株で勝てる人の勉強法 「一流の投資家」が必ずやっていること

朋川雅紀
2021年9月10日 17時00分

《株で勝てる人と勝てない人は一体どこが違うのか? 実は、どちらにも「共通点」があります。30年以上の実績をもつファンドマネージャーが「一流の投資家」の条件を明かす【情熱の株式投資論】》

上達の実感は、ある日突然に

株式投資に限らず、多くの学習は、時間を費やしたからといって直線状には上達しません。費やした時間に比例して結果が出れば、モチベーションも維持できるのですが、残念ながら、実際はそうではありません。

私が初めてニューヨークへ行ったとき、流暢に英語を話すことができませんでした。そこで、一念発起して、もう一度、英語を勉強し直すために英会話学校に通うことにしました。

しばらくの間は手応えがなかったのですが、英会話学校に通い始めて半年くらい経った頃でしょうか。突然、英語が上達したのを実感しました。

上達は「直線」ではなく「階段」で

まさに突然という感じでした。うまい表現方法は見つかりませんが、点と点が結ばれて線になる感覚です。

毎日努力すれば、点の数はどんどん増えていきます。ただ、点は断片的なものです。点だけではいくら増えても効果は発揮できません。線となって初めて効力を発揮するものです。

物事が上達するときは、「階段状」になるのではないでしょうか。しばらく頑張っていると、ある日突然、上達を実感する。またしばらく頑張っていると、ある日突然、再び上達を実感する。その繰り返しではないかと思っています。

その“ある日”が来る前に止めてしまうと、何も達成感を得られず、時間が無駄だったと感じてしまうかもしれません。

株の上達は、英語ほどには早くない

ただ、残念なことに、英会話とは違って、株式投資においては半年くらいで上達を実感することはできません。

なぜなら、上げ相場と下げ相場を両方経験してはじめて、上達を実感できるからです。ですから、最初の上達を実感できるまでには、最低でも3~4年はかかるでしょうか。かなりの忍耐が必要になります。その代わり、その後は早いです。加速度的に上達を実感できます。

「結果は後からついて来る」という長期的なスタンスが必要です。正しいことをしていれば、良い方向に向かいます。やはり、日頃の地道な努力が大切ということです。すぐに結果を求めず、忍耐強く続けることが、投資の唯一の上達方法だと思います。

一流のシェフになろう!

突然ですが、「最高の料理」を提供するための条件は何だかわかりますか? その答えは、「最高の食材」と「腕のある料理人」です。どちらが欠けても、最高の料理はできません。

一流のシェフは「最高の食材」と「悪い食材」を見分けることができます。悪い食材を売り込むような業者がいれば、即刻出入り禁止となります。だから、シェフに気に入ってもらうためには、業者は良い食材を持ってくるようになります。その結果、一流のシェフには良い食材が集まってくるものなのです。

また、一流のシェフは良い食材の探し方も心得ています。様々な人脈を使って、二流のシェフでは手に入らない良い食材を手に入れることができるのです。

一流の投資家に不可欠な「食材」とは

「株」の世界も、料理の世界と同じです。

「有益な情報」と「腕のある投資家」の組み合わせがあってはじめて、高い運用収益が実現できるのです。「有益な情報(インフォメーション)」と「不要な情報(ノイズ/雑音)」の違いを腕のある投資家はわかるものです。

もしあなたが一流の投資家であるならば、ノイズはスルーし、インフォメーションに出会えば、立ち止まって考え、その情報の有用性を精査するでしょう。

一流の投資家にはインフォメーションに気づき、ノイズは無視することができますが、二流の投資家はインフォメーションに気づかず、ノイズに翻弄されてしまうのです。

かつては、インフォメーションは機関投資家などプロの投資家に集中していましたが、いまや個人投資家でも有益な情報を得ることがたやすくなりました。情報の偏在はなくなってきました。スキルがあれば、個人投資家でも儲けられる時代になってきました。

みなさんも、ぜひ一流のシェフをめざして、腕を磨いてください。

一流の投資家は本を読む

私が、自分自身を「一流の投資家」であると胸を張って言えるようになったのは、「本を読んで、考える」ようになってからです。

私が資産運用の世界に入った頃、何をどう努力すれば一流の投資家になれるか、全くわかりませんでした。そこで、日本の証券アナリスト、アメリカの証券アナリスト(CFA)、ビジネススクール(MBA)と、次々と色々なものにチャレンジしました。

それでもまだ、自分の中の「何か足りないものがある」というモヤモヤは解消されませんでした。

そして最後にたどり着いたのが、「本を読んで、考える」ということでした。多くの本に出会ってからは、モヤモヤを感じなくなってきました。

本を読むことの最大のメリットは、何といっても「他人の成功や失敗から学ぶことができる」ということです。自分の成功や失敗から学ぶことも当然重要ですが、そのサンプルは自分ひとりだけです。それでは少な過ぎます。できるだけ多くのサンプルを集めるとなると、本を読むことが一番です。

