アメリカ大統領選で株価はどうなる? これまでの選挙からわかったこと
世紀のシルバー対決で株価はどうなる?
4年に一度行われるアメリカ大統領選挙。2020年の選挙戦は、防衛なるか共和党ドナルド・トランプ現大統領74歳。対するはオバマ政権下で副大統領を2期務めた民主党ジョー・バイデン候補77歳。混迷と変化の渦中にある世界は青二才にゃ任しちゃおけん!的なシルバー激突となりました。
さて、そんな大統領選は株式市場にも大きな影響を与えるため、今回の結果によって株価がどうなるかとハラハラしている方も多いでしょう。勝利予想は政治畑の人たちに委ねるとして、個人投資家としては「過去はどうだったのか?」を振り返ることで、心の準備を整えておきたいと思います。
実はややこしい米大統領選の仕組み
「有権者が直接首相を選べない日本と違ってアメリカは直接選挙なんでしょ?」と思いきや、アメリカの大統領選も実は間接選挙。一般の有権者がそれぞれ「俺はバイデンさん」「私はトランプさん」と候補者に直接投票するわけではありません。
有権者が一般投票日に投票するのは「選挙人」。選挙人たちが「私はこの候補者に投票します」と宣言しており、有権者は自分が望む候補者に投票する選挙人に投票するわけです。
投票は、日本の小選挙区が都道府県や市区町村のブロックであるように「州ごと」の単位です。
そして、日本人の感覚から見ると非常にユニークなのが、各州ごとに最多の選挙人を獲得した大統領候補が、その州における「その候補に投票した選挙人」ではなく「すべての選挙人」を獲得する「勝者総取り方式」であるところです(一部、総取り方式じゃない州もあります)。
これでは、負けたほうの候補者に入れた人はかなり悔しいのでは……。実際、前回選挙では民主党のヒラリー候補のほうがトランプ氏よりも300万票近く多くの票を獲得していました。
大統領選前後、株価はどう動いたか
アメリカ大統領選は以下のスケジュールで行われます。
- ①一般投票……11月の第1月曜日の翌日(11/2~8のうちの火曜日)。2020年は11月3日
- ②選挙人選挙……12月の第2水曜日の次の月曜日(12/13~19のうちの月曜日)。2020年は12月14日
最終的な情勢がわかるのは選挙人選挙後ではありますが、選挙人は事前に「この候補者に投票する」と宣言しており、これに違反すると州法に触れるケースもあります。
そのため過去の事例を見ると、11月末にはおおむね大勢は判明しているようです。前回の選挙では2016年11月25日、選挙人選挙を待たずにトランプ氏が勝利宣言をしています。
それでは、21世紀に行われた過去4回のアメリカ大統領選を、ダウ平均株価、日経平均株価、ドル円相場の推移とともに振り返ってみましょう(赤文字が共和党、青文字が民主党。◎が勝者)。
【2016年】◎トランプ vs. ヒラリー
「疑惑の選挙」とも言われましたが、いずれにしても衝撃的な結果であったことには間違いありません。では、相場はどのように動いたのでしょうか。
まずはダウ平均株価。実は、「トランプショック」は当のアメリカでは起きておらず、投票日直前を境に17,805ドルから12月30日には19,720ドルと10.8%も上昇しています。やり手ビジネスマンの大統領がアメリカ最優先の経済政策を進めることへの期待感が株価を押し上げていったのでしょうか。
続いて、日経平均株価。記憶に新しいトランプショックの後は翌日から右上がりが続き、12月30日には19,114.37円と17.6%上昇しています。
最後にドル円相場。11月4日の103.052円から12月30日には116.267円と、こちらも12.8%の上昇を見せています。
【2012年】◎オバマ vs. ロムニー
オバマ氏が大差で再選を果たしたこの年。なお、今回のバイデン候補はこのとき、オバマ氏とともに副大統領として再選されました。
投票日直後に下げたダウ平均株価は、11月15日の12,522ドルから12月18日に13,329ドルまで上がるものの、その後、12月31日には13,027ドルまで戻りました。11月15日時点と比べれば4%の上昇でした。
一方の日経平均株価は、11月15日の8,830円から爽快なまでの右肩上がり。12月30日には10,688円と22%の上昇です。
ドル円相場は、11月9日の79.47円から12月31日には85.96円と、8.1%の上昇でした。
【2008年】◎オバマ vs. マケイン
オバマ氏のスローガン「Change」を覚えている人も多いのでは? 大差でマケイン氏を破り、アメリカ史上初のアフリカ系大統領に就任しました。
21世紀の大統領選のチャートを比較したとき、明らかに他の年と毛色が異なるのが、この2008年。ただ、これは大統領選云々というより、同年に投資銀行リーマン・ブラザーズが経営破綻したことをきっかけにして世界を襲った金融危機の真っただ中だったためでしょう。
10月に入ってからも下げていたダウ平均。投票日を目前にしてやや上げたものの、12月30日に8,640ドルで終わっています。
10月1日時点で11368.26円あった日経平均株価は10日で8276.43円まで下落(28.2%)。その後は8000円台をぐずぐず、という感じで12月29日に8747.17円で終わっています。
ドル円は8月3日には110.17円だったのですが、以降は地獄のような右下がり。12月28日に91.79円で着地しています。
【2004年】◎ブッシュ vs. ケリー
ジョージ・W・ブッシュ氏が再選しましたが、一部で再集計が行われるなど激戦でした。
ダウ平均は10月25日は9,740ドルでしたが、そこから投票日を経て跳ね上がるような右肩上がり。12月31日は10,768ドル(10.6%上昇)で着地しています。
日経平均は11月1日時点では10734.71円でしたが、投票日後も大きな動きはなく、やや上げて12月30日は11488.76円(7%上昇)で終えました。
ドル円は10月10日に109.37円でしたが、投票日後の11月中に102円を切るまで下落。その後は若干持ち直し、12月26日は102.51円。
意外と「ご祝儀相場」になる?
各年の大統領選から年末にかけての値動きをまとめます。
- 2016年:トランプショックならぬトランプフィーバー? ダウ・日経・ドル円すべてが+10% 以上の気持ちのよい右肩上がり。
- 2012年:ダウはやや上昇。日経は+20%と大フィーバー。ドル円は+8%と堅調。
- 2008年:同年9月のリーマンショックを受けた金融危機の真っ最中。ダウ・日経・ドル円すべてにおいて「ご祝儀感ゼロ」のチャート模様。
- 2004年:ダウ・日経の株価は上昇から堅調程度。対してドル円は下落。
こうして見てみると、2008年は大例外として、全体的にご祝儀相場っぽいものがあるような……ないような、そんな印象を受けます。ただ、そうは言っても「必ず」そうなるということではないでしょう。ダウと日経が異なる動きをすることもあれば、当然、他の要素も影響しているはずです。
今回どちらが勝利したとしても、「法則らしきもの」に頼るのではなく、ちゃんと自分の目で展開を注視して、自分なりの確固とした判断につなげたいと思います。