ラップ口座は有益? 金融機関は教えてくれない効率的な資産運用のススメ

高橋忠寛
2017年2月7日 9時00分

金融機関任せがダメな理由

「株は手間もかかりそうだし、むずかしそう……」と思っていませんか? でも、それは誤解です。株は決してむずかしいものでもなければ、手間をかけなくてはいけないものでもありません。たしかに、最初は勉強しなくてはいけないこともありますが、基本さえ理解すれば、やるべきことは簡単でシンプルです。

しかし金融機関は、投資に関するこうした誤解を利用しています。「投資は難しいし手間がかかるので、私たちがそのお手伝いをして差し上げます」というわけです。そのお手伝いが的を射ており、正しい資産運用の手助けをしてくれるならいいのですが、現実はそうではありません。

投資を「むずかしいもの」と捉えてしまうと、つい金融機関の担当者にお任せしてしまいます。その結果、判断も任せがちになり、営業担当者のアドバイスを真に受けて、提案されるがまま数年おきに投資信託を乗り換えたり、「ラップ口座」(後ほど説明します)や「ファンド・ラップ」に申し込んだり……。気がついたら、金融機関にとって都合の良いお客さまになってしまっていた、なんてことになりかねません。

【参考記事】あなたと金融機関は「利益相反」の関係 相談すると損をするかも?

本来、資産運用はむずかしいものではありません。理解できないほどにむずかしい商品は、複雑で手数料の高い“粗悪品”と考えて、選択肢から外してしまえばよいのです。金融機関側は儲からないから積極的には教えてくれませんが、金融商品はシンプルなほど利用者にとっては価値があります。

最近人気の「ラップ口座」とは?

ここで、先ほど出た「ラップ口座」について説明しましょう。どんな商品を、どんなタイミングで売り買いするか、すべてを金融機関にお任せするサービスを「ラップ口座」といいます。かつては富裕層向けでしたが、投資信託を組み合わせる「ファンド・ラップ」という形で、数百万円から利用できるようになりました。

このラップ型の商品を利用すると、運用期間中は毎年3%程度のコストを負担し続けることになります。日本で販売されている5000本を超える投資信託の中から、本当に優秀な商品を選んで、最高のタイミングで売ったり買ったりしてくれるなら、たとえ高い手数料を負担してでも、利用する価値はあるかもしれません。しかし現実には、プロといってもそんなことをできるわけがありません。

アクティブか、インデックスか

運用には、市場平均を上回ることを目指す「アクティブ運用」と、市場平均並みの運用を目指す「パッシブ運用」の2種類があります。そして、アクティブ運用を行う投資信託を「アクティブ・ファンド」、パッシブ運用を行って株価指数などのインデックスに連動する運用を目指すのが「インデックス・ファンド」です。

日本の投資信託は、圧倒的にアクティブ・ファンドのほうが多くあります。金融機関で紹介してくれるのも、ほとんどがアクティブ・ファンドです。プロが市場平均を上回ることを目指して運用しているはずですが、そのパフォーマンスの平均が、実はインデッックス・ファンドを下回っていることは有名な話です。

アクティブはコストが高いと心得よ

では、なぜプロが運用するのに市場平均を上回り続けることができないのでしょうか? 理由は2つあります。投資に必勝法のようなものは存在しないということと、アクティブ・ファンドの運用手数料が高いことです。

もちろん、なかには市場平均を大きく上回る実績を上げている投資信託もありますが、全体の中で言うと少数派です。金融の専門家でも事前にそういった商品を選ぶのが難しいわけですから、一般の人がそのような投資信託を選ぶことが、どれほどの難易度なのかを想像できることと思います。

「投資信託が好きで、研究も大好き!」という人であれば、趣味と実益を兼ねて選別に取り組めばいいでしょう。しかし、多くの人にとっては、アクティブ・ファンドを選ぶことに時間と労力を費やすよりも、インデッックス・ファンドを利用したほうが効率的です。

無駄なコストをかけないために

ラップ型商品などが、本当に個々人の状況に合わせたオーダーメード形式で、リスク許容度や投資経験、運用意向を緻密に分析して、ベストな商品の組み合わせで提案をしてくれたり、資産管理のサポートをしてくれたりするのであれば価値があるかもしれませんが、現状では、そこまでのサービスを期待できるものではありません。

よく見ると、グループ会社が運用する手数料の高い商品を組み合わせているだけとしか思えないようなサービスもありますし、最初は親身になってサポートしてくれた担当者も、何年かすれば転勤でいなくなります。このように考えると、わざわざ高いコストを払ってまで、ラップ型商品を活用する意味はほとんどないのです。

それよりも、たとえばETFやインデックス・ファンドのような、ローコストかつシンプルな商品性を持った投資信託を組み合わせれば、よりリーズナブルに、ラップ口座で運用するのと遜色のないパフォーマンスが得られるはずです。ETFとは「Exchange Traded Funds」の略称で、証券取引所に上場され、株式と同じように売買されているインデックス・ファンドのことです。

【参考記事】最も売れているETF、意外な人気の理由とは?(ETFランキング付き)

金融商品はシンプルがいちばん

仕組みがシンプルな商品であればあるほど、中身をわざわざ複雑化して、よくわからないコスト負担をお客さまに強いるようなことができなくなります。シンプルでコストの低い商品を長期間保有することこそが、投資信託を効率的に活用するための基本スタイルです。

金融機関の担当者は、本当に利用価値のある商品を教えてくれません。自分でETFやインデックス・ファンドなどローコストでシンプルなものを組み合わせ、効率的な資産運用に取り組むことをお勧めします。

[執筆者]高橋忠寛
高橋忠寛
[たかはし・ただひろ]株式会社リンクマネーコンサルティング代表取締役。上智大学経済学部経済学科卒業。東京三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)、シティバンク銀行での10年超の銀行勤務を経て、2014年9月に独立。投資助言代理業者[関東財務局(金商)2855号]として、金融商品の販売には関わらない完全に独立した立場で、資産運用を中心に資産管理についての総合的なアドバイスを提供している。著書に『銀行員が顧客には勧めないけど家族に勧める資産運用術』(日本実業出版社)がある。 ファイナンシャル・プランナー(CFP) 、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)
最新記事
本コンテンツは情報の提供を目的としており、投資その他の行動を勧誘する目的で作成したものではありません。銘柄の選択、売買価格など投資の最終決定は、ご自身のご判断で行っていただきますようお願いいたします。本コンテンツの情報は、弊社が信頼できると判断した情報源から入手したものですが、その情報源の確実性を保証するものではありません。本コンテンツの記載内容に関するご質問・ご照会等にはお答えいたしかねますので、予めご了承くださいますようお願い申し上げます。また、本コンテンツの記載内容は予告なく変更することがあります。
お知らせ
» NTTドコモのマネーポータルサイト「dメニューマネー」に記事を提供しています。
dメニューマネー
» 国際的ニュース週刊誌「Newsweek(ニューズウィーク)」日本版ウェブサイトに記事を提供しています。
ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
» ニュースアプリ「SmartNews(スマートニュース)」に配信中。「経済」「マネー」「株・投資」ジャンルから、かぶまどをチェック!
SmartNews(スマートニュース)
美しい桜並木通りを小さな戦車がゆく
満開の桜とかわいいメジロのイラスト
銘柄選びの教科書
トヨタを買って大丈夫?