銅相場の上昇で中国経済もいよいよ回復か?
銅相場と中国経済
中国経済の行方を占う上で、銅価格の動向は重要な指標です。中国は銅の最大の消費国であり、銅価格は中国の景気動向と連動しやすいからです。
そこで、足元で上昇する銅価格が示唆する中国景気の現状と、活況を呈する中国や香港の株式市場について分析します。香港市場に上場している中国株は、本土の経済政策や市場センチメントを反映しているのです。
中国経済は本格的な回復軌道に乗るのか。世界経済を左右する中国の動向を探ります。
香港ハンセン指数は強気相場入り
香港株式市場に上場する中国本土株の指数が上昇し、4月の上昇率は世界トップでした。さらに、香港株の指標であるハンセン指数も同様に大幅上昇しました。香港ハンセン指数は1月の安値から30%以上の上昇となっており、強気相場入りしたと言えるでしょう。
中国株は、中国本土の投資家からの積極的な資金流入によって上昇しています。また、海外のファンドが割高なグローバルテクノロジー株から、割安な中国のインターネット銘柄に資金を移していることも、上昇の一因です。
また、4月時点における香港ハンセン指数の予想株価収益率(PER)は約8.5倍とされています(ブルームバーグによる)。これに対して米S&P500種株価指数は20倍近く、日本のTOPIXは15.7倍となっているので、香港ハンセン指数は、まだ割安水準といえるのです。
銅相場も上昇中
同じく上昇傾向にあるのが、銅相場です。ロンドン金属取引所(LME)で強気の展開を見せています。
3か月先物は、昨年の後半に1トンあたり8000ドルを割り込む水準まで下落していました。これは主に、中国の景気減速が原因です。しかし、5月に入ると10000ドルを超えて取引されるようになり、年初から20%近くも上昇しました。
さらに、世界最大の鉱山会社であるBHPが、同じく大手鉱山会社で銅市場において大きな存在感を持つアングロ・アメリカンに買収を提案したことも、この上昇傾向を後押しています。
銅相場が中国株に与える影響
銅相場の変動は中国株式市場に大きな影響を与えます。
中国は世界最大の銅の消費国であり、建設や電気自動車、再生可能エネルギーなどの産業で銅の需要が拡大しているからです。そのため、銅価格の上昇は中国企業の原材料コスト増加につながり、利益率を圧迫する可能性があります。
一方で、銅価格の上昇は、中国の資源関連企業にとっては好材料となります。中国には銅の採掘や精錬を手がける大手企業が多数上場しており、銅相場の上昇が業績改善につながり、株価の上昇が期待できるからです。
中国政府は経済成長を維持するため、不動産市場の活性化にも取り組んでいます。不動産開発が進めば、建設需要の拡大を通じて銅の需要がさらに喚起され、銅価格が上昇する可能性があります。そうなれば、資源関連株だけでなく、建設関連株も恩恵を受けるでしょう。
しかし、銅価格が大幅に高騰すると、中国企業の業績悪化や景気減速につながる恐れもあります。また、中国の株式市場は政府の政策に大きく影響される特徴があるため、銅相場と中国株の関係性を考える上では、需給だけでなく政策動向にも注意を払う必要があります。
「ドクター・カッパー」の異名を持つ銅
銅は優れた電気伝導性と熱伝導性を誇り、建設や電気機器、自動車など幅広い産業で活用される素材です。
そのことから、銅の需要動向は世界の経済活動と密接に関わっており、景気の先行指標として「ドクター・カッパー」と呼ばれることもあります。景気拡大時には需要が増えて価格が上昇し、反対に、景気後退時には需要が減って価格が下落する傾向があるためです。
ただし、銅価格は需給以外の要因にも影響を受けるケースが増えています。
世界的な金融緩和を背景に、コモディティ(商品)市場への投機的な資金流入が増加し、銅在庫が積み上がる傾向にあります。その結果、需要の実態以上に供給過剰感が高まり、銅価格が金融市場の動向に左右されることも少なくありません。
銅価格の変動は、資源関連株や電機・機械関連株などにも影響を与えるほか、日本市場にも影響を及ぼす中国市場の動向を知るうえでの手がかりになります。
在庫状況や金融市場の動向にも目を向けつつ、中長期的なトレンドを捉えることが重要ですが、脱炭素社会の実現に向けたクリーンエネルギー関連の需要増加など、銅の長期的な需要拡大が期待される中、銅価格の動きを通じて世界経済の行方を推し量ることもできるでしょう。