不運か、それとも自業自得か。結果がすべての株式投資でプロセスを重視すべき理由

朋川雅紀
2023年12月14日 18時00分

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投資におけるプロセスと結果

ロバート・ルービン元アメリカ財務長官によれば、我々が認識できる可能性というのは確実なものではないので、時として間違った判断が成功に結び付くことがあれば、きわめて正しい判断が失敗に終わることもあります。

しかしながら、長い目で見れば、深く考え抜いた上での意思決定は、望ましい結果につながることが多く、結果そのものよりも、いかに考えて意思決定が行われたかがより重要になるということです。

ギャンブルの世界でも、十分に勝ち目がある状況で最善のものに賭けたときは、その賭けに勝とうが負けようが何かしらを得るものがあるのに対して、勝ち目が低い状況にもかかわらず賭けたときには、実際に勝とうが負けようが、何かしらを失っている、ということがよく言われます。

多くの場合、個人投資家はプロセスのことをよく考えず、結果だけにこだわります。何と言っても、最終的に結果は問題となるからです。それに、プロセスを評価することよりも、結果を評価することのほうが簡単でわかりやすいと言えます。したがって結果に目を奪われることは、ある程度は理解できます。

しかしながら、投資家はしばしば、良い結果は良いプロセスに基づくものであり、悪い結果が出たのはプロセスが悪かったからだ、と考える過ちを犯してしまいます。対照的に、先の読めない分野で長期にわたって結果を残している人は皆、結果よりもプロセスを重視しています。

良いプロセスが良い結果につながれば「当然の成功」と胸を張れますし、良いプロセスでも悪い結果になってしまえば、それは「不運」ということになります。

一方、悪いプロセスでもたまたま良い結果になったのであれば「まぐれ」と言わざるを得ないでしょうし、悪いプロセスが悪い結果につながったのだとすると、それは「自業自得」ということです。

偶然によって、思いがけない結果がもたらされることはたびたび起こりますが、長い期間で見れば、プロセスが結果を支配しています。

ルービンの4原則

ロバート・ルービンが提示した意思決定における4つの原則は広く知られています。これらの原則は、特に投資家には役に立つと思われます。

(1)唯一確かなことは、確実なものはないということである

この原則はとりわけ、不確実性の中で取引を行う株式投資に当てはまるでしょう。

投資家は、自分自身の能力や予測を信頼していることから、結果について非常に狭い範囲で考えがちです。投資家は十分に広範囲の結果を考える訓練を行う必要があります。「思いがけない(まさかの)出来事」の兆候にも気を付ける必要があるでしょう。

不確実性について正しい認識を持つことは、資産を運用する上でとても重要になります。投資先を決めるにあたって、投資家は予期されない出来事が起こる可能性を考慮しなければなりません。

(2)意思決定においては確率についてよく考えるべきである

個々の取引では、運・不運によって、良い結果が出たり悪い結果が出たりしますが、正しいプロセスであれば、長期的には良い結果につながります。

確率に注目することは、生じる結果の分布が均一であれば問題ありませんが、結果にばらつきがある場合には注意が必要です。確率が高くても魅力的でない投資もあれば、確率が低くとも期待リターンが高くて魅力的な投資もあります。

(3)不確実があるにもかかわらず、我々は行動しなければならない

意思決定のかなりの部分を不完全あるいは不十分な情報に基づいて行わなければならないことがあります。投資の世界では、すべてが割り切れるなどということはなく、そうなった時点ではもう遅いことが多くあります。すべての情報をインプットしてから決めることなど、非現実的なことなのです。

したがって、完全な情報がないなかで決断する能力が大事になってきます。加えて、利用可能な情報でさえ取捨選択したうえで意思決定をしなければなりません。

(4)意思決定を評価するには、結果だけでなく、そこに至った経緯やプロセスも考慮すべきである

良いプロセスとは、その価格が期待リターンに見合うかどうかを注意深く考慮することです。投資家は、質の高いフィードバックと継続的な学習を通じて、自分の意思決定のプロセスを改善することができます。

プロセスの重要性

投資の世界では、あまりにも結果が重視され過ぎて、プロセスがなおざりにされています。

結果が重要でないということはありません。もちろん、結果を求めて投資を行うわけですから、結果は重要です。しかしながら、結果だけを求めて判断してしまうと、正しい意思決定を行う上で必要なリスクが取りにくくなります。

要するに、どのようなプロセスを経て意思決定がなされたかを評価すべきだということです。

思慮深い投資のプロセスを経ることによって、確率と結果を吟味し、バリュエーションに示されているコンセンサスが本当に正しいのかどうかを注意深く検討する必要があります。投資では、プラスの期待リターンを手に入れること重要なのです。

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[執筆者]朋川雅紀
朋川雅紀
[ともかわ・まさき]大手信託銀行やグローバル展開するアメリカ系資産運用会社等で、30年以上にわたり資産運用業務に従事。株式ファンドマネージャーとして、年金基金や投資信託の運用にあたる。その経験を生かし、株価サイクル分析と業種・銘柄分析を融合させた独自の投資スタイルを確立。現在は投資信託のファンドマネージャーを務めるかたわら、個人投資家の教育・育成にも精力的に取り組んでいる。ニューヨーク駐在経験があり、特にアメリカ株式投資に強み。慶応義塾大学経済学部卒業。海外MBAのほか、国際的な投資プロフェッショナル資格であるCFA協会認定証券アナリストを取得。著書に『みんなが勝てる株式投資』(パンローリング)がある。
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