東証1部と東証2部はどちらがいいのか? 個人投資家が知っておくべき違いとは

サワダ・ススム
2020年6月19日 10時00分

日本最大の証券取引所、東京証券取引所

日本に4つある証券取引所のうち、最も規模が大きな証券取引所が「東京証券取引所」、通称「東証」です。

現在、東証に上場しているのは約3,700社。これらの企業の時価総額は世界第3位。アメリカのニューヨーク証券取引所、イギリスのロンドン証券取引所とともに「世界三大証券取引所」と言われており、アジアでは最大規模の証券取引所です。

また、国内にある他の証券取引所の規模はかなり小さいため、一般的な個人投資家にとっては、取引を行うほぼすべての銘柄が東証のものになるでしょう。

東証がもつ5つの市場

東証には、以下の5つの市場があります。

  1. 東京証券取引所第1部(東証1部)
  2. 東京証券取引所第2部(東証2部)
  3. マザーズ
  4. JASDAQ(ジャスダック)
  5. TOKYO PRO MARKET

東証のなかで、最も大きな規模を誇る市場が東証1部。実力も知名度も高い大手企業の多くが、ここに上場しています。また、海外投資家も取引に参入しており、取引の流動性の高さは世界でもトップクラス。それゆえ株価が比較的安定しやすいという特徴を持っています。

一方、東証2部には、有名企業とともに中小企業も名を連ねています。東証1部と比較すると市場規模が小さいため、取引の出来高も少なめ。株価の値動きは安定しづらい傾向にあります。

上場審査基準の違い

東証1部と東証2部の最大の違いは、「市場に上場するための審査基準が異なる」ということ。具体的な上場審査基準の違いは以下の通りです。

上場審査基準の違い

このように比較すると、求められる株主数が2.75倍、流通株式数は5倍、時価総額にいたっては12.5倍もの開きがあることがわかります。要するに、東証1部に上場するほうが、東証2部に上場するよりもはるかに難しいのです。

東証1部に上場するメリット

それでも、日本の多くの企業が審査基準が厳しい東証1部への上場を目指しています。その理由は、企業にとってメリットが大きいため。

東証の親会社である日本取引所グループのホームぺージで確認できる「新規上場ガイドブック」には、「上場の意義」として次のようなメリットが記されています。

  • 資金調達の円滑化・多様化
  • 企業の社会的信用力と知名度の向上
  • 社会管理体制の充実と従業員の士気向上

なかでも重要なポイントとなるのが「資金調達の円滑化・多様化」です。

企業が株式市場に上場する最大の目的は資金調達です。東証1部は非常に流動性の高い市場であり、市場参入によって多くの投資家たちがその企業の株式を取引するようになるため、資金を調達しやすくなります。

加えて、社会的な信用度が高まり、従業員のモチベーションもアップするなど、さまざまなメリットを享受できるというわけです。

降格した企業、返り咲いた企業

東証1部に上場することは企業にとって重要です。しかし、経営状態の悪化が影響して、東証1部から降格してしまうこともあります。

・東芝<6502>

2017年8月1日、日本を代表する電機メーカーの東芝<6502>は、1949年に東証1部に上場して以来、初めて2部に降格しました。直接的な原因は、アメリカにおける原発事業の巨額損失の影響で債務超過に陥ったこと。これにより、東証の定める基準に触れてしまったのです。

その後、子会社の売却によってなんとか上場廃止を回避し、現在は東証2部と名証2部に上場しています。

東芝の株価推移

シャープ<6753>

一方で、東証2部降格から東証1部に返り咲いた例も。それがシャープ<6753>です。

2016年3月期の連結決算まで2年連続で2000億円を超える赤字を計上していたシャープ。2016年4月に台湾の鴻海精密工業に買収されたのち、債務超過によって2016年8月に2部降格となりました。その後、債務超過を解消し、東証1部への復帰申請と審査を経て、2017年11月にめでたく1部復帰を果たしました。

シャープの株価推移

2部降格後に1部に復帰できた例は、2000年以降ではわずか数銘柄。シャープの1部復帰への執念によって実現した、奇跡とも呼べる出来事だったのです。

個人投資家が気をつけるべきこと

個人投資家からすると、1部だろうが2部だろうが大した違いはないと考えがちですが、決してそんなことはありません。

・流動性の違い

東証1部と2部の市場の大きな違いは、流動性です。

上場審査基準からもわかるように、東証1部に上場している銘柄は株主数・株式数が圧倒的に多く、それだけ活発に取引が行われます。反対に、2部銘柄は株主数・株式数ともに少なく、したがって取引も少ないため、「買いたいときに買えず、売りたいときに売れない」というリスクが高まります。

・ボラティリティの違い

流動性の違いは、株価の値動きにも影響します。流動性が高い(=多くの取引が活発に行われる)ほど株価は安定し、値動きは緩やかになる傾向にある一方、流動性が低いと値動きが荒くなりやすいのです。

このような観点から見れば、東証1部はリスクもリターンも低い安定した市場、東証2部はリスクもリターンも比較的高い市場と言えるでしょう。どちらがいいかは、どんな取引を望むか次第で変わるでしょうが、それぞれの性質を理解しておくことは、なによりも無駄な損失を回避することにつながります。

[執筆者]サワダ・ススム
サワダ・ススム
40代突入を目前に控えたサラリーマン兼トレーダー。ウェブや書籍などを通じて、日々トレードについて勉強しては実践する日々。現在はおこづかい程度の利益しか出ていないが、2年後にはサラリーマン生活に「お疲れさまでした」と別れを告げ、トレード一本で生活していきたいと本気で考えている。
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