後は下落している点です。開幕以降、侍ジャパンの快進撃で各メディアは盛り上がりましたが、株式市場ではまさに「噂で買って事実で売る」という相場格言どおりの株価推移となりました。
「一風堂」「町田商店」などラーメン銘柄が健闘
博多とんこつラーメン専門店の「一風堂」などを運営する力の源ホールディングス<3561>にも買いの勢いが続いており、6日に昨年来高値1578円を付けました。
昨年7月に実施した値上げの効果やインバウンド需要による客数増が評価されています。この日、発表した2月の月次の既存店売上高が前年同月比で29%増となり、なかでも客数は20%増と前年にコロナ影響で営業時間を短縮していた反動もあり、活況となりました。
横浜家系の「町田商店」「豚山」などラーメンブランドを展開するギフトホールディングス<9279>も24日に上場来高値の4675円を付け、高値圏で強い株価の動きとなっています。14日に発表した2022年11月~2023年1月期は売上高が31%増の52億円、営業利益が14%増の5億円と大幅な増収増益でした。
外食関連銘柄は、人件費や材料費などの高騰といった逆風も続いていますが、経営力によって業績が拡大している企業には、資金が向かっているようです。どちらの銘柄も、その後、4月に入ってさらに高値を更新中です。
金融システム不安で物色に変化も
3月の後半は、金融システム不安によるリスク回避の雰囲気が漂う中、景気の変動を受けにくいディフェンシブ株を物色する動きもありました。
その代表格が、衛生用品大手のユニ・チャーム<8113>です。株価は年初から上昇トレンドが続いており、3月29日に上場来高値5525円を付けました。
世界的にコロナ禍一服でグローバルに業績が拡大する見通しとなっていることや原料価格の一服も評価されています。また、ユニ・チャームの予想PERは40倍と高めですが、アメリカの金利の先高感が一服し、物色がグロース株に向かっていることも買いの要因となっています。
同じようなディフェンシブ株物色では日清食品ホールディングス<2897>も買われ、29日に上場来高値12190円を付けました。
2月6日に2023年3月期の業績予想を上方修正し(アメリカなど海外事業が好調に推移していることによるもの)、その後も買いが入っています。同時にチキンラーメンやカップヌードルなどの値上げも発表しました。値上げは昨年6月以来2年連続で、それによる収益力の改善も期待材料となっています。
3月の安値更新銘柄
最後に、高値更新銘柄とは反対に、3月に新安値を更新したのはどのような銘柄だったのかも確認しておきましょう。
大型株では、人材派遣・求人メディアのリクルートホールディングス<6098>への売りが止まらず、16日に昨年来安値3690円を付けました。アメリカの子会社で求人検索サイトを運営するインディードの成長が鈍化しており、23日には大規模な人員削減を発表するなど構造改革を進めています。
大手の不動産株も安値更新が相次いでいます。「丸の内の大家」とされる三菱地所<8802>は、24日に昨年来安値1539円を付けました。住友不動産<8830>も同日に昨年来安値2854.5円と売られました。
2022年秋頃から台頭していた金利の先高感で不動産市況が悪化するとの見方に加えて、テレワークの普及でオフィスビルの市況が回復せず、物色の蚊帳の外となっている状況です。
物色の流れをつかむヒントに
3月の高値更新銘柄(および安値更新銘柄)から、注目の銘柄をいくつかご紹介しました。これ以外にも、さまざまな銘柄が新値を更新しています。
冒頭に述べたように、相場全体のムードによってもこうしたトレンドは常に変化していきます。新値更新の銘柄について調べてみることで、新たな物色の流れをつかむヒントになるでしょう。