いま買われているバリュー株 その背景と意外と知らない新高値銘柄

佐々木達也
2023年3月23日 10時00分

Igor Link/Adobe Stock

日経平均株価が28,000円手前で上値が重くなる中、バリュー株割安株)のさまざまな銘柄が買われています。この記事ではバリュー株が買われている要因についてご案内し、具体的な個別銘柄とその背景を見ていきます。

買われるバリュー株と、その背景

バリュー株とは、一般的に、現在の企業価値や保有資産額、業績と比較して、現在の株価が割安な銘柄がこれに当たります。

主要なバリュー株で構成されるTOPIXバリュー指数は、現在、2008年11月の指数算出開始以来の最高値圏で推移しています。業種別でも海運、金融、鉄鋼、ゴム製品などのセクターが買われる展開が続いています。

東証の市場再編で低PBR株に圧力

東京証券取引所は2022年4月に「プライム」「スタンダード」「グロース」に市場区分を変更しました。企業価値を向上させるための企業への枠組み作りが継続的に議論されています。

そうした中で今、市場で注目されているのは、株価純資産倍率(PBR)が解散価値である1倍を下回っている割安株(バリュー株)に対する働きかけです。

今年1月30日に公表された「論点整理を踏まえた今後の東証の対応」によると、継続的にPBR1倍を割れている企業に対して、2023年春から「改善に向けた方針や具体的な取り組みなどを開示することを強く要請する」としています。

これにより、PBRが1倍を切っている企業について、「今後、自社株買いによる資本の圧縮や収益性の改善などを推進する動機付けになるのではないか?」との期待が広がり、PBR1倍割れの有望銘柄を探す動きが強まっているのです。

意外と底堅い世界経済

昨年時点では悪化が予想されていた2023年の世界経済が底堅さを見せていることも、自動車や商社など景気敏感株の多いバリュー株の買い材料となっています。

景気敏感株とは、半導体や自動車、商社や化学といった業種の企業がこれに当たります。これらの企業はグローバルに事業を展開していることも多く、為替相場の変動による業績への影響も大きくなることがあります。

1月末、IMF(国際通貨基金)は、2023年の世界経済の成長率見通しを前回予想から0.2%引き上げ、2.9%に上方修正しました。特にゼロコロナ政策の解除で急速に経済が回復している中国の成長率見通しは5.2%に引き上げられ、上方修正幅は0.8%と最大でした。

IMFは「リスクのバランスは依然、下振れ方向に傾いているが、2022年10月のWEO以降、下振れリスクは和らいだ。上振れリスクとしては、各国で見られる繰り延べ需要によって景気が押し上げられることや、インフレが予想よりも速く落ち着くことが挙げられる」としています。

アメリカでも景気の底堅さを示す経済指標が相次いでいます。注目された1月の雇用統計や非製造業(サービス業)景況感指数はいずれも市場予想を上回りました。アメリカの利上げやインフレの中でも景気が底堅く推移し、懸念されていたハードランディングの可能性が後退しています。

《参考》アメリカの雇用については
2023年のアメリカ市場はどうなるのか FRBの金融政策をも左右する「雇用」を読む

《参考》景況感については
これから景気は良くなる? 悪くなる? 景気の方向性を示す「景況感」を知る

国内の金利に先高感

日本銀行は黒田東彦総裁の任期満了を4月に控える中で、現在の大規模金融緩和を縮小し、出口に向かうのではないか、との期待が市場関係者の間で広がっています。2月24日には次期総裁候補の植田和男氏が衆議院での所信聴取に臨み、「当面は現在の金融緩和」を継続すると発言しました。

性急な金融政策の見直しの可能性は後退しましたが、将来的には長期金利の金利をゼロ程度に抑える長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)の見直しなどが行われる可能性があります。こうした動きは低金利で業績が下押しされていた金融株にとってプラスに働くとの期待が広がっています。

意外と知らない新高値銘柄も

こうした背景からバリュー株が買われており、個別銘柄で見ても、さまざまなバリュー株が新高値を更新しています。

【株価の高値更新】
  • 上場来高値……株式市場に上場して以来の高値。買い方の強い物色が株価に現れているといえる
  • 昨年来高値……1〜3月に使われ、前年の1月1日から直近までの期間が対象
  • 年初来高値……4月以降に使われ、その年の1月1日から直近までの期間が対象

鉄鋼株など市況関連株も買われる

中国の経済回復や自動車の生産正常化の流れで鉄鋼価格などの市況が上昇傾向となっていることから、日本製鉄<5401>も昨年来高値を更新し、およそ4年ぶりとなる高値3,100円台での値動きとなっています。

同様に神戸製鋼所<5406>、JFEホールディングス<5411>なども買われていますが、年足チャートでみると出遅れ感があります。ただ、取引先に対して値上げ交渉が進んだことや構造改革による利益率が改善するとの期待も株価を押し上げています。

上場来高値を更新している業種も

バリュー株物色の流れは、内需系の建設株や住宅関連株にも広がっています。

住友林業<1911>は3月17日2,739円をつけ、上場来高値を更新しました。アメリカでの住宅ローン金利の上昇による住宅市況の鈍化が予想され、今期(2023年12月期)は36%の営業減益を見込んでいます。ただ、PBRは0.8倍台と割安感もあり、買い方の勢いが売り方を上回っています。

同様に積水ハウス<1928>は昨年来高値、タマホーム<1419>は上場来高値圏で推移しています。

低PBRの半導体銘柄にも物色の流れ

メモリーなどの市況悪化で2022年は逆風だった半導体関連株でも、低PBRのバリュー株を物色する資金が向かっています。たとえば、半導体の商社で大手のリョーサン<8140>は昨年来高値の更新が続いています。

パソコン向けやスマートフォン向けなどの半導体デバイスは低調ですが、サーバー向けや自動車向けの半導体は需要が伸びています。レーザーテック<6920>、東京エレクトロン<8035>などの成長株(グロース株)に比べるとこれまであまり買われていなかったことも需給好転につながっています。

同様にエレクトロニクス商社の新光商事<8141>、佐鳥電機<7420>なども再度、昨年来高値をうかがう動きとなっています。

日経平均だけでは見えてこないもの

市場では、3月末の配当権利取りの動きもあり、高配当株を中心にバリュー株の物色が続いています。配当落ち後は、いったん利益確定売りの動きとなる可能性もありますが、待機資金による押し目買いもサポートになりそうです。

今回はバリュー株を中心にご案内しましたが、グロース株が買われていないというわけではありません。株価は個々の業績や期待材料で評価されますので、上昇相場が続いた場合は、グロース株が買われる局面とバリュー株が買われる局面がその時々で変わるような動きもあるかもしれません。

ここでご紹介した高値更新のバリュー株はほんの一例に過ぎません。これ以外にもさまざまな銘柄や業種が高値を更新しています。日経平均株価の動きだけを見ていると上値の重さが目についてしまいますが、こうした銘柄に目を向けると日本株への買い意欲が意外と強いことに気づかされます。

少しだけ視点を広げながら、新たな新高値銘柄を探してみるのも投資のヒントになるでしょう。

[執筆者]佐々木達也
[ささき・たつや]金融機関で債券畑を経験後、証券アナリストとして株式の調査に携わる。市場動向や株式を中心としたリサーチやレポート執筆などを業務としている。ファイナンシャルプランナー資格も取得し、現在はライターとしても活動中。株式個別銘柄、市況など個人向けのテーマを中心にわかりやすさを心がけた記事を執筆。
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