気まぐれな株式市場に振り回されないために、あなたが知っておくべきこと

朋川雅紀
2024年10月23日 9時00分

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気まぐれな株式市場の住人

株式市場というのは気まぐれです。「インフレがしぶとい」と騒いでいたかと思えば、今度は「景気後退が怖い」と騒いでいます。

株価というものは、経済指標、企業業績、政治情勢、投資家の心理など、多種多様な要因によって影響を受けます。そして、これらの要素が複雑に絡み合い、結果として、予測不能な動きを示すことがあります。

また、ニュースや情報が瞬時に世界中に伝わる現代では、市場の反応も非常に速く、短時間で株価が大きく変動することもあります。もちろん、投資家の感情や心理も株価に大きな影響を与えます。

そんな株式市場を表す言葉に「ミスター・マーケット」があります。この言葉は、投資の神様とも言われるウォーレン・バフェットの師匠であるベンジャミン・グレアムによって提唱されました。

グレアムは、「株式市場は、情緒不安定なミスター・マーケットのようなものだ」と述べています。ミスター・マーケットとは株式市場の変動を擬人化したもので、気まぐれで感情的な行動をとりがちなことを強調した表現です。

投資家は、このミスター・マーケットの影響を受け、株価の上昇や下落に一喜一憂します。株価が上昇していると、未来が明るいと感じて高値でも買いたくなりますし、反対に、株価が急落すると不安にかられ、安い値段でも売りたくなってしまうのです。

ミスター・マーケットに振り回されないために

ミスター・マーケットに振り回されないためには、株式市場には「情報バイアス」が存在することを意識する必要があります。

株式市場における情報バイアスとは、投資家が情報を解釈し、意思決定を行う際に生じる偏りや誤りのことを指します。これらのバイアスは、投資家の心理や行動に影響を与え、結果として市場の動きにも影響を及ぼします。

この情報バイアスは、いくつかの戦略を実践することで回避が可能です。そうすれば、情報バイアスに巻き込まれず、より合理的で効果的な意思決定ができるようになります。

何よりも重要なのは、コンセンサス(市場の代表的な見方)を疑うことです。

コンセンサスを疑う姿勢は、株式投資をする上で非常に重要な要素です。多くの人が同じ意見を持つとき、その意見が必ずしも正しいとは限りません。むしろ、間違っているほうが多いかもしれません。

そのため、絶えずコンセンサスを疑う姿勢を持つことが必要です。

コンセンサスを疑うポイントとしては、まず、「企業の業績」に注目することです。株価の変動よりも、企業の実際の業績や価値を評価することを心がけます。

次に重要なのが、「長期的な視点」を持つこと。株式市場の気まぐれは短期的なものであることが多いので、長期的な視点で企業の成長や収益性を評価し、将来的なポテンシャルを見極めるのです。

コンセンサスを疑え!

コンセンサスを疑うために私自身が強く意識して行っているのは、次のようなことです。

・トレンドを読む

ひとつのデータからではなく、複数のデータから判断することを心がけます。特殊要因によってイレギュラーな結果が出ることがあるため、移動平均なども使ってトレンドを読む必要があります。

・独自のリサーチ

他人の意見に頼らず、自分自身でデータを収集し、分析することが重要です。これにより、独自の視点を持つことができます。

・逆張りの発想

多くの人がある方向に動いているとき、逆の方向を考えることも有効です。例えば、株価が急上昇しているときに売りを検討するなど、一般的な流れに逆らうことが利益を生むこともあります。

・批判的思考

情報を鵜呑みにせず、常に「なぜ?」と問いかける姿勢を持つようにします。これにより、情報の背後にある意図やバイアスを見抜く力を養うことができます。

・多様な意見の収集

自分とは異なる視点や意見にも耳を傾け、幅広い情報を収集することで、バランスの取れた判断が可能になります。

最終的には自分自身で判断しなければなりませんが、自分の考えだけで判断するのではなく、第三者の意見を参考にすることも有効です。専門家は多くの経験と知識を持っているため、バイアスを避けるための助けとなるかもしれません。

・歴史から学ぶ

過去の市場の動きや経済の変動を学ぶことで、現在の状況をより深く理解することができます。歴史は、全く同じことを繰り返すことはありませんが、〝韻を踏む〟(=似たようなことを繰り返す)ものですので、過去の事例を参考にすることはとても有効です。

・定期的な振り返り

自分の判断や行動を定期的に見直し、バイアスが影響していないかを確認することも重要です。これは、長期的な改善にもつながります。私は、3〜6か月ごとに過去の取引を見直し、それが本当に必要だったのかの検証を行っています。

売買は感情ではなくルールで

このようにしてコンセンサスを疑う姿勢を持つことで、より独自性のある判断ができ、長期的な成功につながる可能性を高めることができるでしょう。

そのうえで大切なのは、感情的になった状態で売買をしない、ということです。

いつでも完全に冷静でいることは誰でも難しいですし、人間ですから、感情的になるのは仕方のないことです。でも、感情に左右されない「売買ルール」を決め、それ徹底することで、株式市場の気まぐれに振り回されずに済みます。

くれぐれもミスター・マーケットにはご用心ください。

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[執筆者]朋川雅紀
朋川雅紀
[ともかわ・まさき]大手信託銀行やグローバル展開するアメリカ系資産運用会社等で、30年以上にわたり資産運用業務に従事。株式ファンドマネージャーとして、年金基金や投資信託の運用にあたる。その経験を生かし、株価サイクル分析と業種・銘柄分析を融合させた独自の投資スタイルを確立。現在は投資信託のファンドマネージャーを務めるかたわら、個人投資家の教育・育成にも精力的に取り組んでいる。ニューヨーク駐在経験があり、特にアメリカ株式投資に強み。慶応義塾大学経済学部卒業。海外MBAのほか、国際的な投資プロフェッショナル資格であるCFA協会認定証券アナリストを取得。著書に『みんなが勝てる株式投資』(パンローリング)がある。
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