ウォーレン・バフェットの片腕として知られるチャーリー・マンガーが、こんなことを言っています。

「貪欲に本を読まないで成功している投資家は、ひとりも知らない」

これに私は100%同意します。

こんな本は読んではいけない

インターネットで検索すると、多くの投資・株関係の書籍が出てきます。どの本を読んだらよいのか悩むことでしょう。そのときのアドバイスとして、「こんな本だけには手を出さないように」という意味を込めて、最低限の注意をしたいと思います。以下のような本には注意してください。

①「株式“必勝”法」

株には、“必ず”勝てる方法などありません。もしそんな有効な方法があるならば、私が教えてほしいくらいです。

②「リスクなし。“確実”に儲かる!」

リスクがなく、“確実”に儲かる投資などありません。リスクをとる、つまり、 不確実であるからこそ、そのリスクに見合うリターンがあるのです。

③「驚異の◎連勝!」

株式投資の世界では、確率6割で「一流の投資家」と言われています。もし本当に何連勝もできたとすれば、次に起こるのは「連敗」です。

リーマンショックを克服した2009年春からの数年間、世界的に株価は上昇しました。このような時期であれば、たいていの企業の株価は上昇したことになります。誰がやっても儲かるような特殊な時期に儲けられたとしても、それはスキルではありません。再現性があるかも疑わしいです

そもそも、まともな投資家であれば、そんなことを自慢したりしません。いつもうまくいくかのような誤解を与える記述には気をつけましょう。

④「私はこうして◎億円(◎◎万円)儲けました」

こういうコメントを多く見かけませんか? 本当に儲けることができたのか、調べようがありません。後出しジャンケンのように、過去に上昇した株を調べて、「こんな株に投資していました」と言っても誰にもわかりません。

勉強なくして利益なし

ところで、みなさんは株の勉強にどのくらいの時間をかけていますか? 大して調べもせずに、株を買ったり売ったりしていませんか? 時間もかけずに買った株が「たまたま」上がったからといって、次に買う株も簡単に見つけようとしていませんか?

個人投資家のほとんどが会社勤めだと思います。あるいは、会社を経営している方もいらっしゃるかもしれません。

そういう人たちであれば、「本業でお金を稼ぐことがどれほど大変であるか」がわかるでしょう。本業に日々どれだけ時間とエネルギーを注ぎ込んでいるかを考えてみてください。朝から晩まで一生懸命働いて、お金を稼いでいるはずですよね。

本業で稼ぐよりも、株で稼ぐほうが簡単であるわけありません

株に楽して儲けられる道はない

時間もかけずに買った株が上がったのは、単に「運」が良かっただけです。言うまでもありませんが、こういうやり方には再現性がありません。そのことをまず十分に認識してください。

ここで私がお勧めしたいのは、「少なくとも週に一度は株の勉強をする」ということです。最低でも週に1時間は勉強してください。できれば、週に3時間くらいを株の勉強に費やしてほしいと思います。

逆に言うならば、週に1時間も株の勉強ができない人には、自分の判断で投資することは無理です。

残念ながら、楽して株で儲けられるほど世の中、甘くはありません。努力したくない人は誰かに運用を任せる、すべてのお金を預貯金だけにするなど、違う選択肢を選んだほうがよいと思います。

続けるコツは「習慣化」「当たり前」

株の勉強をすると決めたのであれば、毎週日曜日の午後には株の勉強をするなど、「習慣化」することをお勧めしたいと思います。最初はつらくても、勉強するのがすぐに「当たり前」になります。

もう何年も前になりますが、私は日頃の運動不足とストレス解消のためにスポーツクラブ通いを始めました。

体を動かすのは嫌いなほうではないのですが、定期的に通うのはやはり面倒なものです。最初のうちはイヤイヤでしたが、今では1週間も体を動かさないとイライラするほどになりました。すっかり、生活の一部として定着しました。

株の勉強も同じことです。習慣化するうちに次第に生活の一部になっていくと思います。このコラムがキッカケになって、みなさんが株の勉強を定期的にしてくれればと思っています。


【情熱の株式投資論】

[執筆者]朋川雅紀
朋川雅紀
[ともかわ・まさき]大手信託銀行やグローバル展開するアメリカ系資産運用会社等で、30年以上にわたり資産運用業務に従事。株式ファンドマネージャーとして、年金基金や投資信託の運用にあたる。その経験を生かし、株価サイクル分析と業種・銘柄分析を融合させた独自の投資スタイルを確立。現在は投資信託のファンドマネージャーを務めるかたわら、個人投資家の教育・育成にも精力的に取り組んでいる。ニューヨーク駐在経験があり、特にアメリカ株式投資に強み。慶応義塾大学経済学部卒業。海外MBAのほか、国際的な投資プロフェッショナル資格であるCFA協会認定証券アナリストを取得。著書に『みんなが勝てる株式投資』(パンローリング)がある。
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