損切りか、買い増しか。いまこそ見極めたい、損失との正しい向き合い方

朋川雅紀
2022年12月22日 15時00分

rangizzz/Adobe Stock

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損失との正しい向き合い方

銘柄選択がうまくいっても買うタイミングを間違えれば、一時的かもしれませんが、含み損を抱えることになります。

いつも銘柄選択とタイミングの両方が完璧であれば、損失とは無縁になりますが、それは現実的とは言えません。したがって、「投資には損失は付き物」と言えますし、損を出すのは全く恥ずかしいことではありません。むしろ、「損失に目を背けることのほうがずっと恥ずかしい」と認識する必要があります。いかに損失と向き合うか、それが重要なのです。

含み損への対応策として、何もしないで様子見することも考えられますが、積極的に対応するということであれば、「損切り」か「買い増し」になります。そのときに考えるべきことを挙げてみます。

・投資の目的

あなたの投資の目的は何ですか? おそらく、資産を増やすことだと思います。言い換えると、時間をかけて保有している銘柄群(ポートフォリオ)の価値を高めることです。すべての取引において一切損を出さないことが目的ではありません。

したがって、あなたは目的達成に集中すべきで、あなたが気にすべきはポートフォリオ全体の価値(儲かっているかどうか)であって、個別のポジションごとの価値ではないのです。個々の銘柄だけに、それほど強い思い入れを感じる必要はありません。

・損切りは保険

損切りの意味とは何でしょうか? なぜ損切りしなければならないのでしょうか? それは、これ以上の悪化(損失の拡大)を防ぐことにあります。もちろん、売らずに保有し続けたら含み損がなくなることがあるかもしれませんが、いま損切りすれば、少なくとも損失が拡大することは阻止できます。

そうです。お気づきになったかもしれませんが、損切りは「保険」なのです。事故に遭わなかったら支払った保険料が無駄になる、と思いますか? 思わないはずです。「もしものとき」に備えて保険に入るわけですから、実際に事故が起きるか起きないかは関係ありません。

損切りした後の株価がどうなるかは気にする必要がない、ということです。損切りを実行したことで当初の目的は達成されたわけですから、その後どうするかはゆっくり考えればいいことです。

・ポジションサイズ

損失への対応は、保有している銘柄のポジションサイズによって変わります。

ポートフォリオの10%保有している銘柄が50%やられるのと、%保有している銘柄が50%やられるのとでは意味合いが変わってきます。前者のポートフォリオへ与える影響は、後者の5倍です。前者の場合であれば、マイナス50%まで下がる前に損切りすべきでしょうし、後者の場合であれば、何の対応をしなくとも致命的にはならないでしょう。

・ロスカットルール

利食いは遅く、損切りは早く」という有名な相場格言があります。半分になった株価が元に戻るためには、その後、株価が2倍にならなければならないことからわかるように、損失を拡大させる前に早めに手を打ったほうがよい、という意味です。

たしかに、マイナス5%のときに損切りすれば、マイナス50%の損は回避できます。しかし一方で、株価がマイナス5%から切り返してプラス20%になることだってあります。

では、損切りの水準はどのように決めればいいでしょうか。

大切なことは、あなたのタイムスパン(投資期間)に合った損切り水準を定めることです。例えば、長期投資を実践しようとしているのに、マイナス5%という水準で損切りを行うと、しょっちゅう損切りが実行されて、売っては高い株価で買い直し……を繰り返すことになりかねません。いわゆる「損切り貧乏」です。

いくら「損切りは保険」とは言っても、「もしものとき」でもないのに保険料を払うことはないのです。あなたの損切りの水準は、あなたの想定を超えた場合(=もしものとき)を考慮して決めてください。 

・買い増しは計画的に

含み損を抱えた銘柄への対応策のひとつとして、「買い増し」という方法も考えられます。当初の買値よりも下落してより魅力的な株価になったわけですから、ここで買い増せば平均購入単価を引き下げることができますし、その水準での買い入れは理にかなっているとも言えます。

プロの「買い下がり」、素人の「ナンピン買い」と言われます。これらの言葉はご存じでしょうか?

この2つは同じことを言っているようにも聞こえますが、その意味するところは大きく異なります。両者はたしかに「株価が下がったら買う」点においては同じですが、決定的に違うのは、ファンダメンタルズの裏付けがあるかどうか、計画的であるかどうかです。

業績(ファンダメンタルズ)の裏付けがあり、計画的な「買い下がり」なら結構ですが、無計画で場当たり的で、ただ平均購入単価を引き下げたいだけの「ナンピン買い」は傷口を広げるだけですので、するべきではありません。ナンピン買いをするくらいなら、むしろ損切りをすべきかもしれません。

「全体」で考えることが重要

現実の株価は、ファンダメンタルズの方向とは逆に動くことがありますので、自動的に「株価が上がっているものを売って、株価が下がっているものを買う」ことや、自動的に「株価が下がっているものを売って、株価が上がっているものを保有し続ける」ことは、好ましい戦略とは言えませせん。

「ポートフォリオ全体にとっては、どうするのがいいか」という視点で考えることが必要です。

[執筆者]朋川雅紀
朋川雅紀
[ともかわ・まさき]大手信託銀行やグローバル展開するアメリカ系資産運用会社等で、30年以上にわたり資産運用業務に従事。株式ファンドマネージャーとして、年金基金や投資信託の運用にあたる。その経験を生かし、株価サイクル分析と業種・銘柄分析を融合させた独自の投資スタイルを確立。現在は投資信託のファンドマネージャーを務めるかたわら、個人投資家の教育・育成にも精力的に取り組んでいる。ニューヨーク駐在経験があり、特にアメリカ株式投資に強み。慶応義塾大学経済学部卒業。海外MBAのほか、国際的な投資プロフェッショナル資格であるCFA協会認定証券アナリストを取得。著書に『みんなが勝てる株式投資』(パンローリング)がある。
